鈴木信雄ほか「新版 経済思想史 社会認識の諸類型」よりマルクスに関する読書案内

 「新版 経済思想史 社会認識の諸類型」という本に石塚良次氏によるマルクスについての読書案内が載っていた。少し長いが紹介しておこう。

 マルクスの著書は『マルクス・エンゲルス全集』で読むことができるし、主要な著作は『マルクス・コレクション』(筑摩書房)におさめられている。読みやすい本とはいえないが、『資本論』に直接取り組むのがマルクスの理論を理解するためには近道かもしれない。さらに、初期の代表作として、「疎外された労働」の章を含む『経済学・哲学草稿』(城塚登/田中吉六訳、岩波文庫、一九六四年)、彼(等)の資本主義認識が端的に示されている『共産党宣言』(大内兵衛/向坂逸郎訳、岩波文庫、一九六二年)。 伝記的著作としてはマクレランの『マルクス伝』(杉原四郎他訳、ミネルヴァ書房、一九七六年)がよくまとまっている。廣松渉・井上五郎の『マルクスの思想圏』(朝日出版、一九八〇年)は思想史研究のモデルとして一読に値する本である。また、彼の思想の形成過程を辿ったものとして望月清司他『マルクスー著作と思想10』(有斐閣新書、一九八三年)がよみやすい。 彼の経済理論の解説書としては、大内秀明ほか編『資本論研究入門』(東京大学出版会、一九七六年)、佐藤金三郎ほか編『資本論を学ぶ』(1)〜(5)(有斐閣、一九七七年)。 マルクスの哲学を扱った研究も多い。そのような中で今後も参照されるであろうオリジナリティをもったものとしては廣松渉の『マルクス主義の地平』(講談社学術文庫、一九九一年)であろうか。廣松の編による『資本論をー物象化論を視軸にしてー読む』(岩波書店、一九八六年)も挙げておこう。 経済学説史上においてマルクスを正当に位置づけたような研究書は残念なことに日本では見あたらない。現代の経済理論をも射程に入れてマルクス理論の意義を顕揚する研究がない。そのなかでは、スミス研究者、内田義彦の『資本論の世界』(岩波新書、一九六六年)が熟読に値する。大川正彦『マルクスーいま、コミュニズムを生きるとは?』(NHK出版、二〇〇四年)は新しい時代のマルクス像を描き出している。巻末の参考文献も役に立つだろう。手軽に読めるものとして、的場昭弘の『マルクスだったらこう考える』(光文社新書、二〇〇四年)。

P124-125石塚良次「Ⅰ-8カール・マルクス」