《現代詩》無敵の女
生きる希望を失った
あたしの心に覆い被さる
重くて暗い闇の帳
子どもの頃のあたしが叫ぶ
生まれ育ったアパートの庭に
紫の雑草の花が咲いていた
摘んでいると老婆の管理人に
「このいたずらもの!」と怒鳴られた
怖くてたまらなかったのに
花を摘むのを止められなかった
幼稚園のプールで溺れた
しばらくだれも気づかなかった
気づいた先生が
「なんで溺れるの?」と不思議がった
あんなに浅いプールなのに、と
小学校を卒業した後
数名で母校に顔を出しに行った
貧しい身なりの女だった同級生に
人違いされて
一度も担任になったことがない先生に
「会いたかったよ」と抱きしめられ
近くにいたクラスメイトたちは
一斉に気まずい顔をした
中学に入り教室の喧騒の中
友達がいないから一人俯瞰でその様子を眺めていた
ある男子生徒に
「君、暗いね」と呟かれ
より一層暗い性格になった
思い出すのもつらいほど
嫌な記憶ばかりなのに
あの頃の子どもだったあたしは
間違いなく「無敵の女」
人に嫌われてもいい
人に気づかれなくてもいい
人に間違われてもいい
人が寄りつかなくてもいい
あたしはあたしの
道をいくんだ
じゃますんな、あほ。
それでも生きて
生きまくる。
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