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主食サラダだから。「一口めから最後までおいしい一杯」への追求
※今回は、サラダ弟こと武文謙太の視点です。サラダボウルへのマニアックなこだわりを、書いています。
「日本人のサラダ」の概念を、変えるにはーー?
アメリカ西海岸でサラダの旅をするなかで生まれ、そのあともぼくが考え続けている問いです。
日本の食文化にとってサラダは、メインのつけ合わせであったり、前菜であったり、“副菜”でしかありません。一汁三菜に親しんでいる我々にとって、「サラダをずっと食べるのは飽きるのでは?」「サラダだけでお腹いっぱいになるの? 」。疑問は、出てくるでしょう。
そんな常識を覆し、サラダを“主食”として満足してもらわないといけない。
そもそもサラダって、カットした肉や野菜などの食材を混ぜて、並べて、ドレッシングをかけるだけです。これほどシンプルな料理に、どれだけのこだわりと想いを詰められるか。そのうえでお客さんに、「いままで食べたことがない!」を感じてもらえるか。
WithGreenのサラダボウルを日本中に届けていくためには、突破しなければならない課題でした。
ぼくと兄がこだわったのは、一口めから、食べ終わりまでずっとおいしく、一杯で満たされるサラダボウルでした。メニューの試作や開発のときは必ず一杯を最初から最後まで食べ、判断しています。
食材ごとに形や大きさを変える「WithGreenカット」
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小さく画一に刻まれた具材が入ったサラダを、チョップドサラダと呼びます。叩くように砕いた(チョップド)の意味からきていて、スプーンで食べることも少なくありません。
WithGreenのサラダは違います。カットする形や大きさを、食材ごとに分けています。たとえば、味が強いにんじんは主張を落ちつかせて食感を残す、細切り。キュウリはキュウリそのものが持つフレッシュな水分を最大限に活かすために、1センチ角のダイスカット。淡白ながら歯ごたえのある大根は、いちょう切り。
玉ねぎのように食感をなくしても風味が伝わるものは、あえて薄くスライスにもしています。「食感」とは、目でも味わいます。たとえば、紫キャベツは食べると硬いけれど、鮮やかな色味が視覚でワクワクして、目でおいしい。だから、少し大きめのみじん切り程度のサイズにし、サラダの中にいっぱい存在が見えるようにしています。
これは、食材本来の味と食材の持つ特性をしっかりと味わってもらいたいからです。一つひとつしっかり大きさがあるので、咀嚼する回数も多くなり満腹感にもつながります。
かといって大きすぎると、単体の野菜しか口に入らない。そうなるとサラダではなくなってしまいます。フォークを1回刺すごとに3種類の具材に当たり、「一口でもサラダ」になるよう設計もしています。
6種類〜7種類入った具材どうしの組み合わせが何十パターンもできることで、一口一口が変化します。これが、一皿を食べ続けても飽きないおいしさにつながっています。
切り方のこだわりは、野菜以外の食材もです。自家製のハーブチキンは、満足感が増すダイスカット。棒棒鶏で使う胸肉は、特製タレにしっかり漬け込むよう割いて、肉の表面積を大きくしています。
野菜たちの個性を味わう感覚と、それらを組み合わせて一緒に食べたときの一体感。多彩な切り方でこそ、表現できるんです。
食感でも飽きないための、リーフやパン
一杯をおいしく食べきるための「食感」も、重視しています。
たとえば、グリーン。すべてのサラダには、グリーンカールを使っています。葉物の中でグリーンカールに惹かれたのは、主食サラダの基盤としての主張が強すぎない食感と味でした。絶妙な柔らかさは、よく噛んでいても疲れません。
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サラダを提供する際には、栄養価の高い全粒粉パンをつけています。サラダだけでは物足りない方へのサービスと思われることが多く、その目的もあります。でも一番の理由は、途中で食感を変えるためです。サラダを何口か食べ、給水所のようにパンを食べる。口の中の状態が一気に変化します。
キーマカレーには、さつまいもではなく〇〇〇だった
一杯を食べ終わるまでの食感の変幻は、具材の組み合わせにおいても考え尽くしています。
たとえば、これまでシーズナルメニューだった「キーマカレーのサラダ」が、9月から定番メニューに仲間入りするんですね。このキーマカレーのサラダを構成するトッピングを考えるとき、グリーンリーフ、キーマカレー、玄米がまず決まりました。その次は、カレーなのでにんじん、オニオンと選ばれ、もう1品を何にするか。試作のポイントでした。
甘みを足そうとさつまいもを加えたところ、ホクホク食感に口の中が乾いてしまい、合いません。おいしいんですが、最後まで食べると少し疲れてしまう。かぼちゃや紫キャベツなど色々合わせてみるものの、どれもしっくりきませんでした。
甘みがしっかりある「りんご」に替えてみました。りんごの甘みと水分がほどよく調和し、目指していた以上の組み合わせになりました。
一方で、りんごは酢豚のパイナップルと同じように、主張しすぎると全体にとってマイナスです。サラダボウルを食べきる間の、3口〜5口ごとにりんごのサクサク食感に当たるようにしたい。
最後は、少し厚いいちょう切りした8枚前後を入れることに落ち着きました。スパイスの効いたキーマカレーと、ところどころ現れてくるりんご。とても自信作です!
