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楽天の三木谷社長はなぜイスを拭いたのか?

いま、楽天が大きな注目を浴びています。
楽天はモバイル事業をスタートして以降、巨額の赤字を重ねてきました。

直近5年間は数千億単位の赤字が続いています。
特に2022年度には約3700億円の赤字を計上しました。

そのためか、経済エコノミストを中心に「楽天経営危機説」がささやかれています。

その波は各ビジネス系メディアにも及びました。
その象徴となるのが、2023年8月18日にNewsPicks行った3時間に及ぶ生放送企画「緊急生配信 どうなる楽天⁉ 徹底分析」です。

堀江さんを中心に各界の著名人が集まって、楽天について議論を重ねる企画です。一部は堀江さんのチャンネルでも公開されていて、再生数は80万回以上にのぼります。

そして現在、楽天はXで急激に影響力を増しています。
皆さんもご存じの田草川さんです。

2024年の2月末、Xに彗星の如く現れた田草川さんは、
わずか4ヶ月ちょっとでフォロワー2万人を達成しました。

そして9月1日にはフォロワー3万人を達成。
アカウント開設から約6か月です。

まさに偉業と言えるスピードだと思います。

また6月19日には、三木谷さんがイスを拭く動画を投稿。

このツイートはビジネス界隈を超えてバズり、現時点でコメントが1,210件、RTが2,6件、いいねが8,604件集まっています。

そして同時に、楽天を取り巻く世論も2024年を境に
「楽天経営危機説」から変わりつつあります。

楽天モバイルの黒字化が視野に入り始めたのです。

楽天モバイルは、2024年6月に契約者数700万人を突破しました。
黒字化の基準は、契約者800万人から1000万人と言われています。
なので残りは100万人です。

さらに楽天モバイルの公式発表によると
2024年3月~5月の3か月間にかけて、
楽天モバイル契約者の純増数は過去最大だったようです。

楽天モバイルの歩み

ここで楽天モバイルの歩みを時系列でまとめてみました。

楽天モバイルの歴史

時系列で並べてみると2024年に入ってからの躍進がよく分かると思います。

重要なのは、その主戦場の一つがXであることです。
しかもタイミングがすごい。

2022年や2023年にXをスタートしていたら、
ここまで注目を集めることは無かったと思います。

その意味で、楽天がXをスタートさせたタイミングはベストに近い。
三木谷さんの経営手腕は素晴らしいですね。

ですが改めて謎が残るのも確かだと思います。

なぜ、楽天は今になってXに力を入れ始めたのか?
なぜ、田草川さんのXは異例のスピードで伸びていったのか?
なぜ、三木谷さんのイスを拭く投稿はバズったのか?

今回のブログではその謎を私の視点から解き明かしていきたいと思います。


なぜ今回のブログを書こうと思ったのか?

ちなみに、私がこのブログを書こうと思ったのは
三木谷さんのことを心から尊敬しているからです。

投資戦略で会社を伸ばすソフトバンク孫さんのスタイルも秀逸ですが、三木谷さんの愚直に自社事業を伸ばしていく姿には、事業家タイプの経営者としての美学さえ感じます。

数年前、三木谷さんにお会いしたときに、聞いた質問があります。

「最近一番嬉しかったことは何ですか?」

三木谷さんの答えは
「新卒から初めての執行役員が生まれた事が本当に嬉しい」というものでした。

外からはドライだと言われることもありますが、人材に熱い一面も持っている。

だからこそ、改めて凄い方だと思いますし、学べることも非常に多いです。

そんな背景があって、このブログを書くことにしました。

話しを戻すと…
楽天躍進の鍵は「ストーリー」にあると思います。

楽天のビジネスモデル

Xでの躍進について見ていく前に、楽天のビジネスモデルを簡単に見ていきたいと思います。
(その方が、なぜモバイル事業だったのか?に納得できると思います)

