初恋 第21話
ラメラに、明日の放課後、家に来てと言われた僕は、彼女に負けた悔しさも有ったけれど、自分の意思を遥かに超えて身体が動いたのにびっくりしていた。あんなにジャンプできるなんて。バスケットの勝負をきっかけに彼女にもっと気に入られることを願ったが、負けた僕はそんな立場ではないような気がした。
結局、僕はカッコよく終われなかった。それからあの、僕を呼ぶ声が問題だった。長い間忘れ去っていた嫌な記憶を再び甦らせるそれは、僕に言いようのない不安を与えた。
家に戻った時、ラストがいつもの姿勢で僕の顔を見た。
「残念だったな」
僕は驚いた。
「知っていたの?」
「君の顔を見れば分かる」
そう言ったあと、彼はしばらく目を閉じた。
「惜しかったんだ。最後にあの変な邪魔さえ入らなければ……」
と言いかけて、僕はふと疑問が湧いた。それは一筋の光で。それが闇の空間を駆け抜けるうちに次々と屈折してその度に向きが変わって、最後にそれはラストの緑の瞳に吸い込まれた。
「あれは君がやったの?」
僕がラストに尋ねたその声はとても高かった、どうしてそうなったのだろう、それはずっとラストと話しているから、彼の影響を受けたのだ、田舎訛りの強い人間と友達になると、いつの間にか彼の口調になってしまうのと同じように。つまり僕は人間に聞こえないほどの高音でラストと話すことができるようになっていた。その声を彼が聞いたら、彼はどう反応するだろうか? ラストは目をしば立たせた。
「あれって?」
「最後の二ポイントの時、声が聞こえたんだ。僕を呼ばなかった?」
「さあ、応援はしていたよ」
彼の返事は曖昧だった。彼が曖昧な返事をしたことで僕の疑問は膨らんだ。
「ラスト、改めて聞くけど、君は、猫なのにどうしてそんなに頭がいいの?」
「さあ、人間でも君と違って頭の悪い奴もいるだろう。それと同じじゃない? そんなことより今は、もっと大事なことがあるだろう? ラメラのことが」
「まあ、そうだけど」
「彼女の家に行けるチャンスだよ。明るくて素敵な子じゃないか? 付き合えば?」
ラストは相変わらず頭の後ろに前足を組んだ姿勢で言った。
「勝負に負けたから……」
「勝負なんてきっかけさ。彼女にドーナツを持って来いって言われたんだろう?」
僕は頷いた。
「二人きりになるチャンスだよ」
僕はラストの言葉に少し赤くなった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?