音速の鷲乗りα 03
〜小松基地 飛行教導隊隊舎〜
理樹「失礼します…」
僕は今日、訳あって飛行教導隊の隊舎に来ていた。ここに来るのは2度目だが、やはり慣れない…他部隊のイーグルドライバーには無い特有の圧迫感がここアグレッサーにはある。
流石は、空自随一の「トップガン」が集まるところだけあるな。
そういえば、以前来たのはアグレッサーが新田原から小松に移動して来た時だったかな。
そうこう考えているうちに、隊長室の前まで来ていた。扉をノックをし入室する。
コンコン
理樹「直枝2等空尉 入ります!」
???「君が直枝2尉か…」
理樹「はい!306飛行隊所属 2等空尉
直枝理樹です! よろし…」
???「堅苦しい挨拶は結構、俺はここの隊長をしている 風間だ。よろしく直枝2尉。君の事は空井から聞いてるよ。短い期間だが是非、うちの精鋭達の中に身を置いてアグレッサーがどんなものなのかを経験して行ってくれ。」
理樹「はい!お世話になります!」
風間「早速だが、君の世話係を紹介しよう…〔アシュラ〕入ってこい。」
男「はい。」ガチャ
〔アシュラ〕と呼ばれた長身の男が入ってくる。
堀田「堀田 博1等空尉だTACネームは〔アシュラ〕よろしくな。〔リトル〕」
理樹「は、はい!よろしくお願いします!」
風間「紹介は以上だ、後はアシュラ 君に任せる。」
堀田「了解しました。よし〔リトル〕早速だが、
アグレッサーについて説明しようか。付いてこい。」
理樹「はい」
なぜ僕が飛行教導隊に来たかと言うと…話は2日前まで遡る。
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2日前…
〜306飛行隊長室〜
理樹「え?僕が教導隊に…出向ですか?」
空井「そうだ、リトル 君の飛行成績を鑑みて俺の推薦なんだが嫌か?」
理樹「いえ、嫌ではありません。しかし、自分のような半人前が行っても大丈夫なんでしょうか…?」
空井「そんなことを気にしてるのか、大丈夫だ最初は誰でもペッペであの雰囲気に揉まれるから安心しろ。それに、あそこの隊長は俺の知り合いだ、何かあれば助けてくれるさ。」
理樹「分かりました… 2等空尉 直枝 理樹
飛行教導隊への出向 拝命しました!」ビシッ
空井「頑張れよ」ビシッ
僕は隊長に敬礼し隊長も返礼を返してくる。
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〜廊下〜
前を歩くアシュラがふと呟く…
堀田「リトル不安か?まぁそうだろうな…俺も最初は不安でいっぱいだった。」
理樹「え、堀田1尉がですか?」
堀田「あぁ、面白いだろ。ここに来たら最初みんなそうなるのさ。だから、あまり気を落とすなよリトル。」
理樹「は、はい!」
アシュラにもそんな時代があったのかと思いつつ、内心ビクビクしながら説明を受けた。
堀田「リトル、お前、結婚してるのか?」
理樹「あ、はい! 何故分かったんですか?」(仕事中は左手の指輪は外すようにしてるのだが…外し忘れたか?)
堀田「いや、勘だ。お前さんの左手の薬指にリングの跡が見えてな…聞いてみた。」
理樹「そうですか…妻と娘が1人居ます。」
堀田「そうか、娘さんは幾つだ?」
理樹「今年で5歳になります。」
堀田「そうか、今が1番可愛い時期だよな。嫁さんや娘さんのためにも死ぬなよ?リトル」
理樹「はい、ありがとうございます。堀田1尉は結婚されてるんですか?」
堀田「アシュラで良い、今後空ではTACネームで呼び合うんだからな。あぁ嫁と娘が2人だ…もうすぐ息子も産まれる。」
理樹「それはめでたいですね!」
堀田「ありがとう…でもな、不安なんだよ。娘2人を産む時も難産で下の子は帝王切開で産まれてるんだ…だから息子も…って考えるとな… 情けないな 忘れてくれ。」
理樹「アシュラ……」
堀田「あぁ… 話をもとに戻すが…リトル、DJに乗ったことはあるか?」
理樹「複座型ですか? 訓練で数回だけ」
堀田「そうか、装具を身に付けてこい。30分後に飛ぶぞ!アグレッサーを体験させてやる。」
理樹「了解!」
そういえばアグレッサーの機体のほとんどが複座型のF15DJだったな…第23飛行隊以来だから久しぶりだな。
〜30分後〜
僕は081号機に乗り込んでいた、堀田1尉(アシュラ)曰く…愛称はマダラ11だそうだ。
尾翼の勇ましいコブラマーク
アグレッサーは髑髏にコブラマークをあしらった部隊マーク…独特の部隊だ…
堀田「リトル、用意はいいか?」
理樹「はい、いつでもどうぞ!」
堀田「OK」
僕と堀田1尉の乗ったマダラ11は滑走路に向けてタキシングを開始した。
堀田〔TWR this is Aggress01 〕
(管制塔こちら アグレス01 )
〔アグレス〕とは飛行教導隊のコールサインだ。
細かなやり取りをした後、離陸準備が整った。
TWR〔Wind 120 at 4. Cleare for takeoff.〕
(風は120°方向から4m 離陸を許可する。)
