「21世紀の資本論から見る現代日本の課題」
多くの国民が、富の集中と不平等の拡大に気づいていると思う。それにもかかわらず、なぜそのような状況を変えようとしないのだろうか。この背景には、ピケティの『21世紀の資本』が指摘するように、資本主義社会における「r > g」の構造的な問題が潜んでいるかもしれない。資本収益率が経済成長率を上回る限り、富の再分配はますます難しくなり、格差の拡大が避けられない状況が続く。しかし、多くの人々がこの構造を理解していないか、もしくはその打破が不可能であると感じ、無力感に陥っているのかもしれない。
また、政治による変革への期待は、かつての民主党政権の失敗によって打ち砕かれたと感じる人も多いだろう。しかし、ピケティが示すように、短期間での劇的な変化は難しい。民主党政権がわずか3年ほどで大きな成果を上げられなかったのは、国民も民主党も性急に結果を求めすぎたからではないか。支持率の低下に敏感に反応し、長期的な視点を欠いたために、結果的に政権を明け渡すことになった。一方、現政権は支持率低下をものともせずに政策を推進し、総裁選不出馬により自民党の支持率を回復させた。この状況は、富の集中が政治的にも大きな影響を及ぼし、現政権が資本の利益を守るために動いていることを示している。当時の民主党政権にも、ピケティが指摘するような長期的視点と粘り強さが必要だったのではないかと考える。