イッヌのきもち
猫が一番好きだけど、動物全般好きで、最近は犬がよく寄ってくる。
三匹のイッヌと束の間ふれあったときの話をしよう。
先日とあるギャラリーに個展を見に行った。そこのオーナーさんが愛犬を連れてきていた。大病をして術後安静にしているところで、少し元気がなかった。途中から姿を現してくれて、離れたところで向き合ったとき目が合った。するとトコトコトコと一直線にこちらに向かってきて、膝の上に乗ってきて丸まって寝た。
温かくやわらかい生命体。だいぶおじいちゃんのダックスフンド。
「抱っこしてやさしく撫でてー」
周りではちびっ子達が遊んでいて、私がイッヌを抱えているものだから、わいわい寄ってきて、平和なひとときだった。
昔から犬や猫とコミニュケーションはごく自然にとれていると思う。
散歩中のお犬様ともすれ違うとき軽く会釈するのだが、みなさん方向転換して寄ってきてくれる。飼い主さんに「あら、ごめんなさいねー。」とよく言われる。
今年の夏はアスファルトの照り返しがとても熱かった。
炎天下に散歩され中のダックスフンドからSOSを出されたときがあった。飼い主さんに様子を伺い、飼い主さんも今日は様子が変なんですよ!と心配していたのでクーラーの冷気が流れ出ている軒先の日陰でクールダウンしてもらった。
「熱いよーやばいよー」
訴えるような目が真っ赤で泣きそうな顔をしていて、地面に近いし素足だし、いたたまれなかった。熱中症みたいだったので、冷やして水も飲ませた方がよいかもと飼い主さんに聞いてみたけど、大丈夫とのことで先に進まれた。
炎天下に犬の散歩をしている人間のお方は、たまたま今日は日曜で休みだったからみたいな方が多く、スマホ片手に歩いていたりして、あまり犬の方に意識を向けていないように見うけられた。一部分しか見ていないし偏った見方かもしれないけど。
動物は喋れないし、とても我慢強い。
散歩は好きで必要だけど、人間の方が時間帯を夕方や早朝などに選ぶことはできるかもしれないし、同じ目線にたって灼熱の感覚を想像してほしいなと、いや想像ではなく一度裸足で歩いてみてほしい。
私はただすれ違う他人だけど、彼らが健やかでいてくれることをひそかに願っている。
今日は仕事帰りに信号待ちをしていたら、なぜかすぐ後ろに、横断歩道を渡り終えた散歩中の大きめのコーギーがペタンと座った。
飼い主さんは「一緒に自分も座りたいのだろう。」と笑っていた。コーギーは疲れた様子というよりは、機嫌よさそうに座って穏やかで優しい表情でこっちを見て何度も挨拶してくれた。
私の方がお疲れモードだったので、癒しに寄り添ってくれたのかもしれない。
信号が青に変わるまで飼い主さんと共に立ち話をした。
「ぼくもここでみんなと座るー」
「まだまだ暑いですねぇ。」
「やっぱり日が暮れてからしか散歩できませんよねぇ。」
青になったので挨拶をして私は前方へ進み、コーギーは別の方向にまた歩き出した。
不思議な偶然で、ほんの1分くらいだったが、コーギーさんたちは横断歩道を渡る必要ないのに一緒に信号を待ってくれた。やっぱり最近イッヌが寄ってくるなぁと実感した。