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宇宙強盗団 「ONU」(1059字) │ 特撮ショート

 強盗団といえば、ありとあらゆる金品、煌びやかなものを行く先々で奪う。そんな印象が大概だろう。だが、そういったわかりやすい輩は、すぐ消える。

 息が長いのは、効率を追求した商売ができる奴らだ。奪うもの、奪う相手、奪い方。どの要素も考え抜かれている。これから話す「ONU」という一団は、そのいい例だろう。

 やつらが盗むのは、向かう星々にいる子供達のポジティブなエネルギーだ。喜びや期待、自信といった感情を、母艦に取り付けられた特殊な機械から発せられる電波を通して増幅し、採集している。

「いつもより相当早いペースだ。この星のガキどもは、よほど甘やかされているのだろうな」

船内に下品な笑い声が響く。

「採取量、エネルギー密度共に、あっという間に目標値を越しやがった。百二十パーセントだとよ」

「よし、撤収だ。この前みたいに迷彩を切るなよ」

巨大な母船は透明なまま、ゆっくりと踵を返し、また別の星に向かっていった。船長の好みで、この船は真っ赤に塗られ、二本の大きなツノような装飾が施された派手な見た目はやけに目立つ。

 この集められたエネルギーは、アジトにある精製機でより純度が磨かれて、四つのサイズに分かれた保管用の大型タンクに充填される。これらは主に、あらゆる原動機で使う燃料として、顧客に売られていく。

ここ数十年で宇宙進出は進めた星は多いが、それを支える数多の機器は、いまだに電動が主流である。だが、発電に使われる化石燃料は枯渇し、原子力は廃棄物の処理が追いつかない星もまた多い。そこに目をつけたのが彼らだった。

 ONUが開発した燃料は、エネルギー密度がとにかく高く、牛乳瓶一本分ほどで、人工衛星一機が満足に活動できてしまう。場所もとらなければ、場合によっては、顧客先のタンクまで充填に向かえる体制も整えている。一見すると石油会社のような金の稼ぎ方だが、原材料が子供達のエネルギーとなると話は変わってくる。

 原油と同じで、採取量には限界がある。感情を抜かれた子供達は、成人しても元に戻らない健康被害も確認されており、船員はもれなく宇宙指名手配犯だ。

「よし、採集電波を出せ」

 今日も母艦は地球にある日本という国のとある上空に居座り、仕事を始めようとしていた。

 「お頭、様子が変ですぜ。一向にタンクが増えねえ」

 「もっと周波数を上げろ。モタモタするな」

もうとっくに満タンになる時間が過ぎた。焦る船内を横目に、眼下では子供達が母艦に向かって、何か投げている。届く距離ではないが、泣いたり叫んだりしながら、握っているのは豆の袋のようだった。


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