父と8歳息子の東南アジア&アフリカ旅行~アンボセリとキリマンジャーロ②~Vol.11
車が到着すると、マサイ族の女性スタッフがウェルカムドリンクとおしぼりで歓迎してくれた。
車の窓から砂ぼこりを浴びた顔を拭くと、おしぼりは一瞬で真っ黒になった。
ロビーエリアを見渡すと、バッファローなどの頭蓋骨が飾ってあり雰囲気を醸し出している。
藁の屋根に暖炉、木のテーブルと椅子。
これぞサファリのキャンプ、という感じ。
ロビーエリアに日本人の男女がいた。
ガイドブックにも載っておらず、自分でwebで探して選んだキャンプだったのでこんな場所で日本人に会うとは思ってもいなかった。
聞くところによると、新婚旅行で世界一周しているようだ。
ケニアの後は南アフリカを経て南米に向かうと話していた。奥様が全て旅程も決めて、宿や航空券なども手配。旦那様は海外に格別興味もなく、ただ文句を言わずついていっているだけです…と話していた。
新婚旅行が世界一周のバックパッカー旅行だなんて、何とも羨ましい。
夕方サファリウォークに行くというので、ご一緒させてもらう約束をして一旦別れる。
敷地内にプールや手作りの遊具があったので少し遊び夕方まで休憩した後、Tom のガイドでサファリウォークへ。
キャンプの門を出ると、ひたすら赤土とブッシュのサバンナが広がる。
辺り一面同じ景色。迷ったら絶対に帰って来られないだろう。
「ライオンが出たらどうするの?」とガイドのTomに聞くと、「これで追っ払うのさ!!」と、持っていたヒョロヒョロの枝を掲げニカっと笑う。
この手のジョークは笑えず不安でしょうがない。
サバンナを一列で歩いていく。
少しして僕は動物のフンを見つけた。
息子の前で、ちょっと格好つけてTom に聞いた。
「Tom、これは何の動物のフンだい? まだ新しいよね?」
「ただの牛のフンだ」
息子に馬鹿にされてケラケラと笑われた。
人間、格好つけるとロクなことが無い。
少し歩くとTomが片腕を広げて、僕たちの歩みを制した。
見るとすぐ近くで数頭のキリンが枝木をつまんでいる。
身体をかがめると肉食動物と間違えて逃げてしまうので、背筋を伸ばしてゆっくり近づくようにとTom が教えてくれた。
ゆっくり、ゆっくり近づく。
これ以上近づくのはマズイだろうと思い立ち止まると、Tomが「まだ大丈夫だ」というゼスチャーで手招きをする。
更に近づいていく。
キリンもさすがにこちらを気にし始めた。
その距離 約15m。
Tom が更に一歩踏み出すと、キリンの群れは踵を返し素早く走り去ってしまった。
存在感を感じさせる壮大なキリマンジャロを背に、鮮やかな夕日を浴びながら枝木をついばむキリンの姿は美しかった。
Tom は自分の生まれたマサイ族の村にも連れていってくれた。
マサイ族の伝統的な家も見せてくれたが、おそらく観光用に保存しているのだろう。 Tom曰く、昔は自分も牛フンと土を固めた家に住んでいたが、今はコンクリートの家に住む人が増えてきた、と言っていたからだ。
子供たちは無邪気でかわいい。
女性達は色とりどりの伝統衣装をまとい、凛として美しい。
赤土、ブッシュ、夕日。
それら大自然の存在感とパワーに飲み込まれないように。
もしくはそれらと寄り添いパートナーとして認められるように。
この大自然の中で強く生活していくんだという、マサイ族の女性が持つ凛とした意志がその色使いに表れていた。
キャンプに戻り宿泊者全員で夕食。我々日本人以外に母と子供2人のアメリカ人一家も泊まっていた。聞くと、子供達のケニアでのボランティアプログラムを含め45日間の旅の途中だった。ケニアの前にはドバイ、トルコなどを旅してきたようだ。
息子と同い年の少年は、ドバイがどれほど暑くて辛い土地だったか力を込めて説明してくれた。お姉ちゃんの方は「もうヤダー 帰りた~い」と愚痴っていた。
たくさん歩いた事もあり、疲れたので早めに休みたかった。
コテージはお湯も出て、シャワーも快適だった。
しかし一晩中屋根の上で猿が走り回っていたため、ドコドコと大きな音がうるさくて寝られなかった。
屋根がないテントの方を選べば良かったと悔やむ。
チェックインの時に、猿が多いから気をつけろと言われていた。
しかし深夜の大運動会までは予想する事はできなかった。
息子は横で何も気にせず爆睡している。
とびきりの若さが羨ましかった。
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