音速の鷲乗りα 01




ゴォォォォォォォォォォォォォォッ

1機の飛行機が高高度を飛行する。

娘「パパ、見て〜!」

娘は空高く一筋に伸びる飛行機雲を指差し僕に言った。

父親「理沙は空が好きだね。」

理沙「うん!理沙も大きくなったらパパみたいになるの!」

父親「はははっ…そうか、じゃあ今からいっぱい頑張らなきゃね。」

理沙「うん!頑張る!」

母親「理樹君、理沙ご飯にしましょう〜。」

理樹「お、沙耶が呼んでる。行こう 理沙」

理沙「うん!」

沙耶「まぁた、飛行機雲を見てたの?本当に空が好きね〜理沙は」

理樹「そうだね、流石は僕達の子だよ。」

沙耶「そういえば、理沙って名前も理樹君が考えてくれたんだよね?」

理樹「そうそう、出産には立ち会えなかったけど、せめてもの償いとしてね…」

沙耶「良いのよ…気にしないで理樹君…あれは仕方ない事なのよ。」

理樹「ありがとう、ごめんね…沙耶」

理沙「パパとママは何のお話ししてるの?」

理樹「理沙が生まれた時の話だよ〜」

沙耶「そうそう、生まれて来てくれてありがとうって言ってたのよ。」

理沙「早く赤ちゃんに会いたいな〜」


いま、沙耶の体内には新たな命が宿っている
予定日は来月の予定だ。
理沙も妹が出来るのが楽しみのようだ。
現に、僕も楽しみなのだが一つ不安がある…また、立ち会えないのじゃないかと言うことだ…
沙耶は気にしてないと気丈に振る舞っていたが本当は寂しかったはずだ…
本当に申し訳なく感じる。

玄武「何暗くなってんだ?理樹」

理樹「え…?」

葉留佳「そうだよ、理樹君 パパがそんなに暗いと理沙ちゃんが不安になっちゃうよ。」

唐突に声をかけてきたのは 僕と同期の玄武と高校時代の同級生である葉留佳さんだった。
玄武と葉留佳さんは結婚している。

理樹「葉留佳さん…玄武…ありがとう。」

沙耶「そうよ理樹君!私は気にしてないから。貴方は国防の最前線、言うなれば私たちを守るために働いているんだから仕方ないわよ。だから気にしないで。」

理樹「うん… でも、次はちゃんと立ち会えるようにするよ。」

沙耶「待ってるわパパ」

葉留佳「相変わらずお熱いですな〜」ニヤニヤ

玄武「そうやなぁ」

玄武と葉留佳さんが茶々を入れてくる。
昼食を食べた後、はしゃぎ疲れたのか理沙は僕の背中で眠っている。
隣を歩く沙耶、その横顔に見惚れてしまった。
玄武と葉留佳さんとは帰路の途中で別れた。

僕の仕事は、先程少し触れたが国防の最前線で働いている。そう、僕は…
航空自衛隊の最高峰 F15パイロット 
通称「イーグルドライバー(鷲乗り)」だ。

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航空自衛隊 小松基地(石川県)ここは、F15の航空隊が3個飛行隊あり通称イーグルネスト(鷲の巣)だ。 
僕はここの第6航空団306飛行隊に所属している。 階級は2等空尉 TACネームは〔リトル〕だ。何故このようなネームになったかは不明だが、歓迎会の席で決まった事は覚えている。

理樹「おはようございます。」

???「お、おはよう。リトル」

理樹「おはようございます。ランサー」

パイロットは基本TACネームで呼び合う。
この、ランサーと呼ばれた男は

安村柊甫 3等空佐(ランサー)306飛行隊の
飛行班長Aだ。飛行班長はフライトスケジュールや訓練予定などを綿密に練る仕事だ。
安村3佐は306飛行隊に来る以前は、新田原の第23飛行隊で教官をされていたそうだ、生徒曰く普段は穏やかだが、空に上がるとめちゃくちゃ怖いらしい…。

