もしも敗者復活当選を得票数順にしたら
衆議院選挙では小選挙区比例代表並立制が採用されています。小選挙区と比例代表に重複立候補することも可能で、小選挙区で落選しても惜敗率と各政党が得た比例議席数に応じて復活当選することがあります。
しかし、この仕組みの現行制度では、得票数と復活の可否は一致しません。2021年衆院選でも、10万票以上を得ながら復活できない議員がいる一方で、2〜3万票で復活できる議員もいました。
また、そもそも小選挙区制が二大政党を志向して導入されたにも関わらず、比例代表と組み合わせたことにより自民党の一強多弱状態を許す一因になっています。一方で、比例復活当選の仕組みには死票を減らすという役割もあります。
そこで、比例代表を廃止し、復活当選を純粋に得票数順で決める、という方法を考えます。制度変更にどういった効果があるのか確かめるため、2021年衆院選がこの制度で行われていた場合の各党の獲得議席について分析してみましょう。
その前に、現行制度で行われた2021年衆院選の結果をfig.1に示します。
fig1のように2021年衆院選は289小選挙区で争われました。
よって、当選者を
1. 小選挙区の勝者289名
2. 小選挙区の全敗者のうち、得票数上位100名/130名/150名/176名/200名
とした場合を考え、それぞれの復活当選人数を設定した時における各政党の獲得議席割合をfig2で示しました。
なお130名は2021年衆院選における比例復活議員数であり、176名は同選挙における比例選出議員総数です。
参考までに、復活当選人数ごとに各党の当選数をfig3~fig7で示します。
さらに、死票の数がどのように変わるのかfig8に示します。
細かい分析に関してはまた改めてしたいと思いますが、おおむね
1. 二大政党制への圧力を高める
2. 死票を減らす
といった効果が見てとれます。
さらに、得票数が多い方が候補者にとって有利になる制度のため、投票率を上げようとする働きも期待できます。副次的には一票の格差の是正効果もある(有権者が多い方が復活に有利)でしょう。もちろん対照的に、比例代表が持つ少数意見を拾い上げるという役割が低下するなど、デメリットもあります。実際に導入する場合は参議院の選挙制度と併せて総合的に考える必要があるでしょう。
参考
衆議院選挙2021特設サイト(NHK)
改稿記録
2024年5月9日 公開
2024年5月10日 一部修正
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