地域の生活とデジタルな未来を考える〜元財政課職員が作るGovTechプロダクト〜
地方自治体の課題をデジタル技術で解決する―そんなミッションに挑むのが、栁澤美奈さんです。彼女のキャリアは、地方行財政の課題解決に全力を注ぐ一方、実家の農業も手伝うという、二つの顔を持つ独特なもの。その背後にある物語と、彼女が見据える未来とは何か。この記事では、その魅力に迫ります。
行政職員から農業とテクノロジーの架け橋へ
栁澤さんのキャリアは、筑波大学を卒業後、長野県茅野市役所で行政職員としてスタートしました。そこで秘書課や財政課を担当し、予算編成や地方交付税の算定といった、行政の中枢を支える重要な業務を経験してきました。
地方行財政の仕組みを深く理解していく中で、栁澤さんは、最適な財源の配分がいかに難しい課題であるかを実感します。このまま従来のやり方を続けていけば、自治体が疲弊してしまうのではないかという危機感を抱くようになりました。そこで、持続可能な行財政運営のあり方を模索した結果、2023年4月に行政向けSaaS*プロダクトを提供するWiseVineに参画します。これまで行政向けに多く開発されてきたタスク指向型のシステムとは異なる、自治体向け経営管理システム「WiseVine Build & Scrap」の開発に取り組んでいます。
このシステムは、事業の予算から評価までを結びつけ、成果に基づいて優先順位をつけることを可能にするもので、地方自治体が抱える課題の解決に役立つプロダクトです。
栁澤さんのユニークな点は、システム開発に携わる一方で、実家の農業も手伝っていることです。地方の現実の生活とテクノロジーによる未来を結びつける役割を、彼女はまさに担っているのです。
*SaaS:Software as a Service(インターネットを通じてソフトウェアを提供するサービス)の略
自然とテクノロジーが生み出す新たな視点
農業と行政プロダクト開発。一見まったく異なる分野に思えますが、栁澤さんはこれらを結びつける独自の視点を持っています。「農業は単調な面もありますが、実直に向き合う中で地域社会や自然環境について気づかされることが多いんです。その感覚を行政システムの開発にも活かし、本当に必要なものを見極めたいと思っています」と彼女は語ります。実際の地方生活を直に感じることで、現場の目線を持ったプロダクト設計が可能になるのです。
農業とプロダクト開発に共通する「育てる」視点
栁澤さんは、農業とシステム開発には「育てる」という共通のテーマがあると言います。農作物が時間をかけて育つように、行政システムの改善も長期的に取り組むべき課題です。「良い作物を育てるには、日々の手入れと環境を理解することが必要です。行政向けのプロダクト開発でも同じことが言えます。少しずつ行政の現場を理解し、改善を積み重ねていくことが大切です」と、彼女は穏やかに語ります。 彼女の視点には、現場とテクノロジーを結びつけ、街の未来を見据えようとする強い使命感が込められていると感じます。
農業とデジタルの未来を見据えて
多くの自治体でDX推進が求められるなか、彼女が農業を通じて得た地域社会への課題意識と行財政運営の現場で培った経験は、本質的に価値のあるプロダクトを生み出す力となるでしょう。システム活用による業務の効率化を進めつつ、地域と行政の距離を縮めるためにプロダクトの方向性を模索し続ける彼女の姿勢は、まさに現場とテクノロジーを結びつけ、地域社会の未来を切り拓いていくものです。
かつては、家族を手伝うために地元に戻ったと語る栁澤さん。しかし、今では彼女は強い意志を持ち、自らの手で地方の未来を形作ろうとしています。地方とデジタルを結びつけ、新しい挑戦を続ける彼女の成長と変化。そのプロセスこそが、栁澤美奈さんの魅力であり、彼女が描く未来への期待を高めます。