柊甫「リトル、どうしたの?元気ないじゃん」

理樹「そんな事ないですよ。俺は元気ですよ!」

柊甫「そう?それなら良いんだけど。」

???「おぃーっす。おはようさん」

柊甫「あ、おはよう。コブラ」

理樹「おはようございます。」

この(コブラ)と呼ばれた男は 
窪田渉3等空佐 安村3佐の同期で同じく飛行班長である。
窪田3佐は小松に来る前は那覇の204飛行隊に居たようで、浅黒く日焼けした強面な人だ。
強面な反面 一人娘の愛菜ちゃんを溺愛している


渉「あ、柊甫。これやっといて〜」

柊甫「渉…またかよ… 何回目だよ。」

渉「いやぁスマンスマン、昨日酒飲んで寝ちまったもんでさ…今度借りは返すからさ な、頼むよ♪」

柊甫「ちぇっ…調子のいい奴め。」

???「まぁまぁ そう言うなや柊甫。同じ釜の飯を食ってる仲やろ持ちつ持たれつやで」

理樹「おはようございます!ベア」

渉「おはようーっす。樹」

柊甫「おいっす。 今日は早いな。樹」

樹「まぁねぇ昨日が夜勤だったからねぇ。」

ベアと呼ばれたこの人は…
熊岡樹3等空佐 TACネーム(ベア)
由来は名前に熊が付くからだそうだ。
普段はのほほんとのんびりしたイメージだ。 
元千歳基地の201飛行隊出身でその時のあだ名が(千歳の荒熊)だったらしい。
普段の立ち振る舞いからは想像できない…

???「お、おはようございます! 今日もよろしくお願いしましゅッ!」

理樹「おはよう。ルーキー」

樹「お〜相変わらず元気ね ルーキー」

渉「朝からうるせぇなぁ」

柊甫「おっはよ〜 ルーキー」

豊「自分、元気なのしか取り柄がないので!」

ルーキーこと、新人の今年配属された 
緑川 豊3等空尉 TACネーム(ルーキー)
極度のあがり症だが、元気が取り柄で部隊のムードメーカー的存在だ。

???「ちょ…豊、あがりすぎだって…全く…。」

柊甫「おはよう、ヘルス」

樹「今日も仲良く出勤かい?」

ヘルスと呼ばれたのは…
佐貫 慎太郎3等空尉 TACネーム(ヘルス)
ルーキーと同じく306飛行隊の新人パイロットだ。 
自称「地獄を見て来た男」らしい…

理樹「おはよう。佐貫くん」

渉「おはよう。佐貫」

慎太郎「あ、おはようございます。今日もよろしくお願いします。」


0800の 国旗掲揚終了後に訓練前のブリーフィングが始まった。

飛行隊長「おはよう。諸君。」

一同「おはようございます!」ビシッ

飛行隊長の朝の挨拶で全員スイッチが切り替わる。

飛行隊長 空井大輔 2等空佐
  TACネーム(スカイ)
飛行隊長にしては珍しく航空学生出身の人だ。201飛行隊 305飛行隊 飛行教導隊(アグレッサー)を経て306飛行隊の隊長になった、プロのイーグルドライバーである。

空井「それでは、ブリーフィングを始める。気象士 頼む。」

気象士「分かりました。おはようございます。 本日訓練空域での気圧配置はこのようになります。午前中は大陸から流れてくる寒気の影響で、曇天が予想されます。低気圧も接近しているため1日を通して曇天が続く予想です。」

