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集人装置 (1202字) │ 特撮ショート

 誰もが寝静まった深夜。

 とあるマンションのベランダで、暗闇からぬうと一人の男が出てきた。ペタペタとサンダルの音だけが響く中、蛍の光のように電子タバコの明かりが明滅し出す。

 しばらくして、ふうと白い煙が夜空に向かう。吸っては吐いてを何度か繰り返しながら、ふと向かいにあるアパートの一室に目をやると、窓にうっすらかかった白いカーテンの奥に、白い光が浮んでいた。光っては、消えて。こちらも明滅を繰り返す。

 その部屋は1階にあり、窓の前にある駐車場と地続きだった。テレビがついているような雰囲気ではない。それを、ただぼーっと眺めていると、手元に振動が走り、煙がもう出ないことが告げられ、男はまた静かに寝床に戻った。

 次の日の深夜。

 昨日と同じように、ベランダで煙を燻らしていると、またあの光が目に入ってきた。すると今度はカーテンの隙間から光が女の体の影を映し出しているのがわかった。うっすらとわかる体の形で、女が立っていることがわかり、男は思わず咥えていたタバコを落としそうになった。体は自分に対して横を向いていて、何をするでもなく、たたずんでいるようだった。

 いつかこちらに気づいてしまうかもしれない。
あまりじっと見続けてはいけないとわかってはいても、視線を動かせずにいると、ぎゅっと握っていたタバコが震え、我に帰る。

 もう戻ろう。男は心の中でそうつぶやきながら、暗い部屋に消えていった。

 その翌日。昨日と同じ時間。

 少し期待しながらも、興奮を抑えベランダへ向かうと、また女の影が見えた瞬間、男はぎょっとした。今度は影が自分の方を向いており、体を少しくねらせている。

「こっちのことがわかるのか」

 いや、こっちは3階だぞ。少し上を向いているようにも見えなくはないか。頭の中で否定と肯定を繰り返しているうち、いても立ってもいられなくなった男は、そそくさと部屋に戻る。急いで玄関に向かい、靴の踵を踏んだまま玄関を開け放った。勢いよく建物を出て、影が映し出されている部屋の前につく。肩で息をしながら、どうしていいかわからないまま立っていると、伸びた影の手が、窓の鍵にかかる。

 数センチ窓が空き、中から明るい光が漏れてきたかと思うと、「あっ」という驚いた声だけを残し、男の姿はもうなかった。

そんな不可思議な現象が起きていた場所よりはるか上空。宇宙空間に浮かぶ一隻の母船の中で、二人の宇宙人が立ち話をしていた。

「どうだ、捕虜の数は順調に増えているのか」

「ああ、あの玉をそこらじゅうの星にばらまいてから、調子がいいよ」

「見た人間の欲求がそのまま映るらしいな」

「そうさ。やつらは虫を集めるのに、光と蜜を使うらしいから、そのまま真似てやったのさ」

艦内に乾いた笑い声が響き渡っていた。


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