変わるもの、変えちゃいけないもの
変わらないことがいいことなのか、変わらないことがいいことなのか
いつまでも変わらないでいることはものすごく難しいことで、変わらないでいるために変わらなきゃいけないことがある。
僕は今までいわゆる「異動族」で、3年と同じ部署にいたことがありません。
大体任された赴任先で「立て直し」的な役割を任じられて、事業として立ち直った頃に次の部署に配属されたりそもそも自分自身が転職したり、という状況ばかりだったんですが、今の場所が自分の社会人経験で初めて5年以上も同じ部署にいるという経験をしていて、ある意味では初めての体験をずっとしているわけなんです。
そんな中で感じた話です。
今の部署に立ち始めて、最初の2年半くらいはただただ必死に現場づくりをしていました。就労移行支援事業所としてのカタチづくり、もちろん現場のど真ん中に立って、この場所で利用者さんの支援というのをどのようにやっていくのがいいのか、どんなアプローチが必要なのか、どうやって一般就労に繋げていけばいいのか、就労した後のサポートはどうやっていけばいいのか、など自分の支援の濃淡を調整しながらとにかく場づくりに勤しんでいました。
スタッフも増えて安定し始めた頃からちょうど法人経営にも携わるようになり、地域や周りにも目を向け始めるようになってからは、自分の身体も時間も絶対に足りなくなるということを念頭に置きながら、自分が現場のど真ん中に立ち支援のど真ん中に立って動くことじゃなく、思想やビジョンを共有しながら自分が少しずつ役割をスライドしつつ次のステージに向かうことを意識して動くようになりました。
地域の支援者が繋がる事だったり、福祉制度の届いていない所に支援を届けていくための仕組みやインフラづくりだったりをしながら、かたや運営や経営をブラッシュアップさせていくことが自分の役割になりました。
部署は同じ所なんですが、新しい事業をいくつか展開したり地域の繋がりを作っていったりするようになっているのである意味では仕事内容は変わっていて、異動はしていないけど特に2年程度の中で仕事内容も役割も動き方も随分と変わりました。
個人的には自分の現場で利用者さん達と揉みくちゃになりながら、いち支援者としてどっぷりと現場支援に浸かっていたくて、僕が居たい場所はいつだって目の前に利用者さんがいる支援の現場です。
自分の全身を使って目の前の支援に飛び込んでいたい、と思っています。
でもその反面、自分が支援現場にいて感じていたのは確かに社会資源の不足で、マンパワーの不足で、経営におけるリソースの不足だったのも確かな話で。
支援や場づくりをしていく上で、支援にとって大事なことや支援をするために必要な環境を守っていくためにはやっぱり前に進まないと守ることができなくなるんです。
その場所が変わらずに存続するためには、誰かが役割や動きを変えていかなければいけない。
何年かごとに卒業したり新しく入ってくる利用者さんの生活や人生を守り続けていくためには、それが叶う状態や環境を作っていかなければいけないんです。
ちょっと矛盾していますよね。
変わらずにあり続けるためにはどうやら変わらなきゃいけないものがあって、変わっていくためには変わらない思いや信念を持って動いていかなければいけない。
見る角度や視野によっては、僕も、僕の事業所もすっかり数年で変わってしまったと思われるかもしれません。
変わることがいいのか、変わらないことがいいのか、それは人によって違うと思います。
ただいつまでも「何ひとつ」変わらないでいることってものすごく難しいことで、変わらないでいることで取りこぼしていくものもあります。
僕の身体も時間も何をどうやっても一人分しかなくて、その中で1人でも多くの利用者さんに「必要な」支援を届けていけるようになるためには、僕自身の使い方をしっかりと絞り込んでいかないと本当に目の前の数人の利用者さんのことしか守れなくなってしまいます。
そんな中でいつも取捨選択に迫られます。
変わらずにいなきゃいけないものは一体何なのか、ということ。
僕は「想いや信念」は変えちゃいけないと思っています。何をやっていてもその根底にあるマインドは変わらずにいなきゃ、もはや何のためにやっているのか分からなくなります。
そして、「存在」そのものも変えてはいけないんだと思っています。
ある時ふっと消えてしまうことは絶対にしてはいけなくて、必要とされる限りは在り続ける、ということは変えちゃいけないものなんだと思います。
その代わり、「カタチ」は変わり続けるものなんだと思います。
むしろカタチは変わらなかったらきっと時間にも時代にも置いていかれてしまって風化してしまいます。
ただカタチは記憶や思い出に残ってしまうもので、変わらなきゃいけないけれど変えちゃいけないような気がいつもします。
僕らが時々「あの頃に戻れたらなぁ」って感傷に浸ってしまうような感じ。
どれが正しいとか間違っている、というのはないんだと思います。ただ僕はこういう取捨選択をした、というだけで。
変わるもの、変わってはいけないものの優先順位はきっと人それぞれなんだと思います。
でも、時間を止められないように、僕らが子どものままでいたいと思ってもそうはいられないように、世の中や社会が変わっていくことも人それぞれの状況や心情が変わっていくことも止めることってできません。
つまり、何かが変わっていくことって必要なんだと思います。
多分これからも葛藤をし続けながら選択をしていくんだと思いますが、変わらずに守りたいもののために変わりながら進んでいくことは避けられそうにはないので、「変えちゃいけないものは何なのか」ってことだけは見誤らないように選んでいかないといけないな、と思います。