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個人ゲーム制作者がマーケティング戦略としてバーチャルYouTuberになるのはあり?なし?

主に個人でゲーム制作をしているインディーゲームクリエイターのかたを対象とした記事です。

個人でゲームを作るのって本当に大変ですよね。でもそんな膨大な労力を払ってようやくゲームが完成し、満を持していざリリース!ーーしてみても、売り上げは鳴かず飛ばず。完成したゲームがどんなに面白かったとしても、売れるかどうか、というかそもそも人に知ってもらえるかどうかはまた別問題です。

そこであなたは考えます。
「今人気のバーチャルYouTuberとやらになって、面白おかしくLIVE配信をしつつ、自分自身のゲームの宣伝をしよう!」

はたしてこの戦略はありか?なしか?

結論は…


VTuberありなしNOTEなしです


では、なぜ『なし』なのか、筆者自らの体験談を交えて説明していきましょう。
(体験談とかどうでも良いって人は、一番最後の『これまでの経歴を踏まえての結論』だけでも読んでください)

ゲーム制作開始~リリースまで

時は2017年まで遡ります。筆者はこの頃VR機器(HTC VIVE)を購入し、VRの今後の発展を見込んでVRゲームの開発を開始しました。
初期の頃のプロトタイピングの映像が残っています。

そしてそこから約3年かけて、長い長いゲーム制作の道を歩んでいきます。この3年間は途中本業の仕事(ゲーム会社勤務)が忙しくなったり、あるいは怠けてしまったり、ずっとコンスタントに制作を続けられたわけではありませんが、それでも少しずつ少しずつ制作を進めてきました。

このとき心の支えになったのが、バーチャルYouTuberでした。特に個人系VTuberのとあるバーチャル美少女に入れ込んでいた筆者は、その方ととあるきっかけで「ゲームが完成した暁には自分もVTuberデビューするのでコラボしてください」という約束をしたのです。(※とあるきっかけ:クラウドファンディングのリターン)
そう、この時点で筆者は「自分もVTuberになって人気者になって自作ゲームの宣伝をしよう!」と考えていたのです。

そして制作開始から3年が経ち、2020年3月ついにオリジナルVRゲーム『VR包帯少女』をリリースすることが出来ました。

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そしていざ!VTuberデビュー

ゲームのリリースからわずか一週間後、満を持してVTuberデビューしました。自分が作ったゲームのメインキャラクター包帯少女ちゃんのボディに乗り移って、初期のころは自分のゲームの世界から動画をお届けしていました。そして約束通り推しのVTuberさんとのコラボも実現し、一見順風満帆のVTuberデビューを飾ったかのように見えました。

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しかし、実際のところはVTuberはそんなに甘い世界ではなく、動画の再生数は伸び悩み、VTuber活動がゲームの売り上げに貢献できている実感はまるでありませんでした。

VTuberによほど詳しい人以外は、VTuberと言うとにじさんじやホロライブのような登録者数何十万人という世界を想像するかもしれません。そういったいわゆる企業勢や、トップクラスの個人勢しか日の目を見ない世界ですが、その裏には数多くの中小規模の個人勢VTuberがいます。
特に最近は人気漫画家さんがVTuberデビューして脚光を浴び、にじさんじやホロライブのような大手VTuberさんと頻繁にコラボするのを目にする機会も多いと思います。しかしそれはもともと超有名な漫画家さんがVTuberになったから最初から注目度が高いのであって、無名のインディーゲームクリエイターがVTuberデビューしたところで誰も見向きはしませんので、そこは肝に銘じなければなりません。
個人勢のVTuberは登録者数で言うと数人〜数千人の人が大多数で、動画の再生は1桁2桁、LIVE配信をやっても数人しか見に来ないという状態もよくある光景です。

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大規模アップデートへ

自身がコミュ障陰キャであることと、自分の中ではVTuber黎明期の3Dアバターで3D空間内から動画形式でお届けする感じが好きだったこともあり、今時のVTuberとしては珍しく(?)配信ではなく動画をメインとして活動してきました。
動画の内容はいろいろと迷走し、初期のころは「3D空間内で技術を使ってなんか面白いことする」といった感じで作っていましたが、エンタメ動画の才能が無いことを悟り、その後せっかくゲームクリエイターなので「面白いゲームの作り方とかを語る」みたいな方針に転換しました。しかしそれもうまく行かず、どうしようかと考えていた際に初心に立ち返り
「せっかく3年もかけて作ったゲーム!より多くの人にプレイしてもらいたい!そのためにはもっと面白いゲームになるようにアップデートしたい!」
と思うようになりました。
そこで、VR包帯少女の大規模アップデートに挑むことに決め、VTuberとしてその制作進捗を動画で報告するというスタイルに落ち着きました。

