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針金で遊ぶ/作品作りのプロセス

ここのところ少し棍を詰めてミニチュアの椅子を作っています。

元々、リアルな椅子(のデザイン)が好きで、
毎年のように発表される新作を
「この手があったか!」と、楽しみにしていました。
人が(ひとり)腰掛ける椅子は、必然的に大きさも決まってきますし、
基本的な構造も脚と座面と背もたれの3つだけです。
その制約の中でも、新しいデザインが生まれ続けるということは、
本当に素晴らしいことだと思います。

そんなこんなでワイヤーワークを始めたときに、
最初に手掛けたのも椅子でした。
工房を立ち上げる前のことで手遊びの延長でしたが、
とにかく50個のカタチ違いに挑戦して、
夢中になって作っていた記憶が今も残っています。
結局、いくつカタチになったのかは忘れてしまいましたが、
なかなか楽しかったのは確かです。
その頃を思い出して、また椅子作りを始めてみましたが、
やっぱり楽しいものです。

ということで今回のブログでは、作品が生まれるまでのプロセスを
少し書きたいと思います。

そもそもリアルな椅子をミニチュア化するのは苦手なので、
先ずは「こんな感じかな」というイメージを紙に落とします。
デザインの素養はないので、まぁ適当です。
線を引き直したりしながらおおよそのカタチが決まったら、
先ず細いワイヤー(鉄)でパーツを作って、それを組み立てます。
これが第1段階。
そこで「ここはもう少し長くしよう」みたいに
パーツのサイズ調整をしたあと、
最初のワイヤーより少し太いもので作り、さらに微調整をします。
これが第2段階。
最後は、もうひとつ太いワイヤーで仕上げます。
これが第3段階、いわゆる商品化モデルです。

問題はここからです。
1点ものではなく、同じものを複数個作ることを前提とすると、
それぞれのパーツの長さや曲げ方を一定にしないとなりません。
これが中々厄介なのです。
ワイヤーというのは基本的に丸まった状態で売られていて、
当然その癖が付いています。要は直線ではなく曲線状です。
例えば、パーツを7センチにカットするとします。
メジャーをワイヤーに当てて測るわけですが、
曲がったままのワイヤーを測るのは難儀です。
結果として、7センチのワイヤーを4本用意しようとすると、
長さがほぼ揃いません。
小さなものを作ろうとしているときに、
1ミ〜2ミリの差は結構大きいもので、
そのまま組むと歪みやガタつきが起きるものです。
ならば一旦ワイヤーを真っ直ぐにすれば済みそうですが、
鉄のワイヤーを直線状にするのは中々大変です。
ちなみにアルミワイヤーは太いものでも簡単に矯正できるのですが…。
そこで閃いたのがこの言葉。
1970〜80年代に活躍した著名なデザイナーである
ルイジ・コラーニさんは、
「自然界に直線は存在しない」と。
ということで、開き直ってその曲がった状態のまま使うというか
それを活かすことを大事にする方が良いのではないかと…。
先ほど書いた通り不揃いな長さのワイヤーを組めば、
当然意図しない歪みが生じますが、
それを許容しつつ矯正していくことの方を選んだということですね。
まさにこれが「Wiredの作風」なのだと。

なんだか言い訳がましくなってきそうなので、
先日発表したミニチュア・チェアNo.3の試作段階の写真を公開します。
こちらは第3段階で迷いが生じて、いくつか作り直したのですが、
結局最初に作ったものに戻ったという、よくあるパターンです。
4枚の写真の最初は、ファーストモデル。
その後の3枚は修正版。

画像1

画像2

画像3

画像4

違いは僅かなので、分かりにくいかもしれませんね。
そして、なんのことはない、最初のカタチに落ち着いたという話。
だいたいこんな感じで制作していますが、いかがだったでしょうか。

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