堀田〔roger clear for takeoff アグレス01〕
(了解 アグレス01 離陸する。)
堀田〔リトル、これは特別サービスだッ〕
理樹「え?…うぐっ…!?」
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
突如、シートに押さえつけられる。
空港施設が一瞬にして後ろに去っていく アフターバーナを焚いてフル加速で離陸したようだ。
数分後、水平飛行に入った。
堀田〔はっはっはっッ…どうだ、気持ち良かっただろ?〕
理樹「え、えぇ…お陰様で…」
堀田〔さっきのは、燃料が勿体無いから滅多にやらねえけど今日は歓迎サービスだ。目を回すなよッ!〕グイッ
地上に居た時とは人が変わったかのように口調が荒くなるアシュラ
次の瞬間、機体がピッチアップし減速し始めた…コブラだ…
コブラは、航空機のマニューバの1つであり、空戦機動の1つである。水平飛行中に進行方向と高度を変えずに機体姿勢を急激にピッチアップして仰角を90度近く取り、そのまま水平姿勢に戻る機動だ…これはアクロバットではない…戦闘飛行だ…
理樹「うっ…ぐぐぐっ…」
堀田〔まだまだァッ!〕
次の瞬間、天と地がひっくり返ったように見えた。〔宙返り〕…これも空戦機動の1つだ。
プププププッ 機体の耐圧警報が鳴る。
堀田〔どうだ?リトル楽しいだろ?〕
理樹「は、はい…とっても…」
堀田〔今日はこのぐらいにしといてやる。死なれちゃ困るからな。〕
理樹「部隊でもこんな戦闘機動は取ったことがありません…流石アグレッサーです…」
堀田〔おいおい、褒めるにゃまだ早いぜリトル、明日からお前もこのぐらい朝飯前になってもらわねぇとな がっはっはっ!〕
理樹「はい…」
(何か凄い所に来てしまったぞ)
堀田〔よし、最後は格闘戦(ドッグファイト)して
降りよう。おい、ジェイク!〕
アシュラは無線で僚機であるジェイクに呼びかけた。
ジェイクは青迷彩のJ型のF-15でアシュラの僚機を務めていた。
銭形〔何ですか?アシュラ〕
堀田〔ちと、ドッグファイトしよう。
相手になってくれ。〕
銭形〔わかりました。制限時間は燃料を鑑みて10分で良いですね?〕
堀田〔あぁ構わねぇ。来い!〕
銭形〔行きます。〕
静かに闘いの火蓋が切られた。
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〜306飛行隊隊舎〜
玄武「理樹、元気にやってますかね?」
空井「今頃 アグレスの洗礼を受けてるかもな。」
柊甫「確か、堀田の後ろに乗せられて飛んでるみたいですよ。」
空井「おお…よりによって堀田か…荒々しいぞアイツの運転は。」
樹「アイツ、アグレスの中でも腕利きだから狙われたら怖いんですよねぇ…」
角谷「〔千歳の荒熊〕と言われたベアでも怖いものがあるんですね。w」
樹「うっせぇやい」
渉「確かに堀田と光に狙われた日にゃ逃げ切れんかったけぇな…」
豊「窪田3佐が弱気な事言うの珍しいですね」
柊甫「まぁ事実だしね。」
光「俺は普通に追いかけてるだけですよ、窪田さん。むしろ、堀田よりも怖いやつが居ますよ…アグレスには…」
空井「そうだな…アイツはマジでやばいな。風間さんより怖いかも。」
柊甫「なぜリトルを推薦したんです?隊長」
空井「今のリトルに足りないのは刺激だと思ってな、風間さんに頼み込んだ。」
柊甫「なるほど、確かに最近のアイツは元気が無かったですね。」
空井「そ、だから荒療治だな。」
渉「隊長らしいっすね。」
空井「さ、仕事だ仕事」
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〜飛行教導隊隊舎〜
堀田「大丈夫か?リトル」
理樹「大丈夫です…続けてください。」ウプッ
堀田「つまりお前は、何故あんな結果になったのか知りたい訳だな?」
理樹「はい…理解できませんでした。だから、知りたいんです。」
堀田「学習意欲があるのは大いに結構だが、自分でまず考えてみたか?考え抜いてそれでも分からない時は俺かジェイクに聞くといい。ここに居る間に答えが見つかると良いなリトル。」
理樹「はい…」
堀田「今日はゆっくり休め。以上だ」
理樹「了解…」
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〜官舎〜
理樹「ふうっ…」
(隊長は何故 僕をアグレッサーに…分からない。)
コンコン
ドアがノックされる。
理沙「パパ?大丈夫?」
理樹「理沙…大丈夫だよ。」
理沙「はい、これ…」
アカネが1つのマグカップを差し出してくる。
中身はカフェオレだ
沙耶が入れてくれたんだろう…
理樹「ありがとう理沙 お陰で身体が温まるよ。もう遅いから早く寝なさい。」
理沙「うん、おやすなさいパパ」
理樹「おやすみ。」
ありがとう、理沙、沙耶…
悩んだって仕方がない…
もう少し頑張ってみるよ僕
続く…
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