飛行前ブリーフィングは気象隊の気象予報士官がその日の天気図を用いて予報する。

気象士「以上が、本日の天気になります。質問はありますか?」

一同「無しッ!」

空井「これで、全体の飛行前ブリーフィング終了する。各自のブリーフィングに移ってくれ。以上だ。」

一同「了解ッ!」

今日、僕と一緒に飛ぶ予定のパイロットは、コブラこと窪田3佐だ。2機編隊で飛行し
高度30000ftで仮装敵機と合流し格闘戦訓練の予定だ。

理樹「よろしくお願いします。」

渉「おう、よろしくな。とりあえず飛行前ブリーフィング始めよう。」

先ほどまでのおちゃらけた雰囲気はなくなり、目つきが鋭くなる窪田3佐 さすが、歴戦のイーグルドライバーだ…この瞬間はいつも緊張する。

10分程でブリーフィングは終了した。

本日のペアは

僕(リトル)&窪田3佐(コブラ)

安村3佐(ランサー)& 佐貫(ヘルス)

熊岡3佐(ベア)&高崎2尉(エルモ)

大石1尉(ソウ)&豊(ルーキー)

竜王1尉(ドラキン)&角谷2尉(バッカス)


各ペアがドグファイト(格闘戦)訓練
(ランサーとヘルスは緊急発進訓練)を行う予定だ。

ブリーフィングの後エプロン(駐機場)の列機へと向かう。あのことが気になってるせいかコブラに声をかけられた。

渉「どうした、リトル 緊張してんのか?」

理樹「ええ…少し…やっぱ訓練が終わるまでは緊張しますよ。コブラは…窪田3佐そう言う事なかったですか?」

渉「俺は…あまりないなぁ ただいつも心に決めとるんは必ず生きて帰る。当たり前のことじゃけど大事やけんの。それに、嫁と娘も食わしていかんといけんしな。」

理樹「そうですよね ありがとうございます。」

渉「その志はええけど、あんま気負いしすぎるなよ。良い仕事が出来んで」

理樹「はい!」

樹「渉、帰ってきたらジュージャンしようや」

渉「まぁたやるんかよ」

柊甫「私も混ぜてくれ」

竜王「あ、ベアにランサーずるいっすよ!コブラ!俺も混ぜてください!」

豊「俺もやりたいっス!」

結局全員がジュージャン参加になってしまった。

306飛行隊はいつもこんな感じに…

「やる時はやる」

それが空井隊長の理念だ。

965号機 僕の乗る機体だ 尾翼には石川県の県鳥である白山のイヌワシが描かれている。


窪田3佐も958号機に乗り込む。

整備員のベルト装着補助を受け、俺は身を引き締める。いよいよだ…

各計器類の電源を入れ、JFSを起動させエンジンに火を入れる。

背後でけたたましくエンジンがうねる。

「warning engine FIRE warning engine FIRE
engine FIRE right engine FIRE right 」

コクピットの音声アナウンスが鳴る。
右手のハンドシグナルで右エンジン出力を示す。10% 20%...50% 徐々に出力が上がりエアインテークが下がる、エンジン音も聴き慣れた甲高い音へと切り替わる。 左エンジンも同じ要領でスタートさせていく、エンジンの起動後 
ラダー、フラップ、エアブレーキ、エンジンノズルなどの動作を確認する。

確認終了後、TWR(管制塔)と交信する。
2機以上でフライトする場合、TACネームではなく部隊のコールサインを使う。

渉〔TWR  this is EAGLE03 request 〕

理樹「06」

TWR〔EAGLE 03 .go a head〕
(イーグル03 応答どうぞ)

渉〔TWR request taxi〕
 (誘導路知らせ)

TWR〔EAGLE03.taxi by B2 runway16R clear for take off wind 260 at4〕
(イーグル03 誘導路B2を通り16Rから離陸せよ
風は260°から4m)

渉〔roger taxi by B2 runway16 clearfor take off EAGLE03〕
(了解、B2誘導路を通り16Rより離陸する)

TWR〔EAGLE03 read back ic collect〕
 (イーグル03 その通り)

管制塔と一通りのやり取りを終え僕らは滑走路16Rへと向かう。

TWR 〔EAGLE03.Hold short of runway〕
(イーグル03 滑走路手前で待機せよ)

渉〔roger EAGLE03 〕
(了解、イーグル03)

