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hatfulという語は意外と!? ━『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』より

昨年(2023)劇場で観ていたのですが、Netflixでの配信も始まったということで、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』"Wonka"を英語表現にも注目しながら観ています。名作『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚なのですが、ウィリー・ウォンカ役がジョニー・デップからティモシー・シャラメに代わり、ミュージカル仕立てになっているのが特徴ですね。監督もティム・バートンから『パディントン』のポール・キングになっています。

これは冒頭の'A Hatful of Dreams'のミュージカルシーン。夢はあるけどお金はないウォンカ。配達車から街灯のポールに飛び移るときの軽やかさとか良いですよね〜。

さて、ここで今回注目したいのは以下の箇所。

I've got twelve silver sovereigns in my pocket, and a hatful of dreams.
(僕のポケットには12枚のソブリン銀貨。それに帽子いっぱいの夢がある。)

sovereignsというのは本来「ソブリン金貨」だから、silver sovereigns「ソブリン銀貨」なのは英国に寄せつつもこの世界特有の設定なんだと思われます。

そして表題のhatfulという語。
これはhat「帽子」とfull「〜いっぱいの」から成る「帽子いっぱいの」という意味の普通の形容詞と思われますが、そういえば普段あんまり見たことないなー、と思って手元の『ウィズダム3』と『OALD10』で調べてみたんですが、なんとどちらにも載ってない!

ネット辞書にはあるのですが、オーソドックスな辞書には掲載されてないくらいの使用頻度の語なんですかね?

そう思って、Google Ngram Viewerで使用頻度の歴史を調べてみたところ、

時代によってばらつきがありますが、特に1950-2000にかけて減っていることも辞書掲載がない理由なのかな?

そこでさらに、意味はまったく違いますが見た目が似ているhateful「とても嫌な」、タランティーノ監督の『ヘイトフル・エイト』"The Hateful Eight"でもお馴染みのこの語と並べて調べてみると、

うわー、そもそもいつの時代もhatfulはそれほど使われていない語だったんですね。。

うーん、そうはいってもThe Smithsのアルバム"Hatful of Hollow"(1984)などたまに目にすることはあるけどなあ。(しかし『帽子いっぱいの空虚』ってすごく格好良いタイトルですね!)

まとめると、hatful「帽子いっぱいの」という語は非ネイティブ日本人からしても意味をイメージしやすい形容詞だけれど、実は使用頻度はかなり少なく、やや古風だったり詩的なニュアンスを持つ、と言えそうです。

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