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'various people'は「変な英語」か?

先日、IELTSに関する著作で知られる小谷延良先生のX(twitter)での投稿に、次のようなものがありました。

時々見る変な英語IELTS😳

△ various people (いろいろな人たち)

まずvariousは人を修飾することはまれ

また、several differentという意味で日本語の「いろいろ」より幅が狭い

最後に、英語は何がいろいろかを明確にする方がいいので

〇 people from diverse backgrounds

がベスト🙂

私がこの投稿に注目したのは、つい最近、教えている受験生の自由英作文の中に、まさにこのvarious peopleが使われていたからで、ここを添削したものか悩ましかったからでした。

当の学生に、この表現は自分で考えたのか(つまり日本語からの類推による「母語干渉」的なものなのか)、それともどこかからもってきたのかを聞いてみたところ、後者のようで、竹岡広信先生の『基礎英作文問題精講』にある以下の表現から借用したとのことでした。

Moreover, through social media, you can communicate with various people, such as those who have the same interests as you.
(加えて、SNSを通じて、同じ趣味を持つ人などさまざまな人々とやりとりすることができる。)

p.175

はたしてvarious peopleは小谷先生の言うように、「変な英語」なのでしょうか?

手元の辞書をいくつか当たってみると、確かにvarious kinds of peopleといった用例はあっても、ダイレクトに人を修飾するvarious peopleは見当たりませんでした。

参考までにChatGPTにも聞いてみたところ、以下のような解答が得られました。

この文では、「さまざまな人々」の具体例として「同じ趣味を持つ人」が挙げられているため、より明確で具体的な表現を使うと良いかもしれません。以下のような言い換えが考えられます:

(1) diverse people

• Moreover, through social media, you can communicate with diverse people, such as those who have the same interests as you.
• 「多様な人々」というニュアンスを強調する場合に適切です。「多様性」を意識させたい文脈なら好まれます。

(2) people from various backgrounds

• Moreover, through social media, you can communicate with people from various backgrounds, such as those who have the same interests as you.
• 「さまざまな背景を持つ人々」と具体性が加わり、自然で説得力があります。

(3) individuals with different interests and characteristics

• Moreover, through social media, you can communicate with individuals with different interests and characteristics, such as those who share the same hobbies as you.
• よりフォーマルで具体的な表現を使いたい場合に使えます。

また言葉の組み合わせの相性を調べられるサイト'Just The Word'でも、various peopleは見られませんでした(もっとpeople以外の人を表す語membersやparticipantsなどへの修飾はいくつか見られましたが)

これらから、総じて、小谷先生が言われているように、IELTSやアカデミック・ライティングのフォーマルな文章では、曖昧さの残るvarious peopleは避けた方が良さそうですね。

ただこの表現がまったく使われないかというとそうでもないようで、例えば、手元にあるkindle本の中で検索してみたところ、

These were classes where we had to role play various people we’d find out there—waiters in cafés, policemen and so on.
(それらは、私たちが外の世界で出会うさまざまな人々――例えば、カフェのウェイターや警察官など――を演じなければならない授業でした。)

—"Never Let Me Go" Kazuo Ishiguro著

カズオ・イシグロの小説"Never let me go"には、上のような形でvarious peopleが使われていました。

とはいえ、variousもpeopleも非常によく使われる語の割には、この組み合わせが思ったより少ないのもまた事実で、"Never let me go"でも、施設育ちであまり外の世界のことを知らない彼らにとっての知識の曖昧さをあえてvarious peopleと、文学的理由で表現していると解釈することもできるかもしれませんね。

【まとめ】
「いろいろな人」を英語で表現するのに'various people'は、誤用とまではいかないが、やや曖昧さの残る表現。フォーマルな文体では避けるのが無難。

この方針で件の生徒にもコメントしようと思います!

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