元祖・手数王であり、ドラムの瞑想家?・・・Billy Cobham
前回、Simon Phillips について書いたので、オープンハンド繋がりで今回は Billy Cobham について書こう。
僕は、中学から二十歳そこそこくらいまで、手数王・菅沼孝三さんの大ファン(今もファンだけど)で追っかけをしていた。日本屈指のテクニカル系ドラマーとして活躍している孝三さんが多大なる影響を受け神格化しているドラマーが、Billy Cobham であった。
当時、僕は北海道のド田舎に住んでいたため、Billy の情報はおろか、ほとんどドラムに関する情報はなかった。Billy の音源は、僕の田舎から近かったまぁまぁ大きい都市である旭川市はおろか、北海道の最大都市である札幌市でも、当時はほとんどCD屋などでは見かけなかった(後に Billy は再評価され、リマスター盤がよく出回るようになった。)。
もちろん、当時(90年代)は mp3 どころかインターネットなんてなかったし、当然Amazon なんてないし、菅沼さんが雑誌のインタビューで「Billy Cobham」という名前を出す度に、「いったいどんなドラマーなんだろう・・・あの孝三さんにしてそんな風に賞賛するとはどんだけすごいんだろう・・・」と、少年ドラマーであった僕の頭の中は妄想でいっぱいだった。ドラム雑誌の Billy の写真を見ながら、「きっとこんな風に動くに違いない」と脳内で必死でその写真の中の Billy を動かしていた。
そんな僕が Billy の音源を始めて聞いたのは、高校2年のときに修学旅行で大阪に行った時にCD屋で買ってきた「Spectrum」というアルバムである。
最初聴いた時は正直ピンとこなかった。
なんか、音が薄っぺらいぞ???となったのである。90年代音楽、そしてそのドラムサウンド、特に孝三さんのサウンドに慣れ切っていた僕には、なんだこの変な音色・音質は???と思ったのである。
リリース年を見ると1973年。僕の生まれる8年も前である。そりゃー録音機材は現代と違って洗練されていないし、流行の音楽も違うし、ドラムサウンドも今でいうところのジャズ寄り。当時の僕の耳に馴染まないのも無理はない。幼稚園児にウニを食わせるようなもんだ(そして僕はウニが嫌い)。
しかし、何度も何度も聴いているとだんだんと耳が70'sサウンドに追いついてくるもんだ。だんだんとこのアルバム全体が目指す音楽の感じと Billy の凄さがわかってきた。
このアルバムは Billy のソロ活動デビュー作かつ世界をおったまげさせた代表作。今でも本人のライブではこのアルバムからの選曲でライブ演奏をすることも多い( Stratus や Red Baron )。
スナッピーをかなりテンション高く張っているであろう、少し詰まり気味のスネアサウンドが、手数の多い Billy のスタイルにマッチしていて心地よい。
大径タムを高めに張ったオープンサウンドは、前回投稿で紹介した Simon Phillips のサウンドに伝承されている。Simon が Billy から受けた影響は計り知れないだろう。
とはいえ、「思ったよりすごいと感じれなかったな・・・」というのが正直な評価である。僕が Billy から直接影響受けることはあまりないだろうな、と。
ところが、それが一転して、僕が Billy にはまるきっかけとなったのが、たまたま夜中にテレビを見ていたら流れてきたこの動画である。
モントルージャズフェス in 東京(モントルーなのになんで東京?)
ということで、故・George Duke との共演。
(※後から知ったのだけど、大昔に George Duke & Billy Cobham Band ってものすごい当時のジャズ界に影響を与えたそうですね。このライブは George & Billy の夢の再共演という目玉企画だったわけだ。)
一番最初の、
「パンッ!」
って音(0:06)から既にカッコよくて、当時、録画したVHSを何度も見返した。
当時、Billy は YAMAHA のドラムを使い始めたころ、かつ、YAMAHA がスネアのウッドフープを発表したところで、僕はめっちゃ物欲をかき立てられた。
(ちなみに、社会人になった後は、後日発表された Billy Cobham model のスネアを買い、たまたま札幌にクリニックに来られた時にサインまでもらった。今はそのスネアはとあるバンドに置き土産として寄付してしまったのだが、、、元気かなぁ、あのスネア。)
もう、なんちゅうか、このライブでの Billy のプレイ、めちゃいいね。本人もかなりノリノリで場の空気感が良い。ドラムの音質も良い。
そして、僕が当時良く真似したのが、「グルグル大回転奏法(命名:イトウ)(1:19くらい)」と、ドラムソロでのなんだかすごいよくわからない連打(4:40くらい)であった(若い時はこういうのばかり真似したくなるよね)。
5拍子の中で、こういう力技なフレーズを自由自在にぶちこむのがめっちゃかっこいいなと思ったのね。
あと、ドラムソロの途中で、一番小さいタムのマイクが外れちゃって、お構いなしにそれをブッ叩いているのがちょっと笑える。結果的にエフェクトかかったような音になっててちょっと面白い(マイクが壊れなかったかちょっと心配だが)。
さて、オチは全くついておらず、書きたいことはまだまだ死ぬほどあるがいい感じに疲れたので、今日はこの辺で。
今度、Billy について書く時は、Mahavishnu Orchestra について書かざるをえないだろうな。
あ、「ドラムの瞑想家」というタイトルの記事なのに、そのことになにも触れないで終わってしもたw