楽天のビジネスモデルの本質は、「ポイント経済圏」にあります。

楽天が展開している各種サービスを利用することで、ポイントが貯まっていくモデルです。貯まったポイントは楽天市場で利用できるので、ユーザーメリットがとても大きい。

この点において楽天は圧倒的で、競合を寄せ付けない強さを持っています。

実際に楽天は、楽天市場、楽天カード、楽天証券、楽天銀行、楽天ペイ、楽天トラベル…生活する上で欠かせない「インフラ」に近いサービスを複数立ち上げてきました。

やはり、全てのサービスがポイントで繋がっている点が素晴らしいところです。楽天のサービスを使えば使うほどポイントが貯まっていきます。

ユーザーはそのポイントを楽天市場で消費することで、お得に買い物ができる。楽天としても、ユーザーが楽天市場を利用してくれれば、大きな儲けを得ることができる。

参入障壁は高く、収益性も大きい。
とても強固なビジネスモデルだと思います。

また楽天が秀逸なのは、単一のサービスで圧倒的No.1を目指さなかったことです。各サービスをポイントで繋ぐことで、各サービスをNo.1か、それに近いポジションまで成長させました。

実際に楽天のサービスを単体で見ていくと、どの領域にも強力なライバルがいて、単一サービスでNo.1を目指すのは非常に困難なことが分かります。

ECモールにはAmazonがありますし、証券はSBIも強い。

電子決済はpaypayが圧倒的で
銀行やカードもメガバンクの寡占が続いています。

そんな市場で勝ち残るために、楽天は一つのサービス極限まで磨くのではなく、「ポイント経済圏」というもモデルを作り上げたのです。

そして楽天のサービスを単体ではなく「経済圏」として見ていくと
強力なライバルはそう見当たりません。

昨今ではSoftbankを中心にポイント統合の動きが強まっていますが…
「ポイント経済圏」で見ると、楽天が優位に立っていると思います。

そして、ここでポイントとなってくるのが
楽天が選ばれていた理由が、経済合理性であった点です。

ポイント経済圏の機能的価値が、楽天のサービスを使う理由でした。
これが後々の展開に大きな影響を与えたと睨んでいます。

(もちろん、あそこまで圧倒的なビジネスモデルをつくれるのは本当にすごいと思ってます)

なぜモバイル事業だったのか?

「ポイント経済圏」で圧倒的優位を築いた楽天が
次なる挑戦に選んだのは「モバイル事業」でした。

なぜ「モバイル事業」だったのでしょうか?

一言で言えば、ポイント経済圏の競合優位性を維持するためだと思います。

楽天の競合の一つは間違いなく
paypay経済圏を展開しているSoftbankグループです。

なぜSoftbankが強力なライバルなのか?
少し見ていきたいと思います。

Softbankは常に携帯・モバイル領域で勝ってきた企業です。
Yahoo!BBから始まり、ボーダフォンの買収、iPhoneの独占販売権の獲得とモバイル領域で一時代を築いてきました。

そんなSoftbankが近年ソフト領域への進出を強めています。
象徴的なのがpaypayの買収です。

ポイント経済圏の要となる決済機能を抑えることで、経済圏を急速に拡大していきました。

Softbankの傘下には、ECモールであるYahoo!ショッピング・LOHACO(アスクルの個人版)、金融機能を持ったpaypay銀行・paypayカード・paypayなどがあります。

このように見ていくと
楽天の強み・弱みと、Softbankの強み・弱みが対照的だと分かります。

楽天の強みはソフト領域です。
楽天市場、楽天銀行、楽天カード、楽天証券など
ネット系サービスに強みを持っています。

しかしモバイルを始めとするハード領域は弱かった。

一方でSoftbankを見ていくと、ハード領域は業界3位と圧倒的です。
ただ楽天と比較するとソフト領域は弱かった。
Softbankは楽天と勝負できるネット系サービスを持っていませんでした。

そのためSoftbankはソフト領域を強化する方向へ舵を切り
ZOZOTOWN、paypay、Yahoo!を傘下に収めていきました。

そして楽天はハード領域を強化する方向へ進んでいきました。
それが「モバイル事業」への進出です。

こう見ると、楽天がモバイル領域に進出したのは、もはや必然とも言えるかもしれません。

楽天モバイルの歩み(具体版)

