三輪田学園中学国語2024年度第3回（大問二）とってもわかりやすい中学入試過去問の解説
※この解説は、私立中学校からの公認を受けたものではありません。
単なる一個人の見解であることをご承知おきください。
より正確な解説は、過去問題集などでご確認ください。
中学受験国語の成功の極意は、
①できるだけたくさんの過去問を解いて、
②正解の理由をよく理解して、
③何度も読み返して復習することです。
間違えた問題は、本文の正解の理由になる部分に色をつけると効果的です。色鉛筆で問題ごとに色を変えてみてください。
立命館大学准教授・社会心理学者の村山綾先生の著書『「心のクセ」に気づくにはー社会心理学から考える』からの出題です。
村山先生のホームページです。
社会心理学について学んでみましょう。
問１線１のすぐ後ろに『偏見とは、ステレオタイプ（＝ある特定のものごとに対して一般化された、固定的なイメージ）に好き嫌いの感情が伴ったものです。』と書いてあります。
次の4つは偏見です。
イ小さな男の子だからといって、電車が好きとは限りません。
ウ体の丈夫なスポーツ選手でも、風邪をひいたり病気になることもあるでしょう。
エ昆虫マニアには都会で生まれ育った人もいます。
カ背が高くて運動が苦手な人もいるでしょう。
残りの2つは偏見とは言えませんね。
ア確かに、勉強のできるスポーツマンもいますね。
オ確かに、料理の詳しさと性別は関係ありません。
問２Ⅰ『気が利く』細かい点まで注意が行き届いて、相手がしてほしいと思っていることによく気づくことです。
Ⅱ『一貫して』始めから終わりまで変わらないことです。
「大学受験の時、第一志望は一貫して東京大学でした。」
Ⅲ『諸刃の剣』役に立つことと悪いことの両面があることです。
「副作用を考えれば、抗ガン剤は諸刃の剣だ。」
Ⅳ『案の定』予想していた通りに物事が運ぶ様子です。
「過去問を何度も繰り返し解いて、全ての問題を解けるようにしてごらん。ほら、案の定合格できたでしょ。」
問３①２ページ下段の後ろの方に『このプロセスにおいて、膨大かつ複雑な情報を単純化して認識し、処理できれば、それは私たちの認知資源（頭の中でいろいろ考える時に消費するエネルギーのようなもの）の節約につながります。節約した認知資源は、自分にとって特に重要な意思決定について熟慮するために費やすこともできるでしょう。』と書いてあります。
②朝ごはんとして食べられるものは無数にありますが、『パンとヨーグルト』と決めつけるのは、ステレオタイプです。そのおかげで朝ごはんのメニューを考える時間が節約できます。
問４線３のすぐ後ろに『偏見が感情を伴う個人の内的な認知過程（頭の中で起こること）であるのに対して、差別は特定の社会集団に実質的な不利益や利益をあたえる明確な行動として表に現れるものとして区別できるのです。』と書いてあります。
問５①3ページ上段の真ん中より後ろに『本来であれば、結婚や、夫婦の間に子供が生まれた際に、女性医師だけが仕事をやめざるを得ない職場環境や、医師という仕事そのものの過重労働を問題として、それを改善するために動く必要があるでしょう。男性であれば過酷な仕事に耐えられるわけではありません。』と医療現場の構造的な問題が具体的に書いてあります。
②３ページ下段の前の方に『また、医師の過重労働を改善すべく、政府による医師の働き方改革も進んでいます。これらの取り組みによって、短期間ですぐに大きな成果が得られるということはないかもしれません。しかし、より長期的にみれば、医療に携わる方々の働きやすさは、医療サービスを受ける人たちを含む、社会全体の利益につながると期待できます。』と書いてあります。
問６①『りりしい』とは、きりっと引き締まっていて知性が感じられる様子です。
②『浅ましい』品性が卑しくて、見苦しく情けないことです。
⑤『おくゆかしい』上品で慎み深く、心がひかれる様子です。
問７二つの研究について、３ページ下段の後半から４ページ上段にかけてよく読んでみましょう。
第一の研究では『一方の集団の方が能力は高いけれど、どちらの集団も同程度に「温かい」ことを示す内容でした。』
するとその結果は『「能力が高い」と描写した集団ではない、もう一方の集団の方が、より「温かい」と評価されたのです。』
つまり「能力の低い集団はより温かいと、そして能力が高い方が冷たいと評価され」ました。
そして第二の研究では『「温かさ」に関しては、一方の集団がより温かいけれど、「能力の高さ」はどちらの集団も同程度になるような情報を呈示しました。』
すると結果は『能力の高さに関しては、温かさの得点が低い集団の方が、より「能力が高い」と評価されました。』
