大人が食べる柿

子供の時はその辺りの柿の木の柿を取って勝手に食べていた。甘くて、時々渋くて、わあああ!って吐き出して。夏が過ぎると柿が食べられるのは自然の原理だと思っていた。
今、大人の今、お金を出してスーパーに並べられていた柿を買ってくる。大抵は皮を剥いて大人っぽくちゃんと食べるけれど、今夜は洗いもせず皮も剥かず、齧り付く。
甘いけれど、それは「甘い」という修飾語がついた甘さ。
子供の時の、あの「美味しい普通の自然の甘さ」じゃない。
少し、結構とても、じんわりと悲しい。
悲しいと思いつつ、大人は柿を、食べる。


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