ジュンとひみつの友だち (その2)
私の実家の近くには、「御祇園さま」という神社がある。そのあたりは20mぐらいの小山になっており、神社の境内からは海岸と山の狭い土地にしがみついた部落が見渡せる。その神社の裏手は、松とその他の雑木(クヌギ他)の林になっていて、中には水晶のとれる場所、粘土のとれる場所、秘密の隠れ家にぴったりの場所などがあり、学校から帰宅したガキンチョの遊びのフィールドだった。
佐藤さんの「ジュンとひみつの友だち」は、そんな秘密基地あそびを彷彿とさせる、一遍である。
がけの小庭にいた「ジュン」、彼方に見える鉄塔に向かって「こっちへこい、腰掛けさせてやるぞう」と呼ぶ。と、そこに「ジュン」とおなじくらいの少年「蜂山十五」が現れた・・・
この作品、ふしぎに「佐藤さんの作品の中でも好きな一遍」にあげる人が多い。コロボックルの次に多いのではないか・・・と思う。どうしてだろうか? 私なりに思うには、この作品には、誰にもある「聖域」が、封印されることなく解放されて存在するのだからではないか?と、考えるのだ。
「蜂山十五」というふしぎな友だちとの交流を縦糸とすれば、ジュンの生活の描写は横糸になる。その様子のいかにキラキラ輝いていることか!!小屋をつくる様子などは、もう「うらやましい!」の一言だろう。ジュンを取り巻く家族の描写と、その位置付もはっきり書き込まれていて、おもわず引き込まれる。(ああ、ジュンのお父さんのようには、なれんなぁ・・・(自戒))
思春期にはいる一歩前の、わくわくした毎日。「今日はなにしようか?」と考えながら、帰宅したものだ。秘密基地を作るために、竹を切り出している所を見つかって怒鳴られたり、小川にダムを作って田んぼの畦を崩壊させかかって、あわてて修復したり、今思えば「ダイアモンド・デイズ」である。ジュンも、作りかけた小屋をとばされるし、雨漏りも体験したようだ。野ウサギを世話したり、キジバトにびっくりさせられたり、自然の中で学んでいる様子が目に浮かぶ。たぶん、佐藤さんの経験を盛り込まれて描かれている様子は、楽しい限りである。
いろいろ書いているが、正直言ってこの話、私が一番好きなのは出だしと最後のミサオ姉さんの話だったりする。この手の話を書かせると、本当に佐藤さんは、うまい。ジェンダーのからむ話を、うまく逆手に取っているのは、さすがに名手である。
===
すでに、「ジュンとひみつの友だち」は上げてあるが、別バージョンをどうぞ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?