今、ラノベ界隈で話題の作品とコミックを考える。後編
木曜はラノベ愛語り。今回は前回の続きで、最近(令和6年9月頃)、ラノベ界隈で話題となっている『ツンリゼ』の原作とコミカライズの比較を行います。
ただ、この先は少しネタバレがあります。ネタバレは一切読みたくない…と言う方は、この先を絶対に読まないでください。
※念のための空白
さて、両者を比較した私の印象は、「物語の展開に極端な乖離はないが、気になる部分が何点かあった」です。そして、その私が気になった部分は、原作とコミカライズで、キャラクターの設定に微妙な違いが発生していた事です。
最も気になったのが、悪役令嬢リーゼロッテから熱烈に愛されている、婚約者のジーク王子です。作中、リーゼロッテの家に遊びに行く場面があるのですが、原作のジークは「何が何でもリーゼロッテに会いたい!」と言う強い意志で、日程を調整して訪問します。それがコミカライズでは、「リーゼロッテの家に行きたいなぁ」とは思っていますが、全く行動に移そうとしません。親友が説得して、やっと動き出します。
これ、私的には相当な違和感がありました。この後、リーゼロッテが危機に陥った時、彼女を救うのはジークの強い愛です。原作だと、それがスムーズに伝わってくるのですが、コミカライズの展開だと「…あれっ?」って感じになってしまいます。
それ程ではありませんが、ヒロインであるフィーネの母親の設定にも、気になる部分がありました。ジークがリーゼロッテの家を訪問している時、勘違いしたフィーネの母親がフィーネを助けるために家へ乱入してくる…と言う基本線は同じですが、細部が違っているのです。
原作ではリーゼロッテの妹たちが止めようとして、乱闘(?)しながらやって
くるのですが、コミカライズでは遙かに凄いレベルで大暴れします。家の周りの城壁を破壊し、リーゼロッテの家臣を魔法で眠らせながらの突撃です。しかも、その魔法は禁呪である闇魔法なのです。しかも、しかも、その闇魔法は使用者を蝕む…な~んて設定までされています。う~ん、そこまで設定を盛る必要があるのでしょうか。何だか、母一人で子育てしてきた苦労を強調するためだけの設定の様な…。
『ツンリゼ』は1巻分の原作が4巻分になっているので、相当に内容を膨らませる必要があるのだと思います。おそらく、私が気になるキャラクターの設定の違いも、その辺りが大きな理由ではないかと考えられます。
コミカライズで内容を膨らませている点では、名作『悪役令嬢の中の人』も同じです。こちらも1冊分の原作で、既に4冊発行されており、おそらく今後も2~3冊は発行されそうな勢いです。当然、非常に大きく膨らませなくてはなりません。
しかし、こちらのコミカライズでは、気になる部分はほとんどありません。これは、元々キャラクターの設定などが少ないか、全くないので、コミカライズで膨らまされていても気にならないからだと思います。
そう考えると、ある程度キャラクターの設定を行っていた『ツンリゼ』は、コミカライズで話を膨らませるには不利…と言っても良いかもしれません。
以上、『ツンリゼ』の前作とコミカライズの乖離について比較検討してきました…が、私的には両方とも面白く読んでいます。コミカライズで気になる点はありますが、読み進められない程ではありません。
それだけに、コミカライズの打ち切り&原作の休載は残念でなりません。
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