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ランダム単語ストーリー クリームソーダ×外来種

 お冷のグラスからコロンと氷が転がる音がする。

 「やっぱり続かないものはダメなんだって気付いたのよ。手を色々変えてみたんだけどね、結局は原点を見つめ直す事が大事だったのよ。」

 また、話が変わった。唐突によく話題を変えてくる。この女は。

 久しぶりに会って他愛のない話をしていたと思えば、すぐこれだ。高校の頃からこの癖はずっと変わっていない。彼女自身は自然と会話に導入しているつもりなのだろう。


 当時のクラスメイトの大半は、彼女を【訳のわからない女】として認識し、煙たがっていた。その結果、まともに話を聞くのは私だけになってしまった。相槌を打つだけで暇つぶしになる彼女の話は雑に流す事ができて丁度良いだけだったから。

 卒業から7年、変わっていない。やはり人間というのは根底の人格を形成し直すことも、また別の人格に据え置く事もできないのだろう。


 話はつづく。

 「健康を目指す事が、ダイエットに繋がるんだよ。」

 「うん。」(どうでもいい。)

 「色々試したんだけどさ、カロリー制限とか、糖質ゼロ生活ぅだとか。」

 「うん。」(くだらない。)

 「なにをやっても続かなかったんだよぉ。」

 「そうなんだ。」(だから何?)

 「だからねぇ、私、・・・」

 興味が無い。その後の会話では、私はひたすら「うん。」しか言ってないことと、帰ってからの晩御飯、やるべき家事、帰る前に買うアルコールの事ばかり考えていた、ということまでが記憶にある。

 ただでさえ存在しない興味がどんどん消えていく。目の前の意識が遠のくと共に、音が過ぎ去って行く。それでも彼女は音を出し続ける。その音は突如として高いトーンになり、意識を目の前に戻す。



 「でさぁ!?結局ね、日本人だったら和食食べればいーじゃーんって思ってね。和食中心の生活にしたら、身体も調子いいし、体重もすんごく落ちたんだぁ!」

 「へぇ…。」(やば、聞いてなかった。まぁいいか。)

 そう言って目の前にいる彼女は、袖を捲り腕を露わにする。肌は死人のように褪せた肌色、血管が浮き出て、骨の凸部がよくわかる。


 そういえばこの女は高校時代、ふくよかな体型をしていた。今は似ても似つかない程の真逆を行く小枝と言うに相応しい身体つきだ。言動と行動が合致しない彼女は先ほどのダイエット方法も組み合わせていたのだろう。『ダメだ』って自分から言ったのに。

 捲った右腕でグラスに入ったメロンソーダをストローで啜る。少し飲んで浮かぶバニラアイスを細いスプーンですくい、ついばむように食べる。

 先程までダイエットだのなんだの失敗しただの、和食が一番良いと言っていたこの雌は、糖が多量に含有された俗物を食している。

 いや、元の体型をかんがえれば、目の前のクリームソーダだけでなく、多くのジャンクフードという外来種に毒されていたはずだ。

 全く、この女といい、人間というのはつくづく根底が変わらない生き物だ。


 まぁ、この場は奢ってもらって、帰ってから酒を片手にくだらないトーク番組でも見ようか。


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