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新型コロナ患者が室内を汚染させるのにどれぐらいの時間がかかるのか
空気中のウイルス濃度が定常状態に達していた場合には1分で十分なレベル
Infectivity of exhaled SARS-CoV-2 aerosols is sufficient to transmit covid-19 within minutes.
Sci Rep.2023;13(1):21245.
Abstract
Exhaled SARS-CoV-2-containing aerosols contributed significantly to the rapid and vast spread of covid-19. However, quantitative experimental data on the infectivity of such aerosols is missing. Here, we quantified emission rates of infectious viruses in exhaled aerosol from individuals within their first days after symptom onset from covid-19. Six aerosol samples from three individuals were culturable, of which five were successfully quantified using TCID50. The source strength of the three individuals was highest during singing, when they exhaled 4, 36, or 127 TCID50/s, respectively. Calculations with an indoor air transmission model showed that if an infected individual with this emission rate entered a room, a susceptible person would inhale an infectious dose within 6 to 37 min in a room with normal ventilation. Thus, our data show that exhaled aerosols from a single person can transmit covid-19 to others within minutes at normal indoor conditions.
呼気SARS-CoV-2エアロゾルは数分で室内感染させ得る。
受性のある人は6~37分で感染し得る量を吸入することが判明。
吸入までの時間は、感染力の強い人が入室した場合には6分と短く、
感染者が長時間室内におり、空気中のウイルス濃度が定常状態に達していた場合には1分で十分なレベルだった。
呼気中の、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含むエアロゾルは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速かつ大規模な伝播をもたらした。しかし、このようなエアロゾルの感染力に関する定量的な実験データは不足している。本研究では、COVID-19患者の呼気エアロゾルを採取して感染性ウイルスの放出率を定量化し、通常条件下の室内では呼気エアロゾルが数分で他人にCOVID-19を感染させ得ることを示した。
著者らは、COVID-19発症後2日以内の患者3人から採取した5つの呼気エアロゾルサンプルを用い、TCID50(50%組織培養感染量)により感染性ウイルスの放出率の定量化に成功した。3人の感染力は、呼吸時、会話時、歌唱時のうち、歌唱時に最も強かった。
室内での空気感染モデルを用いて計算したところ、この3人と同程度にウイルスを放出する感染者が通常の換気状態の室内に入った場合、感受性のある人は6~37分で感染し得る量を吸入することが判明した。吸入までの時間は、感染力の強い人が入室した場合には6分と短く、感染者が長時間室内におり、空気中のウイルス濃度が定常状態に達していた場合には1分で十分なレベルだった。
呼気エアロゾルサンプルのRNA濃度は、その感染性に直接関係しないと認識されつつも、臨床現場では感染性や伝播性の代用指標としてよく用いられてきた。なお、本研究での培養陽性検体はすべてSARS-CoV-2 RNA濃度が比較的低く(Ct値範囲:32-38)、最も高い感染性を示したサンプルと最も高いRNA濃度を示したサンプルは一致しなかった。
本研究において、エアロゾルサンプルの培養に成功したのは、感染の初期段階の患者から採取したサンプルだったことが一因である。TCID50値が最も高かったエアロゾルサンプルは、感染力がピークに達し、SARS-CoV-2 RNA濃度が高くなる時期でもある発症日に採取されたものだった。症状発現前後における感染は、COVID-19パンデミックをもたらす重要な因子であり、感染力を予測するには、ウイルス量と発症からの日数を組み合わせることが有効と考えられた。
Dr Hirayama’s Eye-SARS-CoV-2エアロゾルの感染性は発症初期と歌唱時に一番高い- 以前紹介した論文では、エアロゾルの増加と運動強度との関係を調べたが、エアロゾルによる感染性については不明だった(関連記事:呼気中のエアロゾル、高強度の運動で大幅に増加)。今回の論文では、呼気中のSARS-CoV-2エアロゾルの感染性を、TCID50により初めて定量的に検討している点が注目に値する。COVID-19について、「発症初期が最も感染性が高い」ということは、ウイルス量などの観点から既に専門家の間で言われていることだが、改めてエアロゾルの感染性という面からも示された。
やはり、基本は換気やマスク使用が大切ですね。