理樹「06」

東京からの乗客を乗せた民間機が降りてくる…
小松基地は民間空港と滑走路併用のため民間機も離着陸する。そのため、民間機着陸後の離陸となる。   


TWR〔EAGLE03 Wind 260 at 4. Cleared for takeoff〕
(風は260°より4m  離陸を許可する。)

渉〔roger cleared for take off EAGLE03〕
 (了解、イーグル03 離陸する。)

コブラは言い終わると同時にエンジンの出力を上げ滑走を始めた。続くように僕も間隔を置いてエンジン出力を上げる。

僕の乗る965号機は加速し瞬く間に上昇を始める。車輪を上げ 30000ftまで上昇する。
流石は世界最強と謳われるだけある戦闘機だ…

数分後、目標高度である30000ft(9000m)に到達。

今日のメニューは 2対2の格闘戦訓練だ、
僕が編隊長でウィングマンに窪田3佐(コブラ)が就く。
仮装敵機は高崎2尉(エルモ)と熊岡3佐(ベア)だ…高崎2尉も中々手強い人だ。何せ熊岡3佐と高崎2尉のペアは小松基地でもトップクラスの実力だからだ。

渉〔よ〜し、それじゃ始めよか。制限時間は15分 最初にケツを取れた方の勝ちや。〕

祐介〔了解、お手柔らかに!〕

樹〔あいよ〜〕

理樹「了解…」

窪田3佐の合図でドグファイトが始まる。僕は僚機である窪田3佐に指示を出し敵機の背後を取らせなければならない。
一度お互いを通り越し、ターンする。ターン終了と同時に戦いの火蓋が切られる。

ふーっ…僕は深呼吸をし 敵機を探す。

戦闘機が動く時、最大9Gの負荷が身体を襲う
そんな中、冷静な判断を下しウィングマンに指示を出さねばならない。

(見つけた!高崎2尉(エルモ)の機体だ!)

理樹「targetタリホー! コブラoffense!」

渉〔roger!〕

僕はすぐさま、コブラに敵機(エルモ)の背後に付くよう指示を出した。
コブラがエルモを追いかけている間、僕は少し上からその様子を観察し事細かく指示を送る。

理樹「そのまま、回れ もうちょっとだ。」

渉〔offense 入る!〕

理樹「入れッ(もう少しだ!)」

祐介「中々やるな、リトルめ腕を上げたな…しかし、こちとら…伊達に小松のNo.2じゃないんだよなッ」

そういえば、熊岡3佐(ベア)の姿が見当たらない…どこだ…?

そう思った矢先…

ピロロロロロロロロロ  

渉〔リトルdefence!〕  

樹〔リトルのdefence〕

ロックオンされてしまった…ドグファイトに集中しすぎて後方を見てなかった。
エルモを囮に使ったベアは密かに僕の後方に忍び寄っていたのだ…

理樹「負けた…完敗だ。」

渉〔惜しかったな、リトル〕

祐介〔ロックオンされるまでの追い込みはなかなか良かったぞリトル〕

渉〔訓練終了、帰投する〕

一同「了解」

帰投途中、僕は考え事をしていた。
(このままで良いのか、空自最高峰のイーグルドライバーになれたのは良いが…)

