夏だと思ってたら秋に肩をポンポン叩かれて驚いたって話
秋はいつも突然だ。
毎日家族が寝てから洗濯物を干すのが私の仕事だ。
昨晩もベランダに出ると、急に空気がひんやりしていて驚いた。
その前日まではあんなに夜も暑かったのに。
そして頭に浮かんだのは、このnoteでも度々登場する元カノだった。
あれは彼女と付き合って初めての秋だった。
その日も鴨川沿いに2人で腰を下ろしていた。
「わたしな、秋が好きやねん」
「ん?なんでなん?」
「急にひんやりして人肌恋しくなるやろ?そしたらこうしてぬくもりを感じられるやん?」
そう言って彼女は二の腕をぴったりとくっつけてきた。
確かにあったかい。
心地よいあたたかさを感じながら、『人肌恋しい』という言葉を生まれて初めて実感した。
これは、このあたたかさを知っている人だけが感じる感情なのだと分かった。
おかげで私も一つ大人になった。次から秋が来ると、堂々と『人肌恋しい』と思えるのだろう。
教えてくれてありがとうーーー。
そんなことを思いながら、体が冷えるまで2人で他愛もない話を楽しんだ。
『人肌恋しい』
そのワードに引きずられてまさに芋づる式のように元カノとの思い出がフラッシュバックする。
2人でよく行った定食屋さん。
地下にあって、観光客もめったに来ない穴場のお店。
店主のおばさんが優しくてご飯も家庭の味で美味しかった。秋はそこのサツマイモのタルトが絶品だった。
何かお揃いが欲しいねって話になって、コムサイズムで色違いのトレーナーを買った。
向こうは黒。自分はピンクに近い紫。
普通逆じゃない?って笑い合った。
それから少しして姉が体調を崩して入院した。
最初は心配したが、数日安静にすれば回復するとのこと。
両親が病院に付き添って実家に家族がいなくなった隙に、私は初めて彼女を家に呼んだ。
もちろん姉が入院した、なんて伝えたら来てくれなくなるかもしれない。そう思って入院のことは伝えなかった。
家族が留守の間に遊びに行くのは気が引ける、と言いながらも彼女は買ったばかりのトレーナーを着て来てくれた。
そこで2人でホワイトシチューを食べた。
私はドキドキしてシチューを味わうどころではなかった。
このドキドキは、これから起こりうる展開を想像してドキドキしているのか、姉の入院中に彼女を家に呼んだことに対する罪悪感からドキドキしているのか自分でも分からなかった。
シチューを食べた後、2人で私の部屋に行って昔のアルバムなどを見せながら会話を楽しんだ。
しばらくして、やっぱりいい雰囲気になって、2人は初めて体を重ねた。
元カノはどこまで計算して実家に来てくれたのだろうか?
この歳になって当時の青くさい思い出を次から次に引っ張り出して感傷に浸るのも悪くないと思う。
青春を感じる秋の曲でも聴きながら、もう少しだけ感傷に浸ろうと思う。
エルレ久しぶりに聴いたら良過ぎてビビる。
これをエモいというのですか?
#なんのはなしです歌
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