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「棚を増やしたい」と相談されたのに、「棚を減らしましょう」と提案したハナシ。


棚を増やしたい!というけれど


「ここに棚を増やしたい!レイアウトを変更したい!」というご相談を受けました。

ざっくりとした内容は下記のとおり。

  • 工程①で仕掛品をどんどん作っている

  • となると工程②の前にある仮置き棚だけじゃ足りない

  • だから棚を追加して、工程①の稼働率を上げていきたい

ふむふむ。なるほど。
至極まっとうなアイデアだと思います。
工場に棚を置けるスペースがあるのであれば、きっとそう考える人も多いと思います。

でも待てよ?
本当に棚は必要なのかな?

詳しく話を聞いていくと、実は1年ほど前にも仮置き棚を増設したそう。
ということは「棚を増やすことで解決しなかった」ということでは?

こんなときに「ああ、もっと早くTOCに出会っていれば・・・」なんてことも思ってしまう今日この頃なのである。

そもそもの問題を定義する

では、いったい何が問題なのでしょうか?

  • モノが溜まる

  • 時間が掛かる

  • 人が余裕なく動き回っている

そんな場所があれば、そこが「ボトルネック」と考えてよいでしょう。
そのボトルネックの流れを良くしてあげるだけで、全体の生産性はグッと上がります。

全体の生産性が上がるということは、

  • モノがスムーズに流れる

  • 在庫や仕掛品は少なくてよい

  • リードタイムが短縮される

  • キャッシュフローも良くなる

ということ。
ではどんな解決策が考えられるのでしょうか?

棚を減らした場合をイメージしてみる

むしろ棚を減らしたらどんなことが考えれられるでしょうか?
今までの仮置き商品数が10アイテムだったとして、5アイテムしか置けなかったらどんなことが起こるでしょうか?

  1. 仮置き棚に置ける数が制限される

  2. 工程①はそれ以上作業を進めることができない

  3. 工程①の担当者は手あまりが発生する

  4. 工程①の担当者が工程➁を助ける

  5. 仮置き棚が空く

  6. 「1~5」を繰り返す

こんな動きができたら、リードタイムはどうなるでしょうか?

材料(商品)の気持ちになって考えてみる

普段、私たちが考えているのは「人」や「機械」のことについてがほとんどだと思います。
でもちょっとまって。
ここは気持ちを新たに、「材料」の気持ちになって考えてみましょう。

材料は各工程を通るごとに形を変え、完成形(商品)へと近づいていきます。

どうせなら、早く完成形となってお客様のもとに届いて、お金に姿を変えて工場に還元して戻ってきたいですよね?

そんな材料が仮置き棚にずっと保管されていたらどんな気持ちになるでしょうか?

この世の中のほとんどの会社ではタッチタイム(流れている時間)よりもキュータイム(止まっている時間)のほうが長く、それによってリードタイムも伸びてしまうのです。

棚を減らすためのルール作り

話を戻しましょう。

ここで必要なことは「仮置き棚がいっぱいの時は工程➁を助ける!」というルールを明確にすることです。

ルールなく棚を減らしても、工程①の人は頭をフル回転させて死に物狂いで加工し続ける方法を考えてきます。
(商品の上に商品を置く。とか、仮置き棚じゃないところにも置く。とか必死で考えます)

そうなっては元通り。
いや、むしろ状況は悪化してしまいます。

実際にこの工場では1年前に棚を増設しましたが、作業方法や各工程の流れに対する処置をしていなかったため大きな改善には繋がらず、むしろリードタイムは伸びてしまったかもしれません。

つまり、あえて棚を減らすことで「全体の流れ」について考えるきっかけを作り、仮置き時間を少なくしてリードタイムを短縮しましょう。
そうなったらもっと儲かりますよ?
というお話です。

それぞれの工程の生産性を上げるために必要な処置(棚を追加)するのではなく、全体の流れに対してメスを入れることが求められます。

非ボトルネックを改善する副作用

当初の相談とおり、工程①で加工された仕掛品を仮置きするための棚を増やし、工程①をフル回転させたらどうなるでしょうか?

  • 仕掛品がどんどん溜まる

  • 後工程はプレッシャーを感じる

  • リードタイムが伸びる

  • 判断材料が多くなる

  • 余計な段取り替えや手直しが発生する

  • キャッシュフローが悪化する

といったことになりそうですよね?

つまり、部分的な改善をするのではなく、全体を俯瞰して、もっとも生産性の低いところ(ボトルネック)に集中して改善する、流れを合わせる、助ける。ということが大切なんですね。

人は空白を埋めたくなる

ご家庭にある棚はパンパンに埋まっていますか?
それとも余裕(隙間)がありますか?

ほとんどの方はきっと「パンパン」にモノが詰まっていると思います。

仕方ないことなんです。
なぜなら、それは人間の心理だから。

そこをグッと我慢して、バッファー(余裕)を持たせることで臨機応変に対応することができます。

時間がない!スペースがない!お金がない!なんて、とてもストレスを感じますもんね。

あえてバッファーを持たせるのは5S活動でも同じ。

変化の激しい時代と言われていますが、使うモノもどんどん変わっていきます。

ということは、棚をパンパンにして「これで完璧!」となっていても、すぐに手直しが必要になります。

棚に余裕があれば手直しは簡単ですが、パンパンだったら修正したり追加するときにどんなことが起こると考えられますか?


人は棚があったら埋めたくなるもの。
逆に、棚がないからこそ「どうしたものか」と考える。

それでは、また。

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