その悩みを見透かしたかのように、窪田3佐から無線が入る。

渉〔リトル、今日のお前の指示は間違ってないで やから気にすんな。ジュース奢っちゃるけん。〕

理樹「ありがとうございます…。」

見慣れた小松の街が見えてきた。
僕たちは着陸態勢に入った。

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〜ブリーフィングルーム〜

帰投後、僕と窪田3佐はデブリを行った。
デブリとはその日の訓練の良かった点や反省点などを評価するブリーフィングの事だ。

渉「さっきも言うたけど、お前の指示は間違ってなかった じゃけどちょい焦りすぎやな。」

理樹「はい…すいません。」

渉「別に責めてるわけやないから、そう気を落とすな、次頑張ればええんよ。責任感の強いお前やからちょい難しいかも知らんけど、真面目すぎるんもしんどいじゃろ?」

理樹「そうですね…次は同じ失敗をしないように頑張ります!」

渉「その意気や、ほんじゃ、お疲れ様。」

理樹「お疲れ様でした!」

樹「おっ、待てい ジュージャンターイム!」

祐介「まじすか…本当にやるんですか。」

豊「今日こそは汚名返上だッ!」

柊甫「今日の犠牲は誰かな〜」

大石「まぁたやるんすか〜?」

竜王「モンエナ♪モンエナ♪」

各々好き勝手言うものの結局は全員参加しているのが306の凄いところ。
306の絆は飛行隊随一かもしれない。
結局、この日の犠牲者は窪田3佐だった。

樹「渉、ゴチになりやーす!」

柊甫「モンスターいただき〜」

大石「窪田さんいただきます!」

豊「すいません!いただきます!」

渉「ええよええよ、こないだボーナス出たけん 好きなん買いんさい。」

竜王「ゴチっす!」

先ほどの暗い気持ちから少し楽になった気がする。流石は歴戦のイーグルドライバー 心のケアのやり方も知っていた。
モンスターを飲みながら、そう考えていた。

豊「そういえば、話変わるんですけど…今日のアラート待機は誰なんですか?」

樹「昨日は俺やったからなぁ。え〜と…」

柊甫「今日は303の大崎と伊吹のペアだね。」

渉「303の大崎と風ちゃんか珍しい組み合わせやな。本来なら、竜ちゃんと大石じゃろ?」

竜王「すいません、この間のアラート待機代わったんで今日は上がりです。」

大石「すいません。俺も明日は出張で地本に行くんですよ…」

祐介「え?何しに行くんですか?」

大石「1週間、臨時で広報官すんのよ…あ〜ぁたいぎぃ」

樹「そりゃ、めんどくさい。広報班長によろしく言うといてや。」

大石「了解っす」

理樹「それじゃ、僕らそろそろ」

柊甫「そうだな、ほら明日も訓練なんだから さぁ帰ろ帰ろ。」

樹「へ〜い おつかれしたっ!」

渉「じゃあの〜」

大石「お疲れ様でした。」

豊「お疲れ様で〜す。」

佐貫「お先に失礼します。」


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〜アラート待機所〜

ここは、小松基地のアラート待機所 とは
24時間態勢で領空侵犯してくる
国籍不明機(unknown)の対応をするためパイロットと整備員が待機する場所である。
スクランブルはいつ発令されるかもわからない為、パイロットは片時もここを離れるわけにはいかない。24時間待機する為、食事も運ばれてくる。俺も何回かアラート待機任務に就いたが、緊張感はいつも解けない。
毎回、何もない事を祈るばかりである。

大崎良樹2等空尉 TACネーム(ソード)
TACネームの由来はすらっとした高身長な所から来ている。

303飛行隊の紅一点である。
伊吹風子3等空尉 TACネーム(キャンディ)
ルーキーやヘルスの同期で、女性パイロットとしては2例目である。(キャンディ)の由来は甘いものが好きそうと言う勝手なイメージからだ。