前提の話しはここまでにして、ここからは実際に楽天モバイルがどのような歩みをしてきたのか、見ていきたいと思います。

詳細な歴史を追うと大変な量になるので、ポイントだけ抜粋して書いていきます。

事業を開始して以降、
楽天モバイルが重要視してきたのは安さと繋がりやすさです

安くて繋がりやすいキャリアであれば、たしかにユーザーに選ばれるでしょう。

特に楽天は「安さ」に強いこだわりを持っています。
携帯料金の高さに強い課題意識があったのです。

近年になって携帯料金は安くなってきましたが、5年前は非常に高額でした。実際に以下の図を見てみてください。

電気通信サービスに係る内外価格差調査 ー平成29年度調査結果(概要)ーより抜粋

2017年における各国におけるシェア1位企業の携帯料金を比較した資料です。東京(票の一番左)は2GB,5GB,20GB、どのプランでもほぼ一番高い金額です。

楽天モバイルは携帯業界に価格崩壊を起こし
この現状を変えることに大きな社会的意義を見出しました。

だから「安くて繋がりやすい」キャリアを目指していったんです。

ただそれがいばらの道だったのは、衆知の事実だと思います。
全国への基地局設置費用がかさみ
巨額の赤字が数年単位で続いてしまいました。

そこから楽天は、数年間におよび苦難の道を歩みました。
そして2023年6月に「楽天 最強プラン」をリリース。

これは「安くて繋がりやすいキャリア」がひとまず完成した合図でしょう。

「楽天 最強プラン」は2GBまでの利用で980円、20GBまでの利用で1,980円、20GB以上の利用で2,980円という、シンプルで安い料金プランを打ち出してきました。

