ポケモンが英語学習に一役買うかもしれない
こんにちは、りりと申します。
みなさんは『ポケットモンスター』シリーズを遊んだことはありますでしょうか。
私は幼少期からポケモンを嗜み、気づけば大学生。ゲームはかなり制限された中で育ってきた私ですが、ポケモンだけは昔からずっと続けているシリーズの1つです。
ポケモンの世界には、ポケモンが繰り出す「わざ」が存在します。もちろん多種多様なわざには名前が付いており、プレイする言語ごとに名前も異なります(10まんボルト→Thunderbolt、のように)。
もちろんこの「わざ」は日本語プレイでは日本語基準なのですが、先述の10まんボルトのように一部のわざは英語を表音したカタカナを使用しています。
私はこれが、自身の英語に対する抵抗感をなくしてくれたと感じています。さらに、小さい頃から耳にしていた単語の意味が分かった時の謎が解けたような感覚は、日常に依る英語への興味を増やしてくれました。
今回はその例を挙げながら、私がどのような点で英語学習と結びつくタイミングを感じたかについて書いていこうと思います。
わざ名
ポケモンが覚えるわざには、攻撃技以外にも自身の能力を上昇させるものや相手の能力を下げたり状態異常にするものなど、数多くの種類が存在します。
ですが小学生までは、ポケモン1匹が覚えられるわざの最大枠数4枠の全てを攻撃技にする、いわゆる「フルアタ型」「小学生型」として運用していた子どもが多いのではないかと思います。相手にダメージが入る方が目に見えて戦ってる感がありますから。
かくいう私も例に漏れず全ての枠を攻撃技にしていました。その中でよく使っていたわざから、いくつかをピックアップしようと思います。
バレットパンチ
『ポケットモンスターX・Y』にて、ストーリーを進めると仲間にすることができるポケモン、ルカリオが覚えるわざとして、馴染みのあるプレイヤーも多くいるであろうわざ「バレットパンチ」。はがねタイプのわざで、威力は低いものの先制して攻撃することができます。
注目すべきはもちろんバレットの部分。英語では“bullet”、つまり弾丸を表します。意味さえわかればそれがはがねタイプの技で、先制することができるという意味も理解できます。
とかく幼少期は濁点が付くものはカッコいいと思っていたもので、バレットパンチもそのひとつでした。当時なぜバレットの意味を調べなかったのかと問われれば、ひとえにバレットが英語であることを知らなかったからです。
ここに1つのポイントがあると思っています。現行の教育課程では、小学校高学年になれば英語を習うようになっています。ただ、未知の言語に対する難解さを考えれば、日本人が英語を苦手とする理由もなんとなく分かってきます。
その点でポケモンは、英単語を「英語」と知らせないままに子どもに刷り込ませる効果があるのではないか、と私は思います。
人間にとって、知らないということは時に劣等感を生じさせます。特に英語という、スタートラインは全員ほぼ同じなのにも関わらず得意不得意で周囲と大きく差が開いてしまう科目に関してはそうだと言えます。それを、先回りして見覚えのある状態にしておく。そうすれば、分からないだらけの海の中に知っている単語を見つけることができる。この安心感は計り知れないものだと思っています。
余談ですが、川原繁人教授(2017)が、ポケモンのネーミングにおいて進化後のポケモンには有声阻害音が多くなるという内容の論文を出されていますので、よろしければご覧ください。
やっぱり濁点って強そうに聞こえるよね。
http://user.keio.ac.jp/~kawahara/pdf/PokemonLSJ2017.pdf
Vジェネレート
『ポケットモンスターブラック・ホワイト』で出会える幻のポケモン、ビクティニだけが覚えることのできるわざである「Vジェネレート」。高威力であるかわりに自身のステータスが下がるというデメリットも併せ持つ、まさに超級の技です。
Vジェネレートにも、“generate”という英単語が含まれています。当時はジェラートなどと言い間違えていた単語ですが、英文などでもよく出てくる単語であったため、すぐに気づくことができました。
generateからgene(遺伝子)、果てはgenome(ゲノム)に通ずると知った時は心が震え上がりました。偶然とはいえ、同じく『ポケモンBW』に登場する、ゲノムと虫をモチーフにした幻のポケモン「ゲノセクト」の存在を思い出したからです。
このように、与えられた情報から散らばっていた点が繋がっていくような感覚を味わうこともできる。これは、予備情報が多くないと不可能な体験なのではないかと思います。
