父と8歳息子の東南アジア&アフリカ旅行~マサイ・マラ国立保護区へ②~Vol.15
ぼーっと車窓から景色を眺めていると、ジョセフがこちらを見て叫んだ。
「フル・マッサージロードへようこそ!!」
またかよ~と思いながらもアンボセリの経験でその意味は分かっていたので身構えると、次の言葉を聞いて耳を疑った。
「これから3時間続きますが、どうか我慢を!」
えっ、3時間・・・?
あの振動を3時間・・・??
「ジョセフ、30分の間違いじゃない?」
「いや3時間です。ソーリー、この地域は道路が未舗装なんです」
「・・・」
隣の息子を見ると、疲れているのかぐっすり眠っている。
どうかこのまま起きませんように。
ガタガタという振動が始まった。
車が良いせいかアンボセリの時の様なバリバリ、ビリビリという振動音は少なかった。それでも上下左右に続く振動は身体に堪えた。
息子はフル・マッサージロードが終わるまで寝入っていた。
若さとふてぶてしさが羨ましい。
そしてナイロビを出て実に7時間半後、目的地であったMara Siria Luxury Tented Camp にやっと到着。
車は道路から森の中に入っていき小さな広場に出ると、クリスティーンという名の小柄ながらも横には大柄な女性スタッフが出迎えてくれた。
キャンプは小高い丘に作られており、眼下に広大なマサイ・マラ国立保護区を見る事が出来る。その眺めは圧倒的で、見下ろした高原に無数の野生動物が住んでいると思うとワクワクしてくる。
我々が泊まるテントの中にはキングサイズベッド、机、洗面所、シャワー、トイレなど全て付いており豪華だった。とてもテントの中とは思えない。
お湯は使用したい10分前に言えばポリタンクをセットするとの事。
森の中なのでその位の不便はしょうがない。
荷物を整理した後はランチ。
お洒落なテーブルに座り景色を楽しみながらのランチコースだ。
まずは前菜。赤かぶ?? 何か良く分からないがめちゃめちゃ美味い。
その後はスープ、パン、メインは白身魚のソテー、デザート、コーヒー...。
全部美味すぎて夢中で食べてしまい、前菜以降写真を撮るのを忘れてしまった。
サファリに来てこんなに美味しい魚が食べられるとは思わなかった。
相席したケニアに40年住んでいるというドイツ人のお爺ちゃんも、「こんな美味い魚はケニアで食べた事がない!」と驚いていた。
このお爺ちゃん、元々建設関係の仕事でケニアに赴任したが気に入ってそのまま居ついてしまい、気づけば40年経過。しかもそれだけ住んでいても、マサイマラは初めてだと言う。
曰く、「野生動物なんぞケニアならもどこでも見られるから、わざわざ国立公園に来る必要がない」との事。
「ナイロビは大都会だし、ケニアもこの40年でかなり発展したんだよね?」
「かなり変わったな。ただ、アフリカ ・イズ・ アフリカだ。ガハハ。」
五つ子くらい妊娠しているんじゃないかという巨大な腹で、この40年で何リットルのTUSKER を飲み込んだのだろう。40年で辛いことや、大変なことはなかったんだろうか?
絶対あったに違いない。
その都度ガハハと笑い飛ばし、ビールで辛さを流し込んで乗り切ってきたんだろうか。
これぞゲルマン魂なのか。きっとこの巨大な腹は、苦しかった時代を乗り越えた証に違いない。
ドイツ人と言うと気難しそうなイメージがあるけれど、冗談を言っては豪快に自分で笑う愉快な人だった。彼の隣にいた友人のこれまたお爺ちゃんは、インディジョーンズの様な格好で気難しい顔をした、これぞドイツ人という風貌だった。しかしただ英語が分からなかっただけのようで、僕が「ダンケシェーン」と最後に言うと、嬉しそうにほほ笑んで「ダンケシェーン」と返してくれた。
夕方はサファリに出かけた。
マサイマラ・国立保護区は1,840k㎡ 。なんと大阪府とほぼ同じ面積のようだ。
僕らはここを3日間見て回る。
入場料はUSD85、子供はUSD45。保護区内に泊まっていれば少し安くなる。
クレジットカードは問題なく使用できた。
ジョセフはここマサイ・マラで専属ドライバーとして働いていた時期もあり、すれ違う他のドライバーにも知り合いが多く、度々車を止めては話し込んでいた。
中国人観光客が多く、漢字で「〇〇旅行社」と書かれたハイエースを良く見た。最近は中国語を話すケニア人ガイドも増えているらしい。中国人観光客は7~8月の夏季休暇に多く、9月を過ぎるとピタッと来なくなるようだ。
ライオンが見たいという息子のリクエストを、ジョセフは初日から実現してくれた。
横たわった巨木に陣取る小さな群れを発見。
これでアンボセリから通算して、残るビッグ5はサイのみ。
息子のリクエストのライオンが初日から見られて、父としては少し気が楽になった。
日が暮れる前にキャンプへ戻る。
道中、山の斜面を走るシマウマの群れに何度も遭遇した。
猛獣から逃れるため夜は保護区から離れ、山の奥で休むようだ。
キャンプ地が近づきジョセフが「シャワーは夕食前にすぐ浴びたいか?」と聞いてきたので、イエスと答えると、無線でクリスティーンへ連絡してくれた。お湯を準備してくれるようだ。
我々のテントの真横で2頭のシマウマが草をつまんでいた。こちらを見ても逃げない。人間は自分達を襲わないと知っているからだ。そして人間がいる場所にはライオンは近づかない。それもシマウマは知っている。
無線のおかげでお湯のタンクがセットしてあり、息子と一緒に土ぼこりを洗い流す。髪はパリパリだ。疲れた身体にホットシャワーが染みる。
タンクだからいつかお湯はなくなるはず。しかしタンクは外にあり残量が見えないため、いつ無くなるかとドキドキしながらシャワーを浴びる。
それも息子と一緒だとワーワー言いながら楽しいゲームに代わる。
夕食の時間になり、マサイ族のスタッフが懐中電灯を持ってテントまで呼びに来た。夜間、安全のため勝手に外へ出ないようにと言われている。
夕食はレストランにてビュッフェ形式。
写真は明るい時のものだが、夜はロウソクや照明で良い雰囲気になった。
ドイツ人お爺ちゃんはアフリカ人家族と相席で、相変わらず冗談を言っては自分でガハガハ笑っていた。インディジョーンズは寡黙にフォークを口に運んでいる。
メニューはスープ、パン・ライス、サラダ、野菜の炒め物、ステーキ、デザートといった感じ。何を食べても本当に全て美味しい。
デザートはマンゴープリンが乗った二層のケーキ。どうしてサファリのキャンプでこんな洒落たデザートを出せるんだろう。
クリスティーンに聞くと、シェフは海外でも修業した事がありオーナーもドイツ人のためデザートには力を入れているとのこと。ドイツの食事はあんまり良いイメージがないけど、確かにスイーツは美味しい。それで納得した。
夜は満天の星空...と思ったけど、あいにく曇りで星は見られず。
こに滞在中、一度も綺麗な星空は見られなかった。
残念だが次回のリベンジに取っておこう。
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