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スポーツ・運動ができる子が持っている「感覚」とその伸ばし方とは?

感覚が働かなければ、いくら言っても体を動かせない

「もっと足を高く上げて」など言葉で動作を指摘したり、上手な人が行っている動作を見て真似ること、または自分の動きを鏡やビデオで見ることなどから、どこをどう直していくのかを頭で理解しても、いざそれをやろうとしても、体をうまく動かすことができないのはなぜなのか?

ポイントとなるのは「感覚」そして「バランス」です。

まず、バランス能力は日常生活でもとても重要な身体能力の一つです。
人間のあらゆる動作を可能にし、効率よい動きを実現するには適切なバランスが必須となります。何らかの原因でバランス能力が低下してしまうと、姿勢を保てず体勢が崩れてしまいパフォーマンスが低下し、さらには、あらゆるケガのリスクが高くなります。

このバランス能力の大きな役割として左右対称性の調整があります。左右の手足が同程度の筋力を保ち、前後の筋力や動きを調整するのもバランス能力です。

バランスを司る神経系「固有受容性感覚」

固有受容性感覚とは、感覚統合の発達において重要な機能となり、目を閉じていても自分の手や足がどこにあるのか、どのような動きをしているのかを正確に認知する力です。

例えば、車の運転をするときに道路に目を向けながら、足元を見なくてもアクセルとブレーキに足を入れ替える動きがスムーズにできるのは固有受容性感覚の働きによるものです。この働きをより高度に使い分けるのが、あらゆるスポーツに必要であり、これらの働きは神経系によるものであり、子どもの頃からの運動体験による適切な刺激により磨くことができます。

目で見なくても自分の手や足を思い通りの場所で自由自在に動かすことができる能力は、高いレベルのアスリートほど繰り返し取り組んでいる「基礎練習」と言われるものです。例えば、正しい投げ方の習得や、バットやラケットの操作、正確なパスやシュートなど、あらゆるスポーツの基礎となる力です。

であるからこそ、一流アスリートほど、日々、この能力を伸ばすための神経筋制御トレーニングを取り入れているのです。

加えて、腰の痛み、膝の痛み、足首の捻挫など、ケガを何度も繰り返してしまう原因の多くはバランス能力、固有受容性感覚の欠如が関係しています。

神経筋制御トレーニングとは何か?

例えば、野球選手の場合、肩にあるローテータ・カフ筋群を健全な状態に保つことがパフォーマンスとケガ予防に重要です。このローテータ・カフ筋群は腕を上げたり、前後へ回したりするときに働く他に、肩関節がしっかりと固定され安定する役割を担っています。

そこで効果を発揮するのがリズミックスタビライゼーションです。これは肩関節の神経系を活性することで無意識的な関節安定性を高め、投げの動きを効率的にするトレーニングです。

脳と身体をつなぐ神経筋制御トレーニング

神経筋制御トレーニングは、一般的な筋力トレーニングとは異なり、目的は感覚運動と関節安定の向上です。したがってトレーニングで求めるのも動作の質とあらゆる角度へ自在に動く関節可動性です。パフォーマンス、バイオメカニクス、筋肉の活性など、健全な状態で高いレベルの動きを実現するために必要な能力となります。

例えば、肩を痛めた選手などの場合、痛めたことで固有受容性感覚の能力が低下し筋肉の発火が遅くなってしまうことが考えられます。本来、投げる動作には、腕を動かすだけではなく、関節を安定させる筋活動が不可欠ですが、筋肉が働き出すタイミングと強度調整が適切に行われないと関節が安定して強い力で正しいフォームによる動作を行えません。結果、良い球を投げることができず、再び肩が痛くなってしまいます。

野球の投球や打撃をはじめとする多くのスポーツ動作のように複雑な運動を高いパフォーマンスで行う際には、単に力が強いという筋力以上に、感覚運動と神経系制御が重要な能力だと言えるのです。

そして、これらの「脳力」は、こどもの頃にこそ、もっとも重要なベースを育むことができるのです。

姿勢や骨格の歪みを改善するにも神経系の活性が重要

感覚運動機能は中枢神経系による情報処理により随意運動の指令がなされる際に、まず姿勢制御システムを働かせます。このため、例えば腰痛などで体幹に痛みやケガを発症すると、この姿勢制御がうまく機能しないため骨格が歪んでしまう傾向がみられます。

肩が前に出てしまい猫背姿勢になったり、骨盤が前傾してしまったり、左右の肩の高さがずれてしまうなど、骨格の歪みが現れると、さらに大きなケガのリスクが高まり、パフォーマンス低下に繋がってしまいます。

神経系の働きを邪魔する因子として、痛み、腫れ、炎症、関節が緩い、感覚が鈍るなどがあげられます。さらに、左右どちらかの神経系の働きが悪くなると反対側の働きまでも悪くなってしまうとされます。

例えば、右足首を捻挫してしまい痛みや腫れにより神経系の働きが低下すると、左足首の神経系の働きも衰えてしまうということになります。これは、ケガによる運動制限などが影響すると考えられますが、ケガから復帰する際などには、ケガをした側だけではなく、両側の神経筋トレーニングを実施し、全身のバランスを調整し能力を高めることが求められます。

神経筋制御トレーニングの基礎

感覚運動コントロールの向上には、各部位により閉鎖運動連鎖(CKC)と解放運動連鎖(OKC)によるトレーニングが行われますが、スポーツにみられる多くの複雑な運動における感覚神経、関節安定の向上には、閉鎖運動連鎖トレーニングにより、筋力、協調性、バランス、そして固有受容性感覚の向上が求められます。

当然ながら、一つのメニューをやれば全ての能力が鍛えられるということはなく、神経筋制御トレーニングにおいても、関節安定の神経・筋力強化、バランスの強化といった具合に、個人の特性や状態、目的に応じてトレーニングを実施する必要があります。

また、どのような状況でも関節を安定させるために、静止時、動作時などあらゆるパターンで姿勢を正しく保ちながら自由自在に手足を動かせる能力の習熟トレーニングを意識することも重要です。

つづく。。。


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