同時に繋がりやすさを表す指標である「人口カバー率」も
大手3キャリアに並ぶ99.9%を達成。

これで大手3キャリアと比較すると
「品質は同じ、でも安い」という状況が完成しました。

ただ一つ、楽天の誤算があるとすれば、大手3キャリアが想定よりも早期に格安プランをリリースしたことだと思います。

2023年にもなると、大手3キャリアはどこも3,000~4,000円前後のプランを揃えています。もちろん、それでも楽天モバイルの方が安さでは勝っています。

ただ価格差は1,000円程度と、大きな差ではありませんでした。

結果的に、「楽天 最強プラン」をリリース後も
契約者数は楽天の期待するほど伸びていかなかった。

考えてみれば当たり前です。

大手3キャリアと機能的な面で大きな差はなく、
価格も月1,000円程度と、微々たるものです。

ユーザーの視点に立つと、月1,000円節約するよりも
キャリア変更の煩雑な手続きをする方が面倒くさい。

ここでポイントとなるのが、今まで楽天が選ばれてきた理由です。

上述の通り楽天は、「ポイント経済圏」という圧倒的な経済合理性で選ばれてきました。

要は「圧倒的にお得だから」選ばれてきたのです。
ユーザーも楽天に対して
そのようなブランドイメージを持っているのではないでしょうか。

だからモバイル事業も「安くて繋がりやすい」という経済合理性を高めることで、市場のシェアを奪おうとした。

しかし大手3キャリアが格安プランをリリースしたことで
経済合理性では市場のシェアを奪うことができなくなってしまった。

楽天は全く新しい一手を打つ必要に迫られたのです。
そこで楽天が勝機を見出したのが「ストーリー」なのだと思います。

ストーリーとはなにか

「ストーリー」は近年ビジネス界で急速に注目度が高まった言葉です。

様々な定義やニュアンスがあるのですが
私が一番しっくり来た定義を紹介したいと思います。

ストーリーとは重要な目標を達成するために、障害に取り組む登場人物の話である

ジム・シグノレリ(2017)ストーリー・ブランディング

マーケティング分野の思想的リーダー、ジム・シグノレリの言葉です。

そして楽天はまさに
「重要な目標を達成するために、障害に取り組む登場人物」だと言えます。

楽天はモバイル事業を立ち上げ、収益化という目標に挑んでいきました。
世界的に見ても、携帯キャリアは3社寡占になるパターンがほとんどです。

4社目のキャリアが市場である程度の地位を築けた例は
実はインドくらいしかありません。

楽天は世界的に見ても前代未聞のチャレンジをしているのです。

実際に赤字額は年間数千億単位まで膨れ上がり
経済評論家からは「楽天危機説」が囁かれるようになりました。

はてには楽天銀行、楽天証券のIPOも「切り売り」と言われる始末。

こう見ると、楽天は強力な「ストーリー」を
現在進行形で紡いでいる数少ない企業と言えるでしょう。

そして楽天はその「ストーリー」をXで発信することでブランディングを行っている。つまり、「ストーリー・ブランディング」こそが楽天が新たに見出した勝機なのです。

ストーリー・ブランディングとはなにか

楽天のストーリー・ブランディングについて見ていく前に
簡単な概要の解説を挟みたいと思います。

ここでは先ほどのジム・シグノレリ著「ストーリ・ブランディング」を参考にしました。

ストーリー・ブランディングとは
「ストーリーを主軸に情緒的価値をつくるブランディングを行う」戦略的なプロセスです。

ジム・シグノレリ(2017)ストーリー・ブランディング

近年ではどの業界でもコモディティ化が進んでいるため、機能的価値で差別化し、顧客に選ばれるやり方は通用しなくなってきています。

そのためストーリーを語るブランディングを行い、ユーザーと感情的な繋がりをつくることで、顧客に選ばれようとしているのです。

実際に田草川さんのXを見て「応援したい」「頑張って欲しい」と思った方も多いのではないでしょうか。

これこそ、まさに「ユーザーとの感情的な繋がり」です。

しかし一口に「ストーリー・ブランディング」と言っても、
良いブランディングもあれば、悪いブランディングもあります。

なにが良し悪しを決めるのでしょうか?

ポイントは2つです。
1つ目が、どのようにストーリーを語るのか?
2つ目が、何をストーリーとして語るのか?です。

そしてストーリー・ブランディングの鉄則は
・ブランド自ら、ブランドについて語らないこと
・新しいことは教えず、既にユーザーが持っている信念に賛同することです。

順番に見ていきたいと思います。

ブランド自ら、ブランドについて語ってはならない

ストーリー・ブランディングの過程で、ブランドは自らが訴求したい価値観や意味について、直接語ってはいけません。

これは類似するものとして
小説のストーリーを見てみるとよく分かると思います。

小説や物語は「この物語には〜な意味があります」「人生には~が大事なのです」と直接書いて伝えることはありません。

それを読者になんとなく連想させます。

「主人公の生き様を見たけど、やっぱり〇〇は大事にしないとな」とか
「この物語には~な意味があるんじゃないのか?」と考えさせるのが
物語=ストーリーの本質です。

もし仮に、直接的に伝えるようなものがあったとしても
それは論説の類で、ストーリーとは全く別のものです。

実際に「こう考えるべきだ」「人生には〜が重要だ」と
言われるのを好む人はいません。

価値観や信念を説得して押し付けるのと
価値観や信念にそれとなく影響を与えるのは全く別の話なのです。

だからこそ、ブランディングにおいても
ブランドの価値観や信念を直接的に伝えるのはNGです。

Appleを事例に考えていきたいと思います。
Appleは世間からどのようなイメージを持たれているでしょうか?

おそらく「クリエイティブ、先進的、革新的、スタイリッシュ、洗練されている」といったイメージを持たれていると思います。

ですが思い返してみると、Appleが声高に「我々はクリエイティブで革新的なブランドだ」とアピールしたり、語ったりしたことはありません。

なのに私たちは、Appleがクリエイティブで革新的な企業だということを知っています。ブランド自らブランドについて語らず、それを顧客に連想させているのです。

AppleはCMでそれを行いました。

例えば以下の動画を見てみてください。iPhone16のCMです。

最小限に抑えた機能説明、独特で見たことがないカメラワーク、
CMなんて見飽きている我々が、つい見入ってしまうような動画です。

iPhone16がどんなに素晴らしいものかを語るのではなく、「クリエイティビティ・革新性」を直感させることに成功していると思います。

Appleはもう何十年も前から、このようなプロモーションを行っています。

新しいことは教えず、既にユーザーが持っている信念に賛同する

ブランド自ら、ブランドについて語ってはならない。「こう考えるべきだ」「人生には〜が重要だ」と言われるのを好む人はいない。

この鉄則があるからこそ、新しい信念や価値観を教えるのではなく、既にユーザーが持っている信念に賛同する形のブランディングがベストです。

実際にセス・ゴーディンの書籍に参考になる一節がありました。

最良の物語は人々に何も新しいことは教えない。その代わり彼らが持っている信念に賛同し、自分は賢いし安全な場にいると彼らに感じさせ、自分はそもそも正しかったのだということを彼らに思い出させる。

