【技術士二次試験】 キーワード:科学技術
背景
・現在、日本では、少子高齢化、労働人口の減少。
・厚生労働省の統計によれば、「労働力人口」は、2000年の約6,800万人をピークに、2030年には約6,200万人へと減少する見込。
・外国人労働者の受け入れと合わせて、労働生産性の向上が必要。
・新興国の目覚ましい技術発展、世界的な競争が激化している。科学技術イノベーション。技術者確保。
科学技術向上のための課題
・優秀な人材の発掘、確保、育成:
科学技術を持続的に発展させていくには、技術者や研究者の確保が重要である。しかし、少子高齢化の進行により、労働人口の減少、熟練技術者や研究者の退職が進んでいる。また、世界的な科学技術の競争は激化しおり、人材の海外流出も起こっている。人材の減少が起きている中で、より優秀な人材の発掘、確保、育成が課題である。
・新領域への挑戦推進:
持続可能な社会の創造のためには、AIやIOT、ICT、再生医療などの新領域での科学技術イノベーションが必要である。しかし、日本においては、研究時間の減少や若手研究者の参入不足、資金不足などにより、思うように新領域への参画が進んでいない。人材や研究時間、資金が不足する中で、新領域への挑戦を推進していくことが課題である。
・研究費の獲得:
日本における研究費は、近年一定水準を保っている。しかし、世界に目を向けると年々増加しており、世界的な科学技術の競争が激化している。日本においては、労働人口の減少による技術者の減少、税収の縮小が問題となってきている。限られた財政の中で、世界と競争していくための研究費を獲得していくことが課題となっている。
理科離れ
・知識レベルは高水準。興味が薄く、学年が上がるにつれて低下傾向。大人の科学技術への興味も薄い。
・授業時間の減少。自然体験や実験を減らし、知識偏重の授業となっている。1960年代と比較した場合、6割程度。
・SSHの推進。効率的な理数教育の研究。産学官連携イベント。干潟フェスタ。地質の日。
博士後期課程進学者の減少
・経済的負担、卒業後のポスト、就職先(任期付ポストが多く安定感に欠ける)
・奨学金の拡充。産学官民の連携により、雇用の流動化を図る。クロスアポイントメント制度。
科学技術論文の減少
・新たな研究領域への挑戦不足。研究時間の減少。研究開発費の停滞。多国間の共同研究の不足。
・民間との共同研究。オープンイノベー ションによる「組織」対「組織」の大型の共同研究。武田薬品×京都大学(CiRA京都大学iPS細胞研究所、武田薬品が10年で200億円を拠出、それぞれ50名従事)
・SSHの推進。優秀な人材の早期発見と人材交流。優秀な外国人留学生の誘致と海外とのコネクション強化。
外国人留学生
・語学習得。異文化。金銭的問題。魅力ある大学(論文の質低下により、イメージの低下)
・英語による授業。日本の文化に触れることに留意。秋季入学。高校生留学。
技術継承(ナレッジマネジメント)
・ストック型社会への転換により、現場が減少。地質現象は複雑で、数値化しにくい。企業の資金的体力低下。即戦力の採用増加。
・現場条件を詳細にし、ビックデータ分析、AI利用。知識のデータベース化。
・SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の推進と産学連携
SSHとは、文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度である。将来の国際的な科学技術人材を育成することを目指している。大学や研究機関、民間企業との連携方策や先進的な理数教育の在り方についても研究している。平成30年度では204校の指定校がある。SSH事業で得られた知見をもとにした教材や授業の改良。ICTやIOTを利用した一括授業や実習により広く普及する。新学習要領では、「理数探究基礎」「理数探究」が新設されることとなっている。また、民間企業や研究機関、地方自治体による出資・協賛が必要。将来有望な研究者や技術者の発掘の場とする。
また、各種機関が連携することにより、人材交流の活発化を図ることができ、新たな研究セクションの創出や相互連携、国際協力、若手研究者のポスト創出等が可能と評価する。
・産学連携した科学技術イベントの実施
学校で不足している実験や現地実習、実際に科学技術の最先端の現場で働いている人間との触れ合いを通して、理科への興味を引き出すことが可能と判断する。また、質問コーナーでは、自然災害に関しても質問を受け付けることで、防災・減災に対する知識の提供も図っている。イベントを充実することで、身近に科学技術を感じることができ、理科離れの減少、さらには将来の研究者・技術者の育成にも寄与することが可能と評価する。
・選択と集中を適用した新領域研究の推進
社会的な課題解決のために、AIやIOT、ICTなどの分野での研究促進が進んでいる。しかし、GAFAを代表としたIT企業の研究開発が進み、日本での研究は若干遅れているといえる。今後も、この分野での人材獲得競争は激しくなることが予想さる。また、留学生の希望先もこの分野が伸びているアメリカや中国、インドへの希望が増えることが想定される。これは、情報分野の研究を選択・集中したことにより発展したと考えられる。日本が得意とする再生医療分野では、武田薬品×京都大学(CiRA京都大学iPS細胞研究所、武田薬品が10年で200億円を拠出、それぞれ50名従事)民間研究は、早い成果が求められる。選択と集中をすることで、研究の裾野が狭くなる弊害もある。特に若手研究者への資金配分が低下する可能性が高いため、科研費による若手研究者の重点支援などで対応する必要がある。
・海外への人材流出抑制と技術者確保
若手研究者のポスト減少、資金低下を背景として海外への人材流出が問題となっている。今後も進展するAIなどの情報分野の流出は激しくなることが予想される。そのため、日本におけるポスト創出や優秀な研究者を呼び込む必要がある。中国では「千人計画」と呼ばれる高度人材を招へいするプログラムがある。高待遇で社会保障などの支援も手厚い。中国の研究費の増加や論文数の増加はこれを背景としている。ただし、技術情報の流出・盗用などの危険性もあるため留意する必要がある。