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福祉にはこれから何ができるだろう?

就労移行という支援を行なっていて痛感することがあります。
もしかしたら就労系の支援に携わられている方でも感じられたことがある人もいるかも知れないんですが、「支援」というものの定義が少し変わるような感覚が伴うようになるんです。
  
 
障害者支援の大きな目的・ベクトルは「自立支援」です。
わかりやすく言えば、障害をお持ちの方が社会に飛び出して、福祉の支援の手が離れても暮らして行けるようになることが理想だよ、ということです。
 
 
当たり前っちゃ当たり前なんですが、就労系の支援サービスになると、支援を福祉的な観点からだけで捉えていくんじゃなくて、社会実態との橋渡しを僕ら支援者が行わないといけないんです。
社会との接点が大きく生まれる分野なので、仕事を通して社会と繋がり始めたり、就職活動を通じて社会との接地面が広がっていくフェーズでの支援を担うのが、就労系の支援機関のひとつの大きな役割になります。
 
 
つまり、いつもならほぼほぼ仕事で関わる人が医療・福祉・行政だったものが、一般企業の方だったりいわゆる素人の方になり、僕らは急に自分たちの視点のチャンネルを変えることを求められます。
 
 
僕ら支援者は専門職の視点でかつ福祉的な配慮や擁護の感覚ありきで「支援」としてますが、社会に出ていく際は、当然企業の方や社会の中の多くの方は、僕らと同じように当事者に対しての知識や認識を持っているわけではありません。
福祉の中での「支援」と社会の中での「支援」の意味の違いと向き合わなければならなくなります。
 
 
社会では、特に就労という場面では、仕事の品質に変わりがなければ障害の有無自体は気にされないことも多々あります。僕ら福祉の側から見たら課題と思えていたことが、「仕事がきちんとできるならOK」とされたりします。
要は「関係性による障害」が生まれなければ、本人固有の特性的なものは必ずしも障害と捉えない、みたいな価値観になったりします。

  
 
問題なのはここからです。
  

 
一般企業さんが福祉的なマインドを持ち始めたり、いわゆる障害特性と呼ばれる概念の理解を深めて、極めて社会的な感覚の延長線上で「関係性に障害が生じない」ように環境設定をして仕事の切り分けや仕事の創出と、当事者の労働力の活用を的確に行えるようになり、さらには自社の雇用というゴール設定から当事者の就労支援に歩み寄って来られたら、多分福祉側の支援者は太刀打ちできないんじゃないかと思うんです。
 
 
僕ら支援者は、しかも福祉の世界しか知らないと、一般企業の持つ「生産能力」みたいなスキルを持ち合わせていないので、いくら本人個人を支援できても、社会生活を送るためのお金を稼がせてあげられないので、結局一手弱いんです。
 
 

なんというか、社会というステージにおいて僕ら福祉の人間の支援の力が、今実は弱いんじゃないか、っていう危機感。
 
 
もちろんいい事なんです。社会の中で当事者が働きながら生活するために、社会の側からそうした発想が生まれてくるんだから、社会全体としては選択肢が増えるので全然悪くない。
 
 
問題なのは、「じゃあ福祉の側からはこれから何ができるんだろう?」という事です。
 
 
 
時代が進んでいく中で、「福祉じゃなくても担えるところ」が増えていった時に、自分達に残る価値は何で、当事者が社会の中で生きていく上で、「福祉だから出来ること」は何なのか、って事がを、制度の有無によらず見つけて押さえていかないと、福祉は福祉の役を果たせなくなっちゃうんじゃないかなぁ、と思ってしまうわけです。
 
 
 
その答え自体はまだまだ正解なんて出てないけど、結局僕ら福祉支援者が自分たちの引き出しや選択肢を増やしておく事が必要なんだと思います。
 
 
時代の変化に合わせてアップデートしていかないと、今の時代、知識や機能はすぐに共有出来て、持っているスキルはあっという間にコモディティ化します。
ついこの間までは専売特許的な知識だったもの、スキルだったものが、気がつけば一般化していろんな分野でそれぞれ進化して新たな運用をされるようになる、なんてもはや福祉の世界でも同じなのかも知れません。
 
 
気がついたらもしかしたら僕ら福祉の世界が社会からおいてけぼりになる、なんてことが起きるかも知れないんです。
そしてその最たるフィールドが「就労」とか「社会参加」という、社会との接地面が最も大きいところなんじゃないか、という話です。
 
 
援助的福祉、ではなく社会参加的福祉のスイッチを僕ら福祉に携わっている人がどれだけ切り替えていけるのか、それは当事者の生活の問題でもあり、僕ら支援者のアイデンティティというか存在意義にも関わる問題かも知れないなぁ、とうっすらとした危機感を感じてます、という話です。
  
 
当事者が社会の中で生きていくということ、社会という舞台の中で、僕ら福祉の支援者、と呼ばれる存在はこれから何が出来るのか、何をしなきゃいけないのか、ちょっと考えてみてもいい時期なのかも知れませんね。
 

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