大学の頃の。

昨日、東京は雨。

久しぶりに1日よく降った。

気圧のせいか、朝から止まない偏頭痛を抱えてなんとか家を出た。
体調が悪くてもなんでも、とにかく今日は、行こうと思った。
頭痛と共存して、そこにいるだけになっちゃってもいいから。
東中野にあるCafe iwabutiなら、ゆっくりと居ることができるだろう、という、安心感もあったから。

かなり強い降りの中、足元を気にしながら、日曜の東中野の駅前に降り立つ。
ゆるい坂道を５分も歩かない、
曇りガラスの扉を開けると、
ふーちゃんの高くてやさしい声。

オーナーのいわぶちさんも、手伝いをしているふみこさんも、
大学の先輩です。
ぶっちさんの切り盛りするこのカフェは、昼間からおいしいワインやビール、カクテルも飲める。
雨の中、お客さんも男性ひとりや、または女性の二人組、それぞれにくつろいでいて、雨だからか、長居の人が多い。

頭痛のことを話して、お酒ではなくてあたたかいチャイを頼んでほっとした頃には、
もうみゆきさんが到着。
みゆきさん、いきなり赤ワインを飲み干す。
ブラジルの話。
いろんな場所の写真。ムービー。
みゆきさんは、いわぶちさんとふたりで、正月休みにリオの友達のところへ行ってきた。
おみやげに、と、プロポリスのスプレーを買ってきてくれた。
ありがたい。。ほんとにありがたい。

Cafe iwabutiの食事メニューはおいしいよ。
お腹が減ってきて、タコライス。
タコミートのおいしいこと。。やさしい味のスープを飲みながら、こだわりのドレッシングでサラダを食べ、オレンジジュースを飲み干したら何やら元気になっていた。
水を何杯も飲んだこともあるのかな、偏頭痛が治ってきて、
それでちょうど、６時、ふーちゃんの仕事が上がった。
カウンターで乾杯。

そろそろ屋良さんが着く。
ホットワイン、頼んでしまおうか。

結果的にワインは、スパイスのおかげもあるのかいい薬となって、
屋良さんが懐かしい笑い声で到着したころに、
私は絶好調だった。

それにしても、
みんな若い、大学生だった頃と、ほとんど変わっていない。それは驚異的なほどに。

屋良さんの口から、
「ミュージックイン」
って言葉が出た時に、なんとも言えない、気恥ずかしいような、切ないような笑っちゃうような、いろんな想いの混じった気持ちになったよ。

飲んでばっかりの、どうしようもない学生生活だった。

私は教員として働き始める直前の春、ちょうど今くらいの季節に、卒業の証明をもらいに江古田にある大学へ行った。
卒業以来、一度だけ指導教授の退職記念講演で訪れたけれど、その時は時間もなかったので、
そのとき私は卒業以来、初めて構内をゆっくりと歩き、かつて部室のあったあたりに行った。

２０年前の当時でも相当おんぼろだった年季の入った学生会館はもちろんとっくに取り壊しで、

そこは広場になっていて、ちょっと背後に、（旧パスタ館寄りの方に）
新しくてビルのような部室棟があって、軽音楽らしい音も漏れ聞こえてきていたが、

かつてミュージックインというサークルの部室の扉の前にはベンチがあって、そこに座ると目の前には小川が流れ、木々の合間をにわとりが歩いていたのだ。

大昔は自然の小川であったらしい。
大学を建てるにあたり、人工的にしてでも流れを残していたという。
森というか、林。
武蔵野だったころの田舎な東京の名残、素朴な自然の風景が、大学の構内にはまだあった。

よく酔っ払ってその小川に落ちていたり、垣根の間で人が寝ていたり、した（笑）

静かでね。

どんなに音楽を鳴らしても、酔って騒いでも、見渡す限り誰もいない。
我々しかいない。
そこは学生が寝泊まりして暮らせるほど（実際数え切れないほど泊まったし、住んでる人もいた‥）、アパートのように部室内はしつらえてあって、いつも誰かがいて、いつも酔っ払っていて、小さな村のような、でも束縛もなにもなく、出入り自由、楽園のような、とにかく私の、
大学時代のすべてだった。

がっかんはもうない。学館、学生会館は。

けれど、３年前、その新しい学生会館を見上げながら、たしかこのあたりがミュージックインの部室だった、という場所のところに、小川に向かってベンチがひとつあって、
新しくてきれいなベンチだけれど、何気なくそこに座って、あっと声が出そうになった。

目の前の景色は、まったく変わっていなかった。
横に伸びた太い枝の感じ。木の幹の曲がり具合。あまりにもよく知っている、知っているままの、木立ちの風景だった。

学館の、上の方の階の部室だった人は、その階からの景色を忘れていないだろう。
でもそれはもう見ることができない。
大きなケヤキの、葉擦れの音だけ。

そんなわけで、
そういう思い出は別として、

昨日は昨日で新しく、

たのしかった。

Cafe iwabutiの赤ワインはおいしい。これは絶対。
昨日はホットワインにしたけれど、
これもまたおいしかったけれど、

とにかくね、

偏頭痛に悩んだら訪れてみてください。