18H 1×2変則クロス組リアホイール
自転車好きが高じてホイール (車輪) を何本か自分で作っている。
ホイールは、中心のハブ、外周のタイヤを取り付けるリム、ハブとリムの間を接続するスポーク、スポークをリムに固定するニップルから成り立っている。
自転車は軽さこそ正義であり、また空気抵抗は低ければ低いほど良いという風潮がある。ホイールにあってもこの風潮は当てはまり、スポークの数はできる限り減らしたいし、長さもできる限り短くしたい。ただし、スポークの数を減らしすぎると剛性が低下してしまうし、細かな調整ができなくなるため振れを取るのも難しくなる。スポーク長を短くするには、ハブとリムを結ぶ距離を縮めれば良いが、ラジアル組というハブからスポークを放射状に伸ばす、最短距離で結ぶ組み方をしてしまうとトルクに対して弱くなる。つまり、スポークの数を過度に減らしてしまうと壊れやすく乗り心地も悪くなる。軽さや空地抵抗の低さと、強度や乗り心地とは、トレードオフの関係にあるのだ。
ところで、日本で有名な自転車競技といえば競輪だ。他の競技と同様、競輪でも、公平性や安全性の観点からレギュレーション「競走車安全基準」が存在している。自転車好き、特にピスト乗りの間では、NJS (日本自転車振興会) 規格として知られている。この規格において競輪に使用可能なホイールは、以下のように定められている。
この規定によりNJSの認可を受けたハブには、スポークを通すための穴が通常36個開いている。規定上はスポーク数をもっと増やしても良いのだが、先の通りスポーク数は少なければ少ないほどレースを有利に進められるので、36個を超える穴を携えたNJS認可ハブは、ほとんど存在しないようだ。
NJSの認可を受けた製品を使った自転車に乗ることは、ピスト乗りにとってステータスと言って良い。競輪は固定ギアの自転車、ピストの最高峰であるのだから当然だろう。しかし、規定通り36本ものスポークを使って組んだホイールは、必然的に重く、空気抵抗も大きくなる。競技のために必要な剛性を確保するためには必要な数かも知れないが、街乗りで使うには、その剛性は過剰かも知れない。例えば、ロードレースで使用されるホイールのスポーク数についてUCI (国際自転車競技連合) の規定では、最少12本と決められている。
一般的な36H (ホール) のNJSハブを使って軽量なホイールを作るには、どうしたら良いか。最も簡単なアイデアは、リムの穴をひとつ飛ばしにして18Hハブとして使うか、ふたつ飛ばしにして12Hハブとして使うかのどちらかだろう。ちなみにスポークは、基本的に左右の2本1組を1セット (4本で1セット) として設計する場合が多いため、スポーク数が4の倍数になっているホイールが多い。つまり18Hのホイールはイレギュラーといえる。特殊なホイールは存在するが、リム穴とハブ穴が共に等間隔に開いた一般的なパーツでは、後輪にかかるトルクをバランス良く受け止められるホイールは設計しづらい。
ホイール組の専門家であっても、18Hのホイールの作成には手をこまねいているようだ。
のむラボ日記の提案している組み方は下記の図の通りだ。
前置きが長くなった。ここからが本題だ。のむラボは、2つしか解法が無いというが本当だろうか。図を眺めていて思いついたのが、次の図の「1×2型」だ。
この組み方ならば、ラジアル組を挟まないので、XI型よりも強度を上げられると想像できる。スポークテンションのバランスも改善できそうだ。
実際に組んだ場合のイメージ図も描いてみた。
ハブ側から1回目のクロス部分が窮屈な気もするが組めるような気がする。どこかのメーカーから売られていても良さそうなのに、この組み方のホイールは、自分の探し方では見つからなかった。また、1×2変則クロス組を試してみたという情報すら無いようだ。
エッシャーのだまし絵のように実在できない組み方なのだろうか、それとも強度に問題があるのだろうか。専門家ではないので詳しくは分からないが、いつか挑戦できればと思う。