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就労支援から「生き方の支援」へ

今年に入って間もなく一般就労をされた利用者さんが、障害者グループホームを卒業して自立していく練習のため、住居支援に引っ越しをします。 
シェアハウス型の住居なので一見するとそんなにグループホームと変わらないように思えますが、必要な支援を除いてはほとんど干渉せず自分で生活を管理する極めて自立に近い環境になります。


元々就労移行支援を行なっている中で、ひとり暮らしを将来したい、という希望は多く聞いてきました。ただいきなりひとり暮らしというのはやっぱりご本人にとっても高いハードルで、なかなか踏み切れないジレンマがずっとそこにはありました。


だから大体「まずはグループホームから始めようか」という話になりますが、大体どこも満床で空きを待つ時間の見通しが立たないこと、そしてこれは地域性かもしれませんが、一般就労をされる方にとってグループホームという場所がちょっとだけ「過保護」だったりすることもあって、多分実態は即していないんだろうな、という事をよく感じていました。


結局グループホームで暮らしたとしてもそこからひとり暮らしって「近い」ようで遠いステップで、なかなか踏み出せないんです。


だったら「グループホームではない、でも完全にひとり暮らしでもない暮らし方」の選択肢として住居支援、というのを始めたんです。
シェアハウス型、独居型、同棲型などそれぞれのタイプはありますが、馴染みの支援者が本当に必要なところにのみピンポイントで随時支援に入るけれど後は基本的には自分なりに暮らしてみる、という昔の下宿みたいな感覚のサービスです。



これはちょくちょく僕自身もあちこちで公言しているんですが、僕らがやっている就労移行支援という事業自体は「一般就労に向けた訓練と就職のマッチング、そして定着の支援(就職半年後から就労定着支援というのがありますが)」というのが一般的な役割だと思います。


ただ就労した後も当事者の人生は続いていて、社会の中で生きていく中で壁にぶち当たったり、新たなライフステージに踏み出したい思いを持つ方がいらっしゃったりします。
でも就労して社会に出た後は制度上は「自立」したと定義づけられるようで、使える福祉サービスは少しずつ減っていきます。


でもたとえ就労していても彼らが元々持っている生きづらさみたいなものが全くなくなるわけじゃなく、実際には生きていくいろんな場面でがっつりした支援じゃなくてもサポートが必要だったりします。


一般的な社会資源はたくさんあるのですが、それは例えば障害を持たれた方にアジャストしていないものもたくさんあって、それは特に彼らのライスステージに関わるものだったりQOLに関わるものだったりすることが多いんです。 


そうして考えた時に、結局就労して社会に出ても彼らにはえらく選択肢が少なくて、気がつけばすごく小さな生活圏域の中で人生を生きていかざるを得ないことも少なくない、ということに気づきました。



「就職したらお金貯めて一人暮らししたいなぁ」
「いつかパートナーを見つけて結婚して家庭を築きたいなぁ」
「免許を取って車を買いたい」
「海外に旅行に行きたいなぁ」


など、僕らでも当たり前に考えるライフイベントだったりするものをハナから諦めてしまっている人もいます。
「でも実際は自分には難しいんだろうな」って。


なぜなんでしょう?



ひとり暮らしするにもリスクが高いから、困ることが多そうだから。
どうせ奥手な自分にはパートナーなんて見つけられない。
免許は難しそう、車の運転は危ないって言われる。
海外旅行なんてどうやって準備したらいいか分からない。


これは本人の責任だけの問題なんだろうか。しょうがない、で済ませていいんだろうか。
ちょっとしたサポートがあるだけでその不安って解消される問題じゃないのか?


つまり、就労して社会に出てからの彼らに必要な支援やサポートがどうやらなさそうだ、ということの表れじゃないんだろうか、という事だと思いました。


シンプルに社会の中で本人なりに豊かな生活を送るためのちょっとしたサポートが行える社会資源が足りていない、もう少し言えば、今ある社会資源の中に当事者にアジャストできるものが足りていない、という現実が少なくとも僕が暮らしている地域にはあるみたいです。


せっかく就労しても、家と職場の往復が基本で、休みの日に行くのはゲームセンターやちょっとしたアミューズメント(カラオケやボーリングなど)、それか大型のショッピングモールくらいで人生がそれ以上なかなかスケールしていけないんです。


つまらなくないですか?



もちろん全ての方がそうだというわけではないんですが、人生を豊かにするための選択肢が選べれないって悲しすぎるじゃないですか。 


そこからです。
住居支援だの婚活支援だのを考え始めたのは。


就労支援をしたその先にある当事者の方の人生に選択肢が生まれないと彼らは彼ら自身の人生を豊かにしたいという願いすら持てなくなるなぁ、と思うようになり、就労支援だけじゃなくてその先のサポートが受けられる環境を創らないといけないという発想を持つようになったんです。



一応これでも就労移行支援を運営しているので、就労支援をしているのはしているんですが、自分の軸足は就労支援だけではなく、障害を持っていても生き方を自分で選べるようになるための支援、という方がしっくりきています。


福祉という定義の中では「社会参加」というのは一つの到達点かもしれませんが、当事者の人生から考えると社会参加をしてからがそれこそ人生のスタートで、社会参加をしながらどれだけ自分らしい人生を送ることができるのか、というところを僕は福祉人としてもう少し議論していきたいと思うし、そのためにどんなアクションを生み出していかないといけないのか、ということを考えておかないといけないような気がするんです。



セーフティネットとしての福祉から「自立」に向かう福祉、そして社会に参加することを目指した福祉と段階を踏んでいったように、きっと次は社会の中で生きていくための福祉、みたいなものが必要なんじゃないか、と考えています。
そして多分それは福祉制度に依存することではなくて、僕ら福祉人が社会との繋がりを生み出したり深めながらその形を模索していくものなのかな、と考えています。


まだまだしていることもちっぽけですが、志だけは持ち続けながら、「生き方の支援」というテーマを見据えながら、とりあえず今日は住居支援への引っ越しの手伝いをしてこようと思います。


もし同じような想いを持たれている方がいてくれたら嬉しいな、と思います。



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