伊藤誠編「経済学史」より石塚良次「第10章 新リカード学派」
伊藤誠編「経済学史」(1996年、有斐閣)に石塚良次氏による「第10章 新リカード学派」という文章がある。新リカード学派のピエロ・スラッファについて書かれている。特に重点が置かれている「標準商品」について引用しておこう。
複数の商品のある特定の比率での組合わせからからなる合成商品を考え,その合成商品を尺度としたのである。この合成商品ースラッファはそれを標準商品とよんだーは,投入の側も産出の側もその標準商品と同じ構成比をもつような,したがって,その標準商品の倍数で表せるような商品の組合わせなのである。
言葉で説明してもわかりにくい。詳細は同書に数値例を示した説明があるので、そちらをご確認いただきたい。末尾に練習問題があるので考えてみたい。
1)スラッファは,自分の理論のなかでは「需要」,「供給」,「生産要素」といった新古典派経済学で使われる用語を用いていない。彼自身はその理由を明確に説明してはいないが,推測しなさい。
ヒント:スラッファの再生産モデルでは,需要や供給や生産要素が何に相当するのか,を考えてみなさい。
(解答案)
スラッファの再生産モデルでは、需要や供給、生産要素が「生産方法や生産技術、他商品の供給」に相当し、古典派経済学の価値理論再構築を試みたため。
2)スラッファの標準商品,標準体系とマルクスの価値から生産価格への転形の問題との理論的関連について説明しなさい。
ヒント:標準体系では総価値と総価格,総剰余価値と総利潤との関係はどうなるか。
(解答案)
スラッファの標準体系では標準商品による定量化で「総価値=総価格」「総剰余価値=総利潤」となるよう設計されているため、それらが不一致であったマルクスの転形問題を解消したが、一方で標準価値説によって労働価値説を否定している。