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【たわぶれに】 物語としての砕片:3

わたしの中に、このひとと同じ光がある?
「それは、どういう意味ですか」
脳裏によぎった思考を打ち消したくて、確認のために尋ねた。
わたしはそんなたいそうな人間ではない。胸の内の傲りを、どうか粉々にしてほしかった。
薄い唇の右端が上がる。めったに笑わないひとだと聞いていた。少なくとも、世間はそのように認識している。こそばゆいのを我慢しているような表情。眉間に刻まれた深いしわは、照れくささをかくまうようにさえ、見える。

「そのままですよ。人間は、未知のものを愛したり、尊いとは思ったりはしません。むしろ恐ろしく、忌避すべきものと捉えます。
あなたがもし、私の光というものを尊崇する気持ちであれば、それはあなたのよく知るあなたの中に、同じものを感じ、馴染みぶかい身体感覚として知っていたからです」
おなじもの。おなじ光。
甘露がにじむ果実を味わうように、ひたすらその言葉を噛みしめた。その甘さと救いの麗しい香に、嗚咽をこらえた。

「たしかに私は、人にはできないようなことをしてきたと思います。でも、おなじことではないにせよ、それと同様の意義のあることが、他の人にできないとは思っていません。
人は、どこからか与えられた値をステータスに振り分けるとき、それにひどくムラがあるのと、バランスがいいのと、二通りあります。
もし言うとすれば、私は目立つところに大きな振り分けをおこなった。その代わり、一般的な人が普通にできることはたぶん、あんまりうまくできないのですよ。
でもそれでいい。私はその道を歩むことを選択したのですから」

ならば、わたしのステータスはどう振り分けられ、そして自分でどう振り分けの選択をしてきたのだろう。思いながら、知っていた。
今こうして向き合っていて、感じる。すがりたいような神々しさと同時に、慕わしいほど同質のものを。
わたしは、このひとと似たたぐいの光を抱えている。それは、認めていいのだろうか。わたしの閾値が、傲慢にぶれていく。

暗くよどんでいく思考を、不意の声が持ち上げた。思わず顔も上がる。細い目の、おだやかな表情が朝日に照らされている。

「ああ、言い忘れていました、ごめんなさい。おはようございます。
そしてあなたもまた、光です」

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