セス・ゴーディン(2006)マーケティングは「嘘」を語れ!ー顧客の真理をつかむストーリーブランディングの極意

この一節にもとづいて考えていくと…

Appleの場合はクリエイティビティや革新性という信念に訴え、
Chanelの場合は気高さやプライドといった信念に訴えていると思います。

どちらも新しい信念ではなく、誰しもが心の奥底で抱いている信念です。

楽天のストーリーブランディング

前置きが長くなりました。ここからは実際に楽天が実施しているストーリー・ブランディングについて見ていきたいと思います。

重ねてになりますが、ストーリー・ブランディングのポイントは2つです。
1つ目が、どのようにストーリーを語るのか?
2つ目が、何をストーリーとして語るのか?

私が思うに、楽天が伝えようとしている信念は「愚直・地道・やり切る」
といった類のものだと思います。

実際に田草川さんのXを見て、楽天に対してそのようなイメージを持った人が多いのではないでしょうか?(私もその一人です)

毎日質の高いツイートを大量に行い
リプライや引用RTなど他の人との関わりも大事にしています。

Xをやっている人であれば、それがどれほど大変なことか知っているはず。

他のXユーザーよりも、高い水準でそれを実行する田草川さんには
多くの人が「愚直・地道・やり切る」というイメージを持ったはずです。

加えて数か月前のNews Picksによる三木谷さんの独占インタビューも話題になりました。最後の海賊の逆襲 | 三木谷浩史が語る「楽天危機説」の真相

この動画で三木谷さんは年間1,000件の法人営業を行っていると発言しました。タクシーに乗った際には運転手の方にも営業をかけているそう。

実際にXではこの記事を引用して
「あの三木谷さんが年間1,000件もやってる。自分ももっとやらないと」

意気込んでいる人が数多く現れました。

そして冒頭のイスを拭く動画。
楽天を経営している大社長が、イスを拭いているんです。

これらは全て、私たち、特にXをやっているビジネスパーソンが皆持っている、「愚直・地道・やり切る」という信念を彷彿とさせるメッセージです。

しかも、楽天はこれらについて直接言及することはほとんどありません。

実際に田草川さんのツイートを検索してみたのですが、「愚直」「地道」「やり切る」といった言葉は、それぞれ1回くらいしか使っていません。

その1回も偶然のようなもので
直接信念の重要性に言及するものではありませんでした。

また最近では、有名人の動画を引用する投稿が増えています。
例えば明石家さんまさんのこの動画。

「努力を努力として行ってはいけない。努力はその過程にこそ価値がある」という主旨のものです。

これも、田草川さんが自ら「愚直・地道・やり切る」という信念について語るのではなく、別の人に語らせることが狙いの一つなのだと思います。

こういったストーリー・ブランディングを通して、楽天は「楽天=愚直・地道・やり切る」という信念を連想させることに成功しています。

その証拠として楽天の「愚直・地道・やり切る」という信念を支持する人たちが、誰に頼まれるわけでもなく、X上でプロモーションをしてくれています。

調べてみたところ「楽天モバイルを契約した」とXで投稿しているビジネス系のアカウントや、楽天モバイルのUGCを数多く見つけることができました。

このような宣言をX上で行うユーザーが増えていることは
楽天がストーリー・ブランディングに成功している一つの証拠でしょう。

なぜなら、彼らにとって「楽天モバイルと契約した」と発信することは
「楽天のストーリーを支持する者」として、立場を明らかにすることと同義だからです。

要は「楽天モバイルに契約した」と発信することは「私は”愚直・地道・やり切る”という信念を支持する」という宣言なのです。

そしてその影響力は日に日に増していっています。
今後もXを通したストーリー・ブランディングを楽しみに見ていきたいと思います。


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