ですが、これは記憶力のいい人に限った話なのではないか?と思われる方もいらっしゃると思います。私は、全くそんなことはないと思っていて。
実はポケモンのわざは、基本的にほぼ全てのものが7音(正確には7モーラ)以内に収まっているという特徴があります。もちろん「オーバードライブ」などの例外もあるのですが、4〜7音で構成されていることがほとんどです。
特に横文字のわざについては7音であることが多いです。これには、日本人は7音に慣れ親しんだ文化圏であることが背景にあります。
古来から日本は、七五調と呼ばれる5音と7音で構成された文芸作品が発達していました。身近なもので言えば俳句や短歌などです。
これに則った音数は日本人にとって耳馴染みがよく、記憶するまではいかなくとも「聞き覚えがある」段階に引き上げることには成功しているものと思われます。この「聞き覚えがある」段階が、英語に触れた際数多くのトリガーとなって立ち現れることは想像に難くありません。
とくせい
ポケモンにはそれぞれ、特徴を反映させた固有スキルである「とくせい」というものを持っています(ピカチュウであれば触れた相手を一定確率でまひ状態にする「せいでんき」など)。
こちらのとくせいにも英語由来のものがあるため、いくつか挙げてみたいと思います。
アナライズ
ポケモンの人気投票で2位を獲得したことでも有名なポケモン、コイルのとくせいでもある「アナライズ」。相手より後に攻撃する時、威力が上がるというものです。
これは英語では“analyze”、「分析する」という意味の動詞です。なるほどこのような性能になるわけですね。
これは小さい頃プレイしていた時に見覚えのあるプレイヤーはそこまで多くないと思います。ただ、名前順に羅列されている攻略本のとくせい一覧のページには最初の方に書いてあるため、読みこんでいる子ほど覚えていそうなとくせいです。
現在ではネットでゲームの攻略を見られるのが当たり前の時代になりましたが、攻略本だからこそ書いてある裏話や細かい設定の説明、先述のデータベース一覧など、目に入る文字は当時の語彙を凌駕したものが多々あります。
興味のあるジャンルがゲームだったとしても、ことばを吸収できるヒントはある。私がそのおかげで“analyze”という単語に既視感を覚えたように、入り口はあればあるほど思いがけない出口に繋がっているのだろうと思っています。
ビビッドボディ
『ポケットモンスターサン・ムーン』にて登場するハギギシリの専用とくせいであるビビッドボディは、相手の先制技(先述のバレットパンチのようなわざ)を受けなくなるというとくせいです。
ビビッドは英語で“vivid”、ハギギシリの見た目どおり、「鮮やかな」という意味を持つ英単語です。見た目の鮮やかさにビビって先制技が仕掛けられなくなるのでしょう。
この頃になると私は中学生になり、初見で意味のわからないワードは自分で調べるようになっていました。ポケモン図鑑を見ていた時に調べた「ビビッド」という単語がまさにハギギシリの見た目と結びついて、映像記憶として単語を覚えることができました。
これはハギギシリの見た目のおかげで“vivid”を覚えられた、という私の一例ですが、他にもゲームという媒体の性質上、映像記憶がしやすいのではないかと思っています。
ポケモンを日本語でプレイするだけでこれだけの発見があるのであれば、英語でプレイすればなおさらでしょう。私は一部ポケモンシリーズを英語で遊んでみたことがありますが、ストーリークリアにはかなりの時間がかかるものの単語力を相当上げることができます。
また、当然ながら技名等も全て英語なので、日本語でプレイする時よりもエフェクト等が映像記憶として残りやすいのがオススメできるポイントです。
あくび→yawn、のようにシンプルなものから、こらえる→endureのように入試必須級の単語、ふいうち→sucker punchのようにスラングまで、幅広く知識をつけることができます。
これはあくまで私がポケモンシリーズを好いていたがゆえの結果なので一概には言えませんが、少なくとも単調な詰め込み学習よりはよっぽど面白いのではないかと思います。
最後に
長々と書いてしまいましたが、要は
「ポケモンのわざ等がステルス的に英語への抵抗感を薄れさせる」
「知らない単語を覚えるトリガーが多い」
「ポケモンは映像記憶と相性がいい」
ということです。これは可能性の段階の話ですし、効果覿面だったのが私だけの場合私が変わった子どもだっただけの話なので、悪しからず。
こういうことを考えずにプレイできるから、子どもの時に触れるポケモンってワクワクして楽しいんだろうな、とつくづく思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんもよいポケモンライフを。