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生まれ育った場所を大切に|稲福政志さん

こんにちは。with OKINAWAのさむです。

今回取材させていただいたのは、稲福 政志(いなふく まさし、愛称:まっしー)さんです。

自身で沖縄県内を案内するうちなーガイドや、沖縄についての発信を行っており、4月には那覇のIT系企業に入社しました。

実は大学に入る前は沖縄が嫌いだったと言うまっしーさん。

しかし、海外に自分の親戚がいると知ったことをきっかけに、沖縄が好きになっていったそうです。

↓まっしーさんTwitter



沖縄が嫌いだった

ーーー現在、沖縄について発信されたりテレビから取材を受けたりされていますが、そのように活動するようになった経緯を教えてください。

実は、僕はテレビに出たり活動したり、そういう目立ったことが好きな人間ではなかったんです。

しかもそんなに沖縄のこと好きではなかったんですよね。

おじいちゃんやおばあちゃん、叔父さんの家がすぐそこにあって、家の周りが親戚だらけなんです。しかも、どこに行ってもすぐ友達や知り合いに会うんですよね。

何をしても誰かに見られているようなコミュニティの狭さが嫌で、沖縄を出たいと思っていました。

実際、大学受験では埼玉の学校を第一志望にしていたんですが、受験に落ちて、琉球大学に入学したんです。

琉球大学には同じ高校から100人くらい入学していて、さらにコミュニティの狭さを感じました。


そんなある日、たまたまシアトルの親戚が沖縄に来たんです。

それまで海外に親戚がいるなんて知らなかったので驚きました。

しかもその方とFacebookを交換すると、フィリピンやロサンゼルスの方からも「私たちはファミリーだよ!」って連絡が来たんです。

そこから、おばあちゃんと一緒にフィリピンに行っておばあちゃんのお姉さんのお墓を訪れたり、休学している間にアメリカの親戚の家を渡り歩いたりしました。

そこで「沖縄って狭いけど、ある意味広いよな」って感じたんです。

例えば地方から東京や大阪みたいな都心部に出た人の中でも、沖縄の人たちは県人会を作ったり、沖縄にルーツがあることを忘れないんですよね。

僕の親戚も、沖縄から離れて20年以上連絡が途絶えていたのに、沖縄の花笠を寝室に飾っていました。

そうやって繋がっていると思うと広いなって感じて。
そこから少しずつ沖縄が好きになっていきました。

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まっしーさんの親戚の方々。手前から、シアトル在住の親戚夫婦、まっしーさんの祖母の弟さん、まっしーさんの祖父母。


ーーーなるほど。そうやって沖縄を好きになっていかれたんですね。その後、実際どんな行動をされてきましたか?

最初は結構痛いヤツやってましたよ。笑

「俺は海外に親戚がいるんだぜ」みたいな。
そうやって周りに沖縄について話してました。

でも、沖縄で沖縄について語っても誰も興味持ってくれないんですよね。

例えば「沖縄の海ってきれいだよね」って言っても、沖縄にずっと住んでいる人からしたらそれが当たり前で、県外の海が汚いだけ、みたいな。

だから、東京に行こうって思ったんです。

フィリピンに留学している時、海外の人や県外の人は沖縄に興味を持ってくれたんですよね。

それで、いろんな出身の人が集まる東京に行こうと思いました。

東京のPOOLOというコミュニティに参加しました。それが、大学3年生の時でしたね。

その頃は月に1、2回東京に通っていました。

その時の友人が時々沖縄に来ることがあります。その時は「うちなーガイド」と名乗って沖縄を案内していますね。



ーーーなるほど。確かに、沖縄の人に沖縄について語っても怪訝な顔されますもんね。

そうですね。当初僕もそれが嫌で、県外に出たんです。

でも、興味を持ってもらえる場所に行って、自分の知っていることを話して褒められるだけって本当に自己満足じゃないですか。

それに県外に出たことで、やっぱり僕は沖縄県内の人に沖縄について知ってもらいたいなって感じるようになって。

「僕はもう沖縄から出ないからみんなが来て」っていうことの現れがうちなーガイドかもしれないですね。


あと、沖縄について話しても興味を持ってもらえなかったのは僕が話したコミュニティが悪かっただけなんですよね。

例えば沖縄にも「世界若者ウチナーンチュ大会」みたいな学生コミュニティがあって、そこには沖縄について話すと同じくらいの熱量で返してくれる仲間もいます。

小さいコミュニティの中で発信して失敗しただけで、沖縄って大きいじゃないですか。だって140万人もいるんですもん。

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うちなーガイドの様子①


ルーツを大切に

ーーー先ほど、海外の親戚に会いに行ったと話していただきましたが、親戚の方々に会ったときにどう感じましたか?

すごいな、と思いました。

沖縄で生まれても育ってもない子が、沖縄に興味をもってめちゃくちゃ質問してくれました。

しかもわざわざアメリカから沖縄まで来てくれたんです。

「初めての日本は沖縄だよ」って言ってくれて。

沖縄で生まれた人や育った人が、時々沖縄に帰ってくることはよくあるんです。

でもそうじゃないのに、沖縄に親戚がいるからって、彼氏まで連れて来てくれたんですよ。

ルーツに熱い想いがあって、しかもちゃんと行動が伴っている。それが本当にすごいなって。


ーーーなるほど。ちなみに、米軍基地について聞かれたことはありますか?

あります。今話した親戚からですね。

その子とちょうど南城市にいた時に、上空をヘリが通ったんです。今思えばあれは自衛隊のヘリだったんですけど、「うるさいね」ってなって。

その時に「沖縄の人ってアメリカ人のこと嫌いなの?」って聞かれました。

すごいショックでしたね。
外からは、そう見えるんだって。

僕自身はアメリカ人や基地のことが嫌いではないです。ただ、悪いことをした人が捕まらないとか、そういった構造が嫌いなだけなので、そう伝えれたことは良かったと思います。

その反面、「嫌いかも」と思われていることは辛かったですね。

ーーー確かにそうですね…。


ーーー海外つながりでお聞きしたいです。
ハワイに行かれていたこともありますよね。
小学生とのnoteが印象的でした。

読んでくれたんですね。ちょっと恥ずかしいです笑

ハワイのイマージョンスクールに行った時の話ですね。

そこでは小学生がハワイ語を使って、ハワイの歴史や文化について学んでいたのですが、そこには純粋なハワイアンだけではなく、フィリピン系などいろんなルーツの子もいたんです。

その子たちに「なんでハワイアンじゃないのにハワイのことを学んでいるの?」と尋ねると、「だってハワイに住んでいるから」と返ってくるんですよね。

小学生でも自分のルーツや住んでいる島に対して関心が強いことにすごく驚きました。

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ハワイイマージョンスクールでの様子


ーーー確かにすごいですね。
「小学生に琉球人差別のことに対し『なんで日本は沖縄にそんなひどいことをしたの?』と聞かれて答えられなかった」と書いてありましたが、その時どんなことを感じていましたか?

すごく単純だけど、複雑な質問だなと思いましたね。

そして、答えられないことがすごく悔しかった。

もしかしたら、複雑そうな話をして誤魔化すこともできたかもしれないけど、その小学生を納得させられるような答えを言える気がしなかったです。

今も言えない気がしますね。逆にちゃんと説明できる人、少ないんじゃないかな。

答えられないのが悔しいのと同時に、自分は20歳なのに自分の住んでいる島のことをあまり知らないなって感じました。



まっしーさんのこれから

ーーー今の沖縄の若い人たちがしたほうがいいことはありますか?

