熱帯 森見登美彦 文藝春秋
やっぱり森見節、全開の一冊。没入できる語り口と謎の提示が好き。物語はこうでなくてはダメだという見本を提示してくれた。魅力的な話中話と、視点の移ろいが読者の想いを揺さぶってくれる。
作家の森見登美彦は、スランプの中、不思議な古書店で「熱帯」という本を買う。夢中になって読む彼だが、読みかけの本は枕元から消えていた。その本の話を知り合いに話すと、「沈黙読書会」なる会に誘われ、「熱帯」を知る人に遭遇する。その人も全部は読み切れずにいた・・・
謎の作家・佐山尚一、千夜一夜物語、不思議な古書屋台・「暴夜書房」、飴色のカードボックス、謎の集団「学団」・・・
語り手は、バトンをつなぐが如く渡され、舞台は異世界に渡る。読者は仰天する間もなく森見さんの筆によって翻弄され、物語の波に洗われていく。段々ついていけなくなる読者多数の様だが、これぞ森見ワールド。
あなたはこの本、読了できるか。
本好きにはたまらない、一冊。
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本のカバーも美しく、物語に沿っている。その表紙には「熱帯」の本の中身が一部写っているのだが、中身は別物らしい・・・