毎週ショートショートnote 『モンブラン失言』
「ケーキは何が好きだっけ?」って聞かれたから「モンブランかな」って返した。そんな何気ない彼女との会話。
僕の誕生日に彼女が用意してくれたケーキは見事に直径15センチの大きなモンブランで、その頂上には30歳を表すぶっとい蝋燭が3本立てられていた。
繊細で美しいモンブランの糸一本一本が、乱暴に刺された蝋燭でめくれあがった様子を見ながら、僕は思わず彼女の無神経さにため息を付いていた。
そんなこと、と言われるかも知れないが、振り返ると彼女のそういうところがずっとひっかかっていた。
だから蝋燭の火を消したあとで「別れよう」と言った。
突然予想もしない言葉に混乱し取り乱す彼女を前に、もし「ショートケーキが好きだ」と言っていたら。モンブランなんて言うんじゃなかった。とぼんやり考える。
彼女が去った小さな部屋で、これまで気にしたこともなかった天井の模様を眺めながら、モンブランの糸みたいだ、と脇腹に刺さったケーキナイフすら笑えて涙が出た。
(410字)
今週もたらはかにさんのショートショート企画に参加します。
てか、「モンブラン失言」って難しすぎるって。
ちょっといつもと違うテイストに仕上げてみました。楽しんでもらえたら嬉しいです😆
ちなみに私も無類のモンブラン好きです。
でもモンブラン高いから大体はシュークリームで我慢します。
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