ねじまき少女 パオロ・バチガルピ ハヤカワSF文庫

 上下巻のうち上巻は、ほぼ世界設定に費やしている。環境が崩壊したあとのタイが舞台。熱気と混沌の世界観が素晴らしい。交互に登場するキャラクタが見事に立ち上がってくる前半は後半への期待感を盛り上げてくれる。
前半最後は、重要キャラクターの戦いでクローズされ、見事に後半へ。

 前半の最後から急激に展開が急になる。ねじまき少女・エミコは北にあるというねじまきの村に想いを馳せるが・・・

 遺伝子組み換えの嵐の中で政治的な対立と人々の葛藤が交錯するし、キャラクターは個々に生きる戦いを繰り広げる。下巻の中盤から終盤は息もつかせぬ展開が畳みかける。謎は残るしヒッカカリの残る終わり方だった。ちょっと期待外れっぽいが、全編に展開される崩壊しつつあるが、たくましく生き続ける世界観は素晴らしい。それだけで読む価値あり。キャラクタは魅力的で個々の人物単位に物語が立ち上がってくる。特にカニヤの苦悩が引き立っていて好感が持てた。物語後のカニヤの活躍を祈る。

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文字通りの「熱気」が伝わる不思議なSF。



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