集まって、生まれるもの
最近、異分野や多分野、多機関が参画するカタチでの活動が増えてきました。
むしろ事業所単体、同分野だけで何かを生み出す、という事は少なくなりました。
理由は、ひとつの事業所やひとつの法人で生まれるものはスケールしにくいからです。
通常の稼働以外の事を行おうとした時に、マンパワーや時間などに新たなコストが集中して発生します。
僕らのような業態、特に制度報酬など限られた資源で回してるところは「かけられるコスト」がボトルネックになります。
さらに似通った分野では、視点が一面的になりがちになり、持ち寄る意見や発想、スキルも知識も新鮮味がないので、化学反応が起きにくくこじんまりとしやすい。そしてひとつの団体や事業所だけの活動は、発言力などに偏ったパワーバランスが生じやすくなります。
なので余計に「かけられるコスト」のボトルネックの影響を受けやすくもなります。
僕らのような小さなチームでいろんな活動を展開していこうと思うと、自分達だけの体力で動こうとすると余計にかけられるコストの制約を受けるので本当に活動のスケールが小さくなります。なので必然的に自分達だけでなんとかしようと思わないようにしています。
組織などの継続性のあるチームを形成していく時であれば、ある程度コストが固定的に定まり、かけられるコストの枠の中で意思統一と相互理解を深めるために視点を集約していく事はメリットになるので、是非の問題ではなく活動の目的に応じて、というのがいいんだと思います。
話を戻しますね。
異分野、多分野が関わり合う、むしろ福祉以外の分野も交えて何かに取り組む事によって、やれる事が圧倒的に広がります。今まで出来ると思わなかった事が急に前に進んだりします。
僕らの業界、つまり福祉という業界の中でも実は結構分野は分かれていて、普段見ている景色が大きく違ったりします。
それぞれの普段のフィールドが違っていて、実は同じものを全く裏側から眺めていることが分かったり、一見すると全く畑違いのところにいるような気がしていたものが、ディスカッションしていく中で掘り下げていくと同じ水脈にたどり着いたりするような現象が起こったりします。
テーマだったり課題意識だったりをキーにして、共通言語を探っていく中で思いもよらない発想やアイデアが生まれる事があるわけです。
普段はそれぞれ全く違うフィールドで全く違う活動をしているからこそ「発想の想定」がつかないんです。だからこその賜物があるというわけです。
そのため、結果的には0→1が起こりやすくなります。
でも、ただ異分野多分野多機関が集いさえすればそれが起きるのか、というとどうやらそうでもなくて、属性的に「保守性」が強いタイプが集まると難しいです。
保守性が強いというのはつまり維持力の高さに長けている、ということなので、現状からズレることに積極的にはなりにくいため、せっかく集ってもそれぞれがそれぞれの現状を守ろうとする作用が強くなるので、難しいです。
多分「柔軟性」を持ったタイプが集う方がよりインパクトのあるアイデアを起こすことができるんじゃないかな、と思います。
そしてもう少し条件があるような気がします。
いわゆる「リーダー」という存在よりも「ハブ」みたいな存在が必要なんじゃないか、ということ。
大体いろんなところからいろんな人が集まっている中で「リーダー」というような概念は少し当て嵌めにくいような気がするんです。
ファシリテーションは必要なのかもしれませんが、そもそもコミュニケーションを交わしながらアイデアを膨らませていくので、むしろとっ散らかっている方が面白いものは生まれそうな気がします。
ただ、何もないところに急に人は集いません。
必ずそこにいろんな要素と繋がっている「ハブ」のようなタイプの方が必須なんです。
そして次にそれぞれにとっての報酬設計されてなければいけない、ということ。
報酬というのは必ずしもお金に直結しているわけではありません。
むしろお金の問題を先に持ち出してしまうと、冒頭に話した「かけられるコスト」のボトルネックを生み出すことになるので。
ただしもちろんマネタイズの問題自体は検討しなければそもそも継続可能性のある活動にならないので、必須です。
ここでいう報酬、というのはお互いにどのようなWinを設計するか、みたいなところです。
ちなみに今、障害を持たれた方のための婚活支援を手がけていますが、僕ら福祉側や当事者側のWinは、
①当事者の人生の中に選択肢が出来流、という価値
②福祉と営利企業が繋がって、共同して新たなインフラを生み出している、という価値
③これがきっかけになって、いろんな「使い方」をされたり、違うインフラが生まれる余白ができる
というところ。
対して企業側のWinは、
①自分達の新しい仕事が生まれる
②社会的意義のある企業活動としてブランド力が上がる
③自分達の認知が上がる(宣伝広報的な効果)
という感じです。
あくまで報酬の設計「から」始めるわけではありませんが、何か活動をやる上では自分達にとっても得るものがなければ動機が生まれにくくなります。
きちんと考えておく必要がある事だと思います。
自分達だけで普段活動していると、どこかでスケールが止まってしまいそれ以上の事がなかなか出来にくくなる、というジレンマは多かれ少なかれ感じることがあると思うんですが、いろんな分野と繋がりに行く事って全然無駄なわけではなく、そこから新しいものが生まれるきっかけになったりするので、自分の分野の中だけじゃなく、少しでも関係しそうなフィールドにはしっかり目を向けておくといいかもしれません、という話でした。