茨文字の魔法 パトリシア・A. マキリップ (創元推理文庫)
P.A.マキリップの秀作。独特な世界を描く一冊といえる。
14歳にして、突然父である国王の死によって、女王となるテッサラ。魔法の森にある「空の学院」で学ぶボーン。孤児として王国の図書館司書として未解読の文字を読み解くネペンテス。3人が織り成す不思議な物語。
ことの発端は、ボーンが不思議な茨文字でかかれた本をネペンテスに託すところから始まる。それは、古代の伝説の皇帝アクシスと、彼を支えた魔術師ケインの物語だった。読み解くにつれ、ネペンテスはこの茨文字の魔法に取りつかれていく。一方、王国の重荷に耐えかねるテッサラが見つけたものは?
とにかく、マキリップの語るファンタジーは読後感がたまらない。この本も予測できない結末で一気に持っていかれた感触でたまらない。なんと言おうか、構築された架空世界に「おきざり」にされた感触が残るのだ。夢に見そうな感じといえばよいのだろうか。
それから、私の好みである図書館の描写、本の描写がすぐれもの。ネペンテスが依頼をうけて訳している魚文字の本も目に見えるよう。また、「空の学院」や森の魔法の描写、テッサラのさまざまな描写が文字通りファンタジックである。いろいろ書きたいことはあるが、ひとつ確実なことは、P.A.マキリップのベスト3に入る傑作だったこと。
さすが、早川ファンタジー文庫の第一冊目を飾る作家である。恐るべし。
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その発想・アイデアは、どこから来るのだろう。そして、そのアイデアを物語に仕立てる筆力に感謝しかない。なんとも言えぬ味わいの本だった。