つまり「心が冷たい集団の方が能力が高い、そして心が温かい集団の方が能力が低いと評価された」のですね。
『この２つの研究から、能力が高いと冷たい、温かいと能力が低いと評価されるという、２つの次元の相補的な関係性が見いだされたのです。』
問８穴埋めの前後をよく読んでみましょう。
『能力が高く温かい集団とは、自分にとっての仲間に分類される人々です。同じ部活のメンバーや、同盟国の人々などがそれに当たります。このような社会集団に対しては、１ や誇らしさといった感情が伴うため、差別につながるような偏見は生じにくいと考えていいでしょう。』ポジティブな印象です。
『能力が低く冷たい集団としては、薬物中毒者や犯罪者が該当します。このカテゴリーに分類される社会集がいとう団には２ や敵意の感情が抱かれやすく、それは侮蔑的な偏見につながります。』ネガティブな印象です。
『能力が高く冷たい集団には、アジア人、ユダヤ人、お金持ち、フェミニストといった社会集団が分類されます。これらの社会集団には、３ 感情が生じやすいことがわかっています。』自分にないものを持っている人に対してのネガティブな感情です。
『能力が低く温かい集団としては高齢者や障がい者、主婦が含まれ、同情や４ といった感情が生じます。』ポジティブな印象です。
問９線７の後ろの段落に『温情主義は、パターナリズム（父権主義・家父長制）という言葉に置きかえ可能です。本人の意志や希望を無視して、その人よりも上の立場にいる人たちが、良かれと思ってあれこれと勝手にその人の行動や将来を決めてしまうことを言います。』と書いてあるので、これをまとめます。
問10広告の問題点は５ページ下段の後ろの方に『若い女性は料理に失敗する＝能力が低い、というステレオタイプ的描写が含まれていると考えられるのです。加えて、結婚したら料理は女性が作るのが当たり前、という伝統的性役割に基づくステレオタイプ（規範的ステレオタイプやジェンダーステレオタイプと言います）も含まれているかもしれません。』と書いてあります。
問11A『これがまさに、温情主義的偏見に気づきにくいポイントです。』と『この２人に限定した個別の関係性（Ａさんの失敗をＢさんが慰めている）においては問題ありません。』が対立する関係です。
B前後で『個別の関係性』と『社会集団の関係性』と逆説になっています。
C『少し違った見かた』をわかりやすく言い換えた内容が後ろに続きます。
D『料理の経験が浅ければ、男女問わず失敗する機会は多くなるでしょう。』推量の接続詞です。
問12『不利益』になっていないものを選びます。
イで、男性が専業主夫になって、女性がバリバリ仕事をしてお金を稼いでも、社会全体の不利益にはなりません。
問13差別を防ぐ方法は、6ページ下段の真ん中より少し前に『そこで、差別は良くないという社会規範を醸成する（＝つくりだす）コミュニティレベルでの取り組みや、差別の抑制を目指した社会制度の出番です。差別が許されない「状況」に取り囲まれることで、発言をコントロールできるようになる人たちが増える可能性は高まるでしょう。』と書いてあります。
問14線11の後ろ、7ページ上段に書いてあるように、息子さんはホームレスから人種差別的な言葉を浴びせられても『「あの人何？」と、何が起こったのか、よくわかっていない様子でした。』が、それよりもむしろ『いい人たちもいっぱいいたね』と『機内でトイレを譲ってくれた人、スーパーマーケットでハイタッチをしてくれた店員さん、テイクアウトのハンバーガーができるまでにこれどうぞ、とポテトがたくさん入ったカップを渡してくれた店員さんと、優しくしてもらう経験をこの一件の前にたくさんしてい』て、よく覚えていたのです。
問15線12のすぐ後ろに『でもおそらくみなさんは、これまでの経験や知識などから属性情報を頭で補ってその場面をイメージしたのではないでしょうか。』と書いてあります。確かに、人種や髪の色など、私たちが一般的に想像するアメリカ人のイメージがありますね。
問16最後の段落に『自分とは異なる社会集団の存在を早い時期から知り、また、そのような社会集団にも多様な人たちが存在するのだと理解する努力をこつこつと続けていくことが何よりも大切なのではないかと思います。』と偏見や差別の問題を解決するために、大切だと思われることが書いてあります。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
これからも頑張ってわかりやすい解説を書いていきます。
受験生の皆さんも問題の文章を繰り返し読んで読解力を身につけてください。
合格をお祈りします！
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