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初恋 第3話

 翌日、朝食もそこそこに、ツアーのメンバーがホテルのロビーに集合した。添乗員は茶髪で褐色の肌の小柄の女性で名前をメアリーと言った。彼女は愛想が良くて、最初に僕に微笑んだから僕はとても気分が良くなった。

小型のバスがすでにホテルの前でスタンバイしていた。今回のメンバーは九人、一週間でケニアの国立自然保護区を巡る。バスには僕達の他に六人乗っていて、夫婦と奥さんの友達夫婦の四人、それに恋人らしき二人がいた。(僕の話し相手になるような子供は残念ながらいなかった。)運転手のジョンも褐色の顔で地声が高かった。

「皆さん、ケニヤへようこそ!……。これから一生の思い出になる別天地へご案内します……。幸い今日は晴れです……」

 話はしばらく続いた。みんな頷いたり、自分のモバイルフォンををチェックしたりしていた。父も母もニコニコして僕を見ていた。だが、僕には気になることがあった。それは話の内容ではなく添乗員の話し方だった。メアリの話ぶりには癖があった。センテンスの終わりになると急に語尾の音程が高くなった。初めは、その部分だけとても速く話すから聞き取りにくいのかな? と思った。耳がキンキンなったから。それは周波数が高い2種類の雑音のようだった。だが、神経を集中して聞いているうち、意味が掴めるようになった。信じられなかった。

「ねえ、こいつら、たんまり金を持ってるんじゃない?」
「そりゃそうさ、だってインターコンチに泊まっているんだぜ」
「ナイロビで一番のホテルよね」
「あの緑の目の学者面した男なんか、ちょっとおだてりゃ、すぐチップを弾んでくれるって」
「そうね、まず、あの子をうまく手なずけて」
「ああ、時間は十分ある」


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