おじいちゃんやおばあちゃん、お父さんやお母さんに昔の話を聞いてみるといいと思います。

今の若い人たちは平和の中に暮らしているから気づかないけど、平和じゃないこともたくさんあると思うんですよね。

家族の話を聞くことで、それに気づけることもあると思います。

戦争の話をいきなり聞いたりすると、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する方もいるので気をつけたほうがいいかもしれません。

例えば「どこで生まれたの?」「どんな子どもだったの?」みたいな話から、本人の話したい内容を聞いてみるといいと思います。

僕もおばあちゃんと話して、おばあちゃんがどんな子どもだったか、おじいちゃんとどんな風に出会ったかなど、いろいろ聞けておもしろかったです。

それに、おじいちゃんの戦争の経験や、戦後、生きるために働くしかなかったことも聞きました。だから孫には自分のやりたかった勉強をたくさんして欲しいと思ってくれているんだとも気付きましたね。

昔の話を教科書で学ぶとあんまりおもしろくないかもしれないけど、自分の知っている人の話だと楽しみながらいろいろ知れると思います。

自分のおじいちゃんおばあちゃんだけでなく、地域の人に昔の話を聞いてみるのもいいかもしれないですね。


それから、「沖縄のために何をしたらいいですか」っていろんな人から相談を受けることがあるんですけど、僕は何をしたっていいと思います。

多くの人にとって、就活がそれを考えるタイミングになるのかなって思うんですが、沖縄のために働くなら観光業しかないのか?って言ったらそうじゃないと思うんですよね。

そもそも地元の企業で働いているだけで地元のためになるんですよ。税金を納めているから。笑

僕はIT系の企業に入社したんですが、結果的に沖縄のためになっていると感じているんですよね。

しかもいろいろ経験させていただいて、自分自身成長しているように感じるし、巡り巡って、今観光に関するサイトの相談も受けています。

僕がそうだったように、自己満足でやりたいようにやっていたらいい方向に繋がると思います。なので責任を持って、続けていくことが大事なんじゃないかなって思っています。

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うちなーガイドの様子②


ーーーありがとうございます。
最後に、まっしーさん自身、今後どうなっていきたいか教えてください。

沖縄にフォーカスして話すと、「沖縄の無料案内所になりたい」と思っています。

ガイドなどの観光関係だけでなく、例えば以前僕を取材してくださった記者さんに「こんな学生知らない?」と聞かれたら教えたり。

もうすでに実践しているんですけどね。

例えば、「移住のために必要なものは?」「南城市でおすすめのカフェは?」「友達が来るんだけど、どこ案内したらいい?」みたいな質問が来ることもあります。

そういう時は、僕はめっちゃ調べたり、それについて知っていそうな友達数名に聞いてそれを答えたりしていますね。笑

ただ、これは人のためにやっているというわけではなく、「人に親切にすることは、自分のためになっている」ってわかっているからなんですよね。

周りから色々聞かれることで、自分も色んなことに興味持てて、調べて、知識がついて。それがまた、また誰かのアドバイスにつながることもあるし。

あとは、困っている人が目の前にいて助けないことに違和感があるのと、「沖縄のために」とも思っていますね。


ただ僕は、みんなに沖縄のことが好きになってほしいんじゃないです。

県内の人には好きになってほしいと思うけど、県外の人には思わない。だから案内する時は沖縄のダークな部分もちゃんと言います。笑

なんでかっていうと、それぞれの人にとって生まれ育った場所とか、大切な場所があるはずなんですよね。

それに気づいて、その場所を大切にしてほしいなって思うんです。

あとは、「どっちが自分の地域の魅力を強くアピールできるか合戦」をしたいのもありますね。

沖縄vs北海道でもいいし、vs佐賀でもいい。

首里vs沖縄県内の町でもやりたいと思っています。笑

「みんな気付いてないけどこんないい部分があるんだぜ」って教えてほしいです。

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うちなーガイドの様子③


↓まっしーさんTwitter


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コチラ


最後に

今回記事を執筆させていただいた、さむです。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

今回お話しさせていただいて、まっしーさんは自身のルーツをすごく大切にされている方だと感じました。

これを読んでくださっている方の中には、出身が県外の方や、ご両親が県外出身の方もいらっしゃるかもしれません。

ずっと沖縄に住んでいた方はもちろん、各々のルーツを知り、その地域の魅力や課題についても考えるきっかけになればと思います。


with OKINAWAは沖縄の学生が沖縄の事をもっと好きになってもらえるよう、沖縄のために活動されている方や、沖縄で活躍されている方を紹介していくnoteメディアです。

今後とも、よろしくお願いします。


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