Leesについて
読者の方へ。
(本編の作品、現在連載三回目全て含め、キャラクター達が聞いたり本編の場所で流れる曲のリンクが導入されています。クリックし聴きながら読む事をお勧めします。読者の方はクリックをお忘れなく。それではどうぞ本編をお楽しみ下さい)
いつもこの名前で呼ぶように出会った人にはいう。
もっとも新しい人と知り合う事はほとんどないが。
本名が好きじゃないからリース。
ストロベリーヘアーにそばかすのある蒼白い顔は健康でも貧血だと思われ
あなたもっと鉄分を取るのよなんて言われる
そうね。そうするわ。
面倒だからそう答える。
ただ痩せた自分の体は好きになれない。特に夏はサマードレスなんて着てると、それが目立つ。
朝の6時半。鏡の向こうには年寄り老けて見える不健康そうな目の下には青黒いクマの女がこちらを見つめている。
洗顔をすまし、髪の毛をとかし、グレイの膝丈まであるノースリーブワンピースにさっと着替える。
シンプルだが、真ん中には羽が生えた女性が浮いたまま眠っている姿。
お気に入りの古着だ。
カウボーイブーツ👢をはいて、ネイティブアメリカンから貰ったお守り、ラッキーチャームを首からかける。
Skin and bones.
骨と皮
なんてから昔からかわれてきた。
食べても太れないだけだけど。
リースはある出来事以来、外に出るのが怖くなり、仕事が出来なくなってから随分立つ。
ソーシャルワーカーが時々訪問する。
あなたならまた社会に復帰できるはと言う。
パソコンでも使って家で何かしてみたら?
パソコンは簡単な操作しかできないわ。
何をグズグズしてんのよという目付きで、ため息を疲れた。
シングルマザーで四人の子供を抱えて育てあげた彼女からすれば、リースは自堕落な負け犬に見えるだろう。
いつも子供の話を聞かされ、その度、あなたみたいな元に産まれ育った子供は幸せでしょうね。。
と言うと満更でもない顔で、あなたもそうなれるわよ!という。
げっ、冗談じゃない。
子供は昔から苦手だ。
地味なグレイスーツに似合わない、キツイ香水と、塗りすぎのファンデーションを見てると吐き気がして、タバコを吸いたくなる。
実際、小うるさい彼女に隠れて、吸ってはいるが。
気づきもしない愚鈍な中年女。
Weedはヤらない。
単純にハイになれないからだけど。
毎日、これといってする事もない。
働けないのには理由がある事をみんなは理解してくれない。
貧血気味でも仕事は出来るんじゃないの?
社会の恩恵を受けてる癖にという目付き。
理由があるのだと説明するのも時間の無駄。。
これといって仲の良い友達もいないから、暇潰しといっても壁に話しかけたり、おかしくなりそう。
家にこもりっきり、tvはつまらないから見ない。
代わりに
繰り返し観てる
Baise Moi フランス映画。
二人の女性の逃避行。
出会うべくして出会った二人は沢山人を殺しまくるが、シリアルキラーと呼ぶには何か違う。
男性優位な社会の理不尽さに愛想をつかしつつ、自己中な女共にも腹を立てている。
が、無関係な女性も殺す。
二人とも搾取されてきた、社会にも家族にも。
暴力、性暴力。。。そして暴力。
二人が踊るシーンが好き。
そして爆笑するシーンも。
繰り返しみたし、サントラも何百回も聴いている。
フランス。。実際にそこを訪れ空気を吸ってみたら。。どんな感じたろうか。
きっと、この小さな町から出る事さえ私には難しい。
みんながみんな噂をしてそれを酒のネタにして生きてる反吐が出るほど嫌い町
現状を打ち破れない悔しさと孤独におかしくなりそうになる。
絶望と釘で打ち付けられたような乾いた痛み
麻痺した感情
そして、時々空想の中で現れる誰も知らない自分の狂暴性にぞっとする。。
お茶を沸かし、ベルガモットティーを作ると。
それを飲みながら、
パラパラと意味のないゴシップ雑誌をソファーに寝転びながら見る。
途中のページで、ビキニ姿のブロンドの女性が挑発的かつ感情のない何とも言えない表情でこちらを見つめている。
彼女は幸せかしら?とふと思う。
(誰が分かると言うのだろう?)
香水の広告。
最後のページまできて、掲示板のコーナーにいきつく。
寂しい奴らが集まり、でも結局はやりたいだけの男とそれにタカる女とカモラレル女と寂しくてどうにかなりそうな女
そう私みたいなどん底にいる女
記載されたメールアドレスにあなたの今の気持ちを書いて送ってくれれば、それを私達が届けます。
次の号に私のが載るてわけ?
リースとみんなが呼ぶからリースで。
職業は不動産業。
と書いて、少し盛りすぎたと書き換える。
ウェイトレスよ。隣の市のね。
収入はギリギリ何とか食べていける程度。
退屈な毎日で気がおかしくなりそう。
こんなの載らないわね。とちぐはぐなメールを送信して携帯をすぐ閉じた。
指定する相手の性別の項目は指定しといた。
その後は気が付くと疲れきり、いつの間にか眠りの中にいた。
起きて相変わらず胸の痛みと喪失感を感じる。
玄関を開け、外の木製カウチに座る。
拾ってきた年代物。
タバコに火をつけながらしばらくぼーっとしていた。
変な夢を見た気がする。
ある女と出会い、逃避行の旅に出る。
ただぼんやりとした感じで、女の顔も場所も会話も覚えていない
それなのに何だかとてもリアルでしばし圧倒されていた。
ロメオがいきなりやってきて、私の顔を舐めた。
野良犬。
たまにしか見ないが、時々ふとした瞬間に現れる。
ある時はただ横に座っている。
気がつくとロメオはもういなくなっていた。
タバコを吸い終わりると、しばらく目を閉じた。
あなたと二人なら何でもできる。
きっと無敵よ。
それは大袈裟よ。
ほんとよ?私とあなた。。二人なら。。。ね。
きっと。
睡魔に襲われながら。。そんな情景が頭に浮かぶ。
あなたは誰?
リースはふと寒気を感じて怖くなり、椅子から立ち上がると、部屋の中に入っていった。