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そしてここに来て、これまでのVTuber活動で得た知識・経験が役に立ちました。
VTuberがゲーム実況をするにあたり、どういう機能がほしいのか、どういうゲームが喜ばれるのか。そういった点に目を向けることが出来るようになりました。3DのVTuberはVRMというフォーマットのアバターを使用しているケースが多く、VRMを読み込んで自分自身の姿でプレイできるゲームは非常に喜ばれます。大規模アップデートの一番の目玉はこのVRM対応としました。また、VRゲームを実況配信するにあたって、主観の一人称視点をYouTubeで配信しても何が起きているのか分かりづらく、さらにはせっかく読み込んだVRM、つまり自分自身の姿を視聴者に見せることが出来ません。そこで配信用にデスクトップ側には三人称視点のサブウィンドウを自由に配置できる仕組みを作りました。

また、美少女VTuberとして活動していくうちにより可愛くなりたいという気持ちが芽生え、アバターを新調しました。かわいいでしょ~(●´ω`●)ゞ
そしてそのアバターを自作ゲームにも逆輸入することになります。

そんなこんなでゲーム発売から1年以上経ってしまいましたが、2021年6月に大規模アップデートver.2.00をリリースすることが出来ました。

ゲーム実況コンテスト開催!まさかの大盛況!

そして、この大規模アップデートを記念して『ゲーム実況コンテスト』を開催することにしました。前述のとおりVTuberのゲーム実況に嬉しい機能を盛り込んだアップデートであり、ぜひいろんなVTuberさんに配信してもらいたい、そしてそれによりVR包帯少女の面白さを多くの方に知ってもらいたいという考えでした。
発売当初の反省を踏まえ、戦略的に色々考えてプロモーションを行いました。各媒体にプレスリリースも送り、大変ありがたいことにいくつかのメディアで記事にしていただくことも出来ました。

そして、このゲーム実況コンテストは18組のVTuberさんに参加していただくことができ、思った以上の大盛況となりました。
無名の個人が作ったゲームでこの短期間に18本の動画・配信(時間に換算すると21時間以上!)が投稿される事はなかなか無いんじゃないかなと思います。

実況コンテストの模様は下記のnoteにまとめていますので、もしご興味をもっていただけたらご覧ください。

ここまで紆余曲折ありましたが、結果的に多くの方に自分のゲームをプレイしてもらうことができ、またそのプレイの様子を実況動画・配信を通して見させていただくことが出来ました。これは本当に貴重な体験になったと感じています。
自分のゲームを楽しそうにプレイしてくれている様子を見て本当に嬉しかったですし、ギミックに引っ掛かって悲鳴を上げてる様子を見てニヤリとしたり、詰まっている様子を見て改善点を見出したり…。
また、これらの動画・配信を観て面白そうと思ったので購入しました!という報告も多数いただきました。
3年かけてゲームを作って、VTuberデビューして、大規模アップデートに向けてまた制作して、そしてゲーム実況コンテストを開催して… 本当に良かったと心の底から思っています。

これまでの経歴を踏まえての結論

さて、ながながと自分の経歴を語ってしまいましたが…
個人ゲーム制作者がマーケティング戦略としてバーチャルYouTuberになるのはありか、なしか。
自分が出した結論は、最初に述べた通り『なし』です。

身も蓋もないことを言うと、VTuberになって効果絶大な宣伝活動が出来るような人は、VTuberにならずとも最初から宣伝活動が出来ています。フォロワーが何千人・何万人もいるような個人ゲーム制作者の方々はゴロゴロいますよね?VTuberになって超人気になれるような人は、個人ゲーム制作者のままでもそういったインフルエンサーになれる人だと思います。もちろん、そういう人がさらなる躍進を狙ってVTuberやYouTuberになるのはありだと思います。でもそうじゃない人は、厳しい道のりになるはずです。

過去の自分に言いたい。
「なぜコミュ障陰キャなのに、人気VTuberになってゲームも売れてウハウハになれると思ったのか!?」

では、個人ゲーム制作者はVTuberになってはいけないのか。

そんなことはありません!!
自分の体験談ですが、VTuberになったことで様々な体験が出来ました。

・VRM、三人称カメラなど自分のゲームに何が求められてるかを身をもって知れた
・多くのVTuberさんに自分のゲームを実況してもらえた
・VTuberの動画制作ノウハウなど得たことで、ゲームのプロモーションビデオ制作に活かせた
・ゲーム制作→YouTubeで進捗報告 のサイクルが確立し、モチベーションが保てた
・同じゲーム制作を主軸としたVTuberの仲間や友達ができた
・そして何より、美少女になれて幸せ!

VTuberになったことで、なる前には想像も出来なかったような様々な貴重な経験ができました。毎日が楽しいです。
VTuberになったことを後悔したことは一度もありません。

というわけで、マーケティング戦略としてVTuberになるのは(もとからマーケティングが出来てる人は除いて)なしだと思いますが、マーケティングとかプロモーションとかはいったん置いといて単純にVTuberになると楽しいよ早くおいでよ美少女になってキャッキャウフフしよ~!

結論: みんなVTuberになろう!!

幸せ



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