もちもち食感と食中毒のリスクとの葛藤
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「主食サラダ」とうたう以上、野菜以外のおいしさも欠かせません。実際、食べごたえのあるWithGreenの肉メニューを愛してくださっているお客さんはたくさんいて、とてもうれしく思っています。
鶏むね肉や豚もも肉など、高タンパク質の肉を柔らかくジューシーにするのは、低温調理にかかっています。65度以上の熱を加えるとタンパク質は固まり、硬くパサついてしまうからです。
苦労したのは、「低温ローストポークのサラダ」のローストポークでした。国産三元豚のもも肉を、低温調理しています。素材の良さを損なわず、もちもちした柔らかさを出すには、65度以下の調理が理想でした。
一方、低温調理のリスクとしてあるのは、食中毒です。学校給食と同じ厳しい衛生基準には、「中心温度を63度で30分以上熱を加えること」とあります。これをクリアさせると肉は硬くなり、肉を柔らかく保つには食中毒の危険性がある。どういう調理方法でどの温度で火を入れたら、両方を叶えられるのか。とにかく、開発と試作を繰り返しました。
中心温度を測り、衛生的に問題ないか。調理方法を変えてつくったローストポークを、検査機関に何度も提出しました。試行錯誤の末に絶妙な加減を探り当て、両方をクリアする方法を見つけました。
ローストポークのしっとり感を残すには、管理や提供方法にも注意が必要です。提供する際は、サラダの注文を受けてから塊肉を冷蔵庫から取り出し、切り分けています。肉は表面積が大きいほど乾き、パサついてしまうからです。
商品開発から店舗でのレギュレーションに落とし込むまで、3年以上かかりました。
発想の始まりは「日本人の好むおかず」から
ハマる人が多いメニューに、「砂肝ともやしナムルのサラダ」があります。
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商品開発の際は、日本人が好んでいる食材や定食を、サラダに置き換えられないか? そんな発想からスタートします。
唐揚げ、ハンバーグ、焼き餃子……。思い浮かべた先に出てきたのが、やきとりでした。やきとりの盛り合わせには大抵砂肝串が入っている、これはいける! とピンときました。砂肝はまず食感がアクセントになるし、高たんぱく、低脂質、高鉄分とダイエット食材でもあります。WithGreenのお客さんに喜んでもらえるのでは、とも考えました。やきとりだと砂肝は塩で食べますが、サラダだとドレッシングとケンカします。しょう油漬けにする味に至りました。
WithGreenを数あるお店から選んでもらうとき、サラダを食べるというより、「おいしい食事をしにきた結果、いっぱい野菜やお肉が摂れている」。そんな商品開発を目指しています。
ドレッシングは「35g」である譲れない理由
食材たちを一つにまとめるのは、ドレッシングです。一体となってからみ合い、最後の一口を飲み込むまで、おいしい。そう感じてもらうためのドレッシングには、少しとろみをつけています。「さっぱりタイプ」「クリーミータイプ」と、合わせて10種類以上を用意しています。
そんなバリエーションあるドレッシングは、店内で食べる場合や、30分以内に召し上がるお客さんには別添えではなく、“混ぜる”ことを推奨しています。和えることでドレッシングが最初から最後まで均一になり、味が行き届くからです。また、別添えの場合は50gのドレッシングを付けるのに対して、和えると35gで済みます。塩分量やカロリーも抑えられるんです。
実は、ドレッシングを「35g」に調整していることは、もう一つ大切な目的があります。
WithGreenのサラダボウルを食べ終わったとき、空になった器を見てください。ドレッシングの量を調整し、食材としっかり絡ませてあることで、余分な水分や油分がほとんど残りません。ちょっとしたこだわりで、「ごちそうさま」をした器も気持ちいい状態を目指しています。
お腹も心もおいしいサラダボウル。ぼくたちがこだわりを積み重ねた一杯、ぜひご体感ください。
まだある、サラダボウル専門店 WithGreen/ウィズグリーンの「こだわり」
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編集協力/コルクラボギルド(文・平山ゆりの、編集・頼母木俊輔)