良樹「なぁ、風子…いい加減に警戒するのやめてくれないか?」

風子「辞めません、大崎さんはunknownと同じくらい脅威です! 306の緑川君もですが」

良樹「あ〜緑川か、佐貫と同じくあいつも確か小松配属になったんだよなぁ…」

風子「そうですね。」

良樹「そういやお姉さんは元気か?」

風子「お姉ちゃんなら元気ですよ。赤ちゃんもすくすく育ってます。」

良樹「そうか、平和だな。」

風子「平和です…今日は何事も無ければ良いのですが。」

良樹「フラグだぜ そのセリフ」

風子「本心です!」

その時、発令士官の元に一本の連絡が入る。

発令士官「了解、スタンバイに入ります。」

佐渡のレーダーサイトからの連絡だ
フライトプランに該当しない国籍不明機が日本の領空に接近していると一報が入った。

俺と風子はにわかに緊張した。

スクランブル待機所には俺と風子の他に、3時間待機のパイロットである音無2尉TACネーム(カナデ)、前原2尉TACネーム(キラ)の計4名が待機している。

音無2尉は落ち着かないのか、地図を広げて国籍不明機の位置を確認している。
前原2尉も同じだ、2人とも落ち着かない様子である。

良樹「音無さん、unknownはポイント的にはこの辺りですか?」

結弦「あぁ…防空識別圏ギリギリを飛んでるからね…」

圭一「くそッ…焦ったい。来るなら来い!」

前原2尉の願いが通じたのか…ホットラインの電話が鳴った。

発令士官「01スクランブル!」

ピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッ

俺と風子は直ぐに駆け出し、待機室横の格納庫にあるF15Jに乗り込みエンジンを起動した


キュィィンィィィィィィィィン クォォォン

良樹「TWR  Dragon flight check in」
 (管制塔 ドラゴンフライトだ)

風子〔02〕

TWR「Dragon01 unknown vector190 magntain angel33
by gate  Follow data Link read back.」
(ドラゴン01 国籍不明機は方位190° 高度33000ftを飛行中 最大加速で上昇しDCとデータリンク 復唱せよ。)

DC: 防空司令所

良樹「Dragon01 roger. vector190 maintain angel 33 by gate Follow data link 」
(国籍不明機は方位190°高度33000ftを飛行
最大加速で離陸し DCとデータリンク)

TWR〔Dragon01 read back iscollect〕
(ドラゴン01 その通り)

俺と風子の乗るF15Jはアフターバーナを焚き最大加速で離陸した。
スクランブルが発令されてからここまで約5分の出来事だ

これが国防の最前線だ…

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〜官舎〜


理樹「ふぅ…ただいま〜」

理沙「パパお帰りなさ〜い」

沙耶「おかえりなさい、理樹君」

理樹「ただいま。今日の晩御飯何かな〜」

理沙「今日はハンバーグだよ!理沙もお手伝いしたんだよ!」

理樹「そっかそっか〜 なら、美味しいハンバーグだね。」ニッコリ

理沙「うん!」

沙耶「この子ったらパパのためにハート型のハンバーグ作ったのよ〜」

理沙「もう!ママ それは内緒!」シーッ

理樹「理沙〜ッ!」

僕は理沙をギュッと抱きしめた。

幸せな家庭を築けてるなぁとしみじみ思うのであった。

その時…

ゴォォォォォォォォォォォォォォォォ 

轟音と共に2機のF15Jがアフターバーナーを焚いて離陸していく。スクランブルか…
今日は確か、大崎2尉と伊吹3尉だったか
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜306飛行隊舎〜

柊甫「大崎と伊吹が上がったな。」

渉「あぁ、定期外の日本海北部からのお客さんらしい。珍しいな。」

樹「あの位置やと千歳か三沢が対処するんじゃないんの?うちにお鉢が回ってくるのは解せねぇな…」

渉「北部から言うても、ほぼ大陸から真っ直ぐこっちに来とるらしいけん、小松から上げたっちゅう話や」

柊甫・樹「なーる」

空井「どうだ? 訓練予定は組めそう?」

渉「あ、隊長! お疲れ様です。」

隊長「お疲れ、明日のフライトスケジュールができたら見せてくれ。部屋にいるから」

柊甫「了解です。」

そう言って隊長は部屋に戻った。

渉「明日の組み合わせなんじゃけど、直枝と樹のペア 俺と緑川ドグファイトやらせたいんじゃけどかまんかいの?」

樹「了解、柊甫はどうすんの?」

柊甫「私は大石の代わりに高崎と佐貫連れて上がるよ。」

渉「角谷と竜王は? ラプコンか?」

柊甫「明日はウチがラプコンの担当だろ?角谷と竜王を割り当ててるよ。」

渉「了解、よっしゃ書類作って帰ろうぜ。」

2人「ほーい」

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〜日本海上空〜

良樹「Trello.this is Dragon01
now main tain angel330 」
(トレロこちらドラゴン01 現在高度33000ft)

