人形のすきな男の子 コロボックル童話集 佐藤さとる

 コロボックル童話集から一編。ちょっと風変わりなお話のご紹介。
 竜也は四年生。でも六年生の仲間に二年生から入っている腕白坊主である。ところがこの一週間、こそこそ逃げ回っている。それは・・・。
竜也と、小さな人の人形を巡る小さなお話。
この話、他のコロボックルのお話と違い、コロボックルはおまけ程度しか出てこない。どちらかというと、「わすれんぼの話」や「わんぱく天国」に近い話である。
 まんまと友達にイタズラの罠にはめられた竜也。おかげで仲間と大ゲンカになり、みんなと遊べない状態が続く。そんなある日、「おもちゃ屋」にちょっと頭の大きい変わった人形を見つける。
 この話には、コロボックルの話はほとんど登場しない。コロボックルは、なんにもしない。最後に感想をちょっと述べるだけである。もっぱら竜也と友達の関係を丁寧に描写したお話といえる。まあ、コロボックルが登場しなくても、そこは佐藤さんの作るお話、ストーリーは展開し、お話は思ってもいない方向に走る。最後には、ほっとさせて終わるのだが、さすがにうまくまとめてくれた上、なにか懐かしさを感じさせる情景を映して見せてくれる。「ああ、こういうことあった、あった」とうなずかせる、その筆運びは感心するばかり。短いお話ではあるが、読んでも損はない、そんな短篇である。

 そうそう、コロボックルファンにはおなじみの、オチャ公が先輩として登場するのも一興である。未読の方は、「コロボックル童話集」を手にとってみてはいかがだろうか?

===

 本に対して、ついつい、意味を求めたがる。意味にも多種多様なモノがあると、佐藤さとるさんの作品は教えてくれる。人によって、解釈や受け取り方も千差万別なのだという事も。


いいなと思ったら応援しよう!