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古い音楽の話 骨レコードとか敵性音楽とか

ガガ&ベネットの「チーク・トゥ・チーク」

10年くらい前の話ですが、メロディは知っていても曲名は知らない歌が、いきなり耳に飛び込んできました。
歌っていたのは、レディ・ガガとトニー・ベネット。「チーク・トゥ・チーク」というタイトルでした。
この曲、原曲は相当古い曲です。クロード・ルルーシュ監督が撮った、第二次大戦頃を舞台にした映画でも使われており、私はそこで知りました。いい曲だと思っていましたが、ずっと映画の中だけで聴いていました。

ちなみに「チーク・トゥ・チーク」が入ったガガ&ベネットのアルバム(2014年)は当時かなり売れました。
思わぬところでフル・コーラスで聴くことができ、溜飲を下げた記憶があります。
調べると、原曲を歌っていたのはフレッド・アステアで、1935年頃のリリース。ドリス・デイやエラ・フィッツジェラルド(&サッチモ)も歌っている、実はわりと有名なスタンダード・ナンバーだったみたいです。

聴かれ続けた曲の価値とは

1935年…。その後の10年は、第二次世界大戦の終結まで、残酷なことがたくさんあった時代でした。

そのような時代でも聞かれ続けた、曲の良さって何なのだろうと考えます。

現代のポップ・ミュージックの誕生は、おそらくレコードの出現と同時で、最初のジャズレコードの発売が1917年ですから、すでに100年以上がたっています。

その間に、世界は驚くほど変化してきました。
そんな中で無数の流行り歌が生み出され、そのうちのいくつかは時代の壁を超えて現在も聞かれ続けています。

禁止された音楽たち

かつてソビエト連邦では多くの音楽が禁止されており、使用済みのレントゲン・フィルムに音楽をプレスした、非合法のレコードがひそかに出回っていました。
盤面に骨が映っているので、「肋骨レコード」などと呼ばれていたそうです。1960年代以降カセットテープが主流となった後は、自然と消滅していったようです。

ソ連が崩壊した直後、あるモスクワ市民が家の隅に埋もれていた、そんなレコードを聞き直す映像を見た記憶があります。
曲は「ベサメ・ムーチョ」でした。ようやく聞き取れるくらいのかすれた旋律を聴きながら、その男性は涙を流していました。

「この世界の片隅に」のアニメ版で、傷病兵が病室で蓄音機に耳を付けるようにして、敵性音楽として禁じられていた「ムーンライト・セレナーデ」を聴いているシーンが印象に残っています。

この先、もしも世界がおかしくなったとしても、
音楽を聴くことは諦めたくないと思います。


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