トレロ〔Dragon01 this is Trello.
your under my Control stare 060
main tain present angel〕
(ドラゴン1 こちらトレボー貴機を誘導します。同高度のまま方位060へ)

良樹「Dragon01 roger」

風子〔02 roger〕

数分後 会敵予想ポイントに到達

良樹「unknown tallyho 、02 写真を頼む。」

風子〔02 了解。〕


国籍不明機はロシアのtu16爆撃機だった。
爆撃機の周囲を旋回し俺はすぐさま、通告行動を開始した。

良樹「貴機は日本の領空を侵犯する可能性がある直ちに引き返せ。繰り返す、貴機は…」

ロシア機〔…………〕

ロシア語で通告する、しかし爆撃機は依然進路を変えない。

風子〔01 もうすぐ、領空です…〕

良樹「分かっている。 繰り返す、貴機は日本国領空を…」(俺達が撃てない事を良いことに…頼むから早く出てくれ…)

3回目の通告でやっと朋也の願いが通じたのか爆撃機は北へ進路を取り領空の外へと出た。 
任務終了、毎度の事だが冷や汗が出る仕事だ…一つ間違えると国際問題果ては戦争に発展しかねないからである。

良樹「Trello this is Dragon01 unknown is SITE OUT」
〔トレロ国籍不明機は領空の外へ出た。)

Trello〔roger   Dragon RTB〕
  (基地へ帰投せよ〕

良樹「Dragon01 roger」
 (ドラゴン01 了解)

風子〔roger 02……あの…ソード〕

良樹「どうした?風子」

風子〔今回は素直に引き返してくれましたけど…あれが実は…と考えるとゾッとします…最悪です…〕

良樹〔そうだな…しかし、俺たちの仕事は最悪の事態を未然に防ぐ抑止力も含まれる。キツいだろうが国のため家族のためだ…〕

風子〔そうですね… 〕

本当に何事もなくて、良かった…

俺と風子は小松基地を目指して帰投した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜小松基地 306飛行隊隊舎〜

隊長室から出てきた、隊長と竜王1尉だ…

竜王「どういう事ですか!」

理樹「おは…」

柊甫「おはよう。びっくりしたやろ?朝からこんな感じなんだよ…」

理樹「えぇ…ドラキンが声を荒げるなんてよっぽどですね。」

竜王「隊長!納得いきません!」

角谷「落ち着いてください!竜王さん…ダメです!」

珍しく竜王1尉(ドラキン)が隊長に言い寄っている。その隣で、角谷2尉(バッカス)がキングを落ち着かせている。

空井「先ほど言った通りだ、ドラキン…君を303飛行隊に出向させる。向こうの隊長とも話はついている。俺も反対はしたんだが、向こうの隊長がどうしてもと言ってな…すまないが、頼む。」

竜王「分かりました…俺の代わりは誰が来るんです?まさか、あいつが…?」

隊長「あぁ、君は彼と入れ違いで出向となる。期間は約半年、しっかり頼む 以上だ。」

半年間だが、ドラキンが居なくなるのは戦力的にキツいものがあるな。しかし、あの人って誰の事だろう?

理樹「あの人って誰の事ですか?」

柊甫「あぁ、リトルは知らないんだったね。今日着任予定の緑川 光1尉TACネームは
(グリン)だ。今は303飛行隊所属だが以前は、飛行教導隊(アグレッサー)の凄腕パイロットだったらしい。俺も会ったことはないが、竜王とは同期らしいよ。」

