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誰もいない家に帰り、部屋のドアをバン!と閉めると

何で本名なんてあの女に伝えてしまったんだろう。

Billyとだけ名乗れば良かったと後悔した


あの中年男が本当にペドなのかは知らない

ただ孤独で仕方なかった

だからあんな会へと毎回出掛けて他人の不幸な話を聞くことで


自分だけじゃないと言い聞かせて

これまで何とか乗り越えてきた 

窓を見ると、雨はかすかにまだふっている


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ぬれたTシャツが気持ち悪く、着替えた

寒い。。寒い。寒いよ。

自分の事を知らない誰かに無性に抱き締めらたい

いや違う、逆だ

こう言われたい

あなたは大丈夫じゃない

大丈夫ないって知ってるから、無理に強がる必要はないと

そんな誰かに抱き締められたい

言葉でツタエナクテモ

分かる誰か

そんな存在がいてくれたら

こんな世界でも乗り越えられるかもしれない


下がうるさい

母親が帰ってきたらしい

Jeremyいるの!!?

やめてくれ、その名前で呼ばないでくれ

Billyは限界だった

なんだ、いるんじゃないの

母親の目には何の感情も浮かんでいない

こんな時間まで何処へいっていたのか

土砂降りで濡れた服は地面に落ちてるのに気にもしない

息子は道具と同じだ

濡れた黒髪から雨の滴が垂れる

何か食べる物ある??
冷蔵庫空っぽだわと毎日同じ台詞

もううんざりだった

プツン

Billyの中で何かか壊れた


あーーーーーーーー!!

大声で叫ぶと

Billyは部屋の物を片っ端からベースボールバットで叩き壊しにかかった

タンスも

わーーーーーーー!と叫びながら

高校の連中にからかわれ、マットレスです巻きにされた事を思いだし、ベッドをそいつらだと思い、叩き壊した


無我夢中だった

気がつくとぜいぜい言いながら

ベッドの端に倒れ込んだ

放心状態で母親を見上げると

それ全部あんたが修理するのよ

母親は無表情のまま、階段を降りていった

Billyは気がつくと泣いていた

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普段は泣けない

痛みが強いと

人は泣けないのだ

それを知ってる人は少ない

もうここには居られないと少ない服や持ち物をリュックにつめた

Billyは小柄なせいて幼く見えるがもうすぐ17才だ


取りあえず、ここ数年で何とかバイトして隠して貯めておいた貯金を確認すると、845ドル。

ほとんど家にお金を入れてくれない、働かない母親の代わりに、Billyが精一杯稼ぎこの家の事を父親の役割としてしてきた。

ここ数年間その中でやっとこつこつと貯めたお金だった


映画のような世界は現実には存在しない

現実世界では


両方の親が親と呼べない糞

血だけの繋がりということもあるのだ

Billyの母親は17才という若さでBillyを産んだ

未婚のシングルマザー

母親は幾つもの話をした

父親がいかに素晴らしかったか

では何故ここにいないのか?

母親の話はいつも変わる

変な薬を飲んでる訳ではない

母親は本当におかしいのだ

町でも変な女呼ばわりされてる

母親を不憫に思う感情は

母親から全く愛情を感じず、馬のように働かされる中で消えていった

なのに愛されたいとも思う

それは母親にか

それと誰か別の存在にか

それは分からなくなっていった

愛憎と呼ぶには混乱している

Billyはよろよろと立ち上がると

まだ間に合うかも

夜道を窓から眺めながら

階段をだっしゅで降りると

またスケボーを元の方向へ一気に走らせ飛び乗ると闇の中へ消えていった。