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スタンディングオベーションに抗う勇気が持てなかった日
先週末は夫に娘を見てもらい、応援するアイドルが出演する舞台へ。
その前には久しぶりに友人とブランチもできて、なんとも言えない高揚感と共に劇場へ足を運んだけれど……頭の片隅に、ちょっとした不安があって。
作品に対して、既に観劇していた人たちからのあまりよくない評判をSNSで見かけてしまい。それがずーっと頭に残ってたという。
前評判を前提にせず、自分のまっさらな視点で舞台に向き合うべきなのに。SNSとの向き合い方は本当に難しい。
観劇前から反省しつつ、見終えたときには残念ながらその評判に納得し、同意してしまう自分がいた。
詳細な感想は割愛するけれど、出演者たちの良さを活かしきれていないどころか、どこか出演者任せな雑さがあり。センシティブなテーマを扱うにはデリカシーに欠ける部分もあり、つまらないどころか不快に思う人もいるのではと思うほど……
出演者たちがなんとか良いものにしようともがく気持ちは伝わったし、ピンポイントで良いと思えるパフォーマンスもあった。それでも。
全体感としては、まれに見る、チケット代に見合わないものだった。
そんな中で驚いたのは、本篇が終わった後のカーテンコール。前評判からは信じられないほど、見渡す限りの観客が全員立ち上がりスタンディングオベーションしていたのだ。
Wikipediaによればスタンディングオベーションとは、「演奏会やスポーツなど人が集まるイベントなどで、観客が立ち上がって拍手を送ることである。素晴らしい演奏や演技、プレーに感動した観客による最大限の賛辞である。」とある。
最大限の賛辞……本当に……?
アイドルが出演する舞台でのスタンディングオベーションには、前々から違和感は覚えていた。
内容がどんなものであれ、最後の最後には立って拍手する。そこまでがデフォルト。どこかそんな空気を感じることが多く、本当にこれでいいのか?と思いながらも結局その場の空気に抗えなくて。一緒になって立ち、拍手してきた。
今回はさすがに抗って意思を示すべきだろう。そう思いつつも……臆病な私は結局それができなくて。
「後ろの方の列で、演者が見えなくなるし」と、自分に言い訳をして。スタンディングオベーションの景色にそのまま同化した。
今後、心から感動して本当にスタンディングオベーションしたいときはどうすればいいの?今日みたいなことをしていたら、こちらの気持ちは一生演者には伝わらない……
そんなことまで考えつつ、モヤモヤとしながらひとり帰り道を歩いた。
前々から予定を調整して、夫と娘の協力も得て、今日の日を楽しみにしていたのに。帰宅してから「楽しめた?」と聞いてくれる夫の言葉に、なんとも言えない自分が悔しかったし、なんだか申し訳なかった。
夫は私の趣味を否定するどころかいつも応援してくれて、感謝している。でも、独身時代と比べてアイドルを応援する上での制限が増えたのは事実だ。自分の時間をつくることは、以前に比べて簡単ではなくなった。
でも、だからこそ、自分にとって時間とお金をかける価値があるものは何か?について、より真剣に考えるようになったと思う。
そういう意味でライフステージの変化と共に制限が増えるのも、これはこれで悪くないかも……と思うし、今回はそれに気付かされる大きな機会だった。
少し大袈裟だけれど、人生もきっとそうで。生きられる年数に限りがあるからこそ、歳を重ねれば重ねるほど、自分にとって大切なものに気づくことができるのかなと。
周りがどうかは別として、自分がいいと思うものはいいと言いたいし、大切にすべきものは大切にしたい。
そんな軸を持って生きていきたいなあ……と、入場済みのチケットを眺めながら、あらためて思っている。
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