理樹「そうだったんですね… あ、ドラキン!」

竜王「リトルか…聞いてたんだな。奴は腕は立つが注意しとけよ…じゃあな。」

柊甫「竜王…身体壊すなよ。」

竜王「班長も短い間でしたがお世話になりました。お身体に気をつけて…」ペコリ

そう言って竜王1尉は隊舎を出て行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜303飛行隊隊舎〜

303飛行隊長「という訳だ、光。お前の実力、306に見せつけてこい。」

光「分かりました。隊長は306の空井2佐とお知り合いなんですよね?」

隊長「ああ、航学時代の同期だ昇任も同じだったよ。それがどうした?」

光「いえ、以前、アグレッサーで空井2佐と一緒だったので、短期間でしたが…」

隊長「あぁ、そう言えばそうだったな。空井によろしく伝えておいてくれ。」

光「了解です。 失礼します。」
(まさか、竜ちゃんとトレードになるとは…絶対怒ってんだろうなアイツ…)

空井さんとウチの隊長が同期か…世の中狭いもんだな。

303飛行隊長 神田哲雄2等空佐
 TACネーム(ゴッド)
204飛行隊、305飛行隊を経て第11飛行隊
(ブルーインパルス)、303飛行隊長となった
凄腕のパイロットだ。
空井隊長とは航学時代の同期らしい。

光「とりあえず…挨拶しに行くか。」


俺は303の隊舎を出て306の隊舎へと向かう。
その時…「あ…」という声がした。

竜王「光…お前、俺の代わりにアイツらの指導頼むわ…」

豊「竜ちゃんこそ、ウチのチビ達を可愛がってくれ」

竜王「あぁ、任せとけ…」

そう言って俺たちは別れた
そして、それぞれの部隊で訓練が始まった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜太平洋訓練空域〜

理樹「ルーキー90° 旋回now!」

豊〔了解、Line up!〕

理樹「そのまま回れ もうちょっとだ」

祐介〔入るッ!〕

理樹「入れ」

ルーキーをベアの背後に付けるように誘導し、僕はベアの僚機である、グリンを追跡する。

理樹「どこだ…」

身体をGが襲う。 見つけた…左上方(まだこちらの接近には気が付いてないようだ…前回のベアの戦法で行くか。)

僕は徐々にグリンとの間合いを詰めて接近する。機銃に切り替えロックオンしようとした矢先、視界からグリンの機体が消えた。

理樹「どこだ!? どこに消えた!?」

360℃周囲を確認するが、見当たらない。
どこだ!? 一瞬の隙に居なくなった

次の瞬間、ピロロロロロロロロロ
ロックオンされた事を示す警報音がコクピット内に鳴り響いた。

グリンは僕がロックオンしようと機銃に切り替えた隙を狙い、機体をフラットスピンさせ下方に消えたらしい←(ルーキー談)

理樹「完敗だ…」

光〔なかなかいい動きだったぞ。リトル〕

豊〔クソッ…〕

樹〔訓練終了 みんな、帰るわよ。〕

3人〔了解〕

これが…元アグレッサーの実力なのか…勝てる気がしない。 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜日本海訓練空域〜

竜王〔ソード right turn……now!〕
(ソード 右旋回…今ッ)

良樹「了解!now!」

圭一〔キャンディ 3秒後に右へ急上昇しろ!〕

風子〔了解!〕

圭一〔3…2…1… now!〕

風子〔now!〕

ギュィィィィィィン

風子の乗るF15が俺の目の前から消える。

良樹「風子め…なかなかやるな!」

竜王〔ソード ケツに付かれるぞ!振り切れ!〕

良樹「了解!」

圭一〔逃がさないぜ、ソード!〕

竜王〔ソードが追われてる。俺が間に入るか…〕

良樹「このままじゃ、殺られる…」ピクッ

反射なのか防衛本能からなのかは分からないが、俺は操縦桿を上げ、エアブレーキを解放しループ(宙返り)の要領でキラの追撃をかわし、キラの背後に付く。

圭一〔チッやるな!ソード!〕

竜王〔なんて奴だ…あんな避け方見た事ねぇ〕

風子〔大崎さん流石です…流石は緑川1尉の1番弟子ですッ…〕

空戦の結果、俺とドラキン組の有効判定となった。訓練終了後 小